【書式無料ダウンロード】遺産分割協議書ひな形・文例集21点 [PDF・Word対応]、官公庁リンク集


相続手続

執筆者 司法書士 上垣 直弘


  • 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
  • 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号

日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。


目次

1.【無料ダウンロード】 遺産分割協議書ひな形

 

 

遺言書が残されている場合、原則として遺言書の内容が優先されます。
しかし、遺言書が残されていない場合、相続人全員が参加して遺産分割について話し合いをおこないます。


これを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議で合意した内容について、後から合意の有無や、分割内容について相続人から異議が出ないようトラブル防止のために書面で作成しておくことが一般的です。

また、遺産相続後の金融機関、証券会社などに名義 変更手続きをおこなう際に必要となる重要な書類のひとつです。


遺産分割協議書の提出先で問題なく手続きが進められるよう、正確で形式に不備が無いよう作成しましょう。

基本となる遺産分割協議書のひな形をご用意しましたので、パソコンなどでダウンロードのうえご活用ください。


遺産分割協議書は手書きで作成してもかまいません。


ただ、遺産分割協議書は相続人一人ひとりが保有し、話合いの中で分割内容について修正作業が発生することが多くあります。

そのため、パソコンで作成しておくと修正や印字も簡単におこなえるのでおすすめです。

なお、遺産分割の内容により、記載が異なります。
ひな形をもとに、各事情に応じた文例について説明しておりますので、最後までご覧ください。

 



2.遺産分割協議書の書き方の基本


遺産分割協議書の書き方の基本について解説します。

なお、遺産分割協議書の基本的な構成(全体像)は次の通りです。

遺産分割協議書

 

▽ 被相続人の特定情報

▽ 合意した遺産分割の内容

▽ 財産目録

▽ 遺産分割成立の日付
▽ 相続人全員の署名押印

▽ 印鑑登録証明書(海外居住者はサイン証明書)添付

2-1.遺産分割協議書の必要記載事項


相続は、オーダーメイド性の高い問題です。
そのため遺産分割の内容もさまざまです。

ただ、合意内容を遺産分割協議書として残す場合、どのような場合であっても記載する共通の情報があります。

2-1-1.被相続人の情報


書面のタイトルは「遺産分割協議書」と記載します。
また、誰の相続についての話し合いかを特定し明記します。


参照 被相続人特定のための文例①

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した明石太郎(最後の本籍 兵庫県明石市〇〇〇〇〇〇、最後の住所地 兵庫県明石市〇〇〇〇〇)の遺産について、共同相続人明石花子、明石一郎、明石二郎の全員による遺産分割協議の結果、次に掲げる者がそれぞれに掲げる財産を取得し、債務を承継することに合意した。

 

参照 被相続人特定のための文例②

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した◇◇◇ ◇◇◇の遺産について、相続人〇〇 〇〇、△△ △△は次のとおり遺産分割することに合意する。

 被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇〇番地
 最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇番〇号
 氏名 ◇◇◇ ◇◇◇

【解説】 今回の遺産分割協議の対象となる被相続人が特定できる情報を記載します。 


被相続人の情報は、「生年月日」「死亡日」「本籍地」「最後の住所地」などを記載して特定します。

2-1-2.相続人全員の署名押印と合意した日付


相続人全員が参加したことが分かるように、署名押印をします。
また合意した日付も記載します。

3.遺産分割協議書のケース別文例集


遺産分割協議書には合意した「遺産の分割方法」や、「対象となる相続財産の特定 」を記載します。

まずは遺産分割の方法にもとづく、文例について説明します。

4.遺産分割方法についての文例


代表的な遺産分割の方法は次の3つです。

参照 相続人に問題がある場合の家庭裁判所の手続き
遺産分割方法の代表例
現物分割 遺産をそのままの形で分割する方法です。
例えば、自宅不動産は相続人A、預貯金は相続人B、有価証券は相続人Cと分ける方法です。
換価分割 遺産をお金に代えて、相続人間で分配する方法です。
経済的な価値、金額として目に見えて分かりやすい分割方法です。
代償分割
  • 特定の財産を引き継いだ相続人が、他の相続人に対して一定の金銭を支払う方法です。
    例えば、自宅不動産を取得した相続人Aが、他相続人B、同Cに対して30万円ずつ支払う、といった分割方法です。

4-1.現物分割する場合の文例


現物分割は、最も一般的な遺産分割方法です。


個別の財産を、それぞれそのまま個別に取得者を決定します。
自宅は母、預貯金は長男、有価証券と自動車は長女といった遺産分割が例になります。

現物分割により遺産相続をおこなう場合の文例、ひな形は次の通りです。

 

参照 「現物分割」する場合の文例

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した◇◇◇ ◇◇◇の遺産について、相続人〇〇 〇〇、△△ △△は次のとおり遺産分割することに合意する。

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇〇番地
最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇丁目〇番〇号
氏名 ◇◇◇ ◇◇◇       

1 相続財産中、次の不動産については〇〇 〇〇が相続する。(1)土地
 次に掲げる土地
 所  在:
 地  番:
 地  目:
 面  積:〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
 所  在:
 家屋番号:
 種  類:
 構  造:
 床 面 積:1階
     2階

2 相続財産中、現金及び下記の預貯金については、△△ △△が相続する。
(1)〇〇〇〇銀行〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇 定期預金
(2)〇〇〇〇銀行〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇 普通預金

【解説】 個別の財産を、個別に取得する者を記載します。

 

 

 

4-2.換価分割する場合の文例


遺産をお金に換えたうえ分割する「換価分割」の方法により遺産相続をおこなう場合の文例、ひな形は次の通りです。

 

参照 「換価分割」する場合の文例

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した◇◇ ◇◇の遺産について、相続人〇〇 〇〇、△△ △△は次のとおり分割することに合意する。
相続人〇〇 〇〇は共有持分2分の1、相続人△△ △△は共有持分2分の1をそれぞれ取得し、これを次の条件で売却した後、その売却代金につき各共有持分で分配する。また、売却費用は2分の1ずつの割合で負担する。

土地の表示
 次に掲げる土地
 所  在:
 地  番:
 地  目:
 面  積:〇〇.〇〇平方メートル

最低売却価格 金〇〇万円
売却期限 令和〇年〇月〇日

2 前項の売却期限までに売却ができなかった時は、〇〇 〇〇、△△ △△は協議の上、最低売却価格を再度決定し、売却をおこなう。

【解説】 遺産を換価し、売却代金をどのように分けるのか、いつまでに、何をするのかを記載します。

 

 

4-3.代償分割する場合の文例


特定の相続人が遺産を承継し、他の相続人に一定の金銭を支払う「代償分割」により遺産相続をおこなう場合の文例、ひな形は次の通りです。

参照 「代償分割」する場合の文例

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した◇◇ ◇◇の遺産について、相続人〇〇 〇〇、△△ △△は次のとおり分割することに合意する。

1 相続人〇〇 〇〇は、次の遺産を取得する。
(1)土地
 所  在:
 地  番:
 地  目:
 面  積:〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
 所  在:
 家屋番号:
 種  類:
 構  造:
 床 面 積:1階
     2階

2 相続人〇〇 〇〇は、遺産取得の代償として、相続人△△ △△に対し、金〇〇万円を、令和〇年〇月〇日までに、△△ △△の指定する銀行口座に送金して支払う。送金手数料は、〇〇 〇〇の負担とする。

【解説】 特定の遺産を取得する代わりに代償金を支払うことなどを記載します。

 

 

5.財産目録についての文例


次に、財産目録の記載方法について解説します。

なお、遺産内容をすべて財産目録にまとめて記載し、「相続人Aは、財産目録記載1の預金について相続する」「相続人Bは財産目録記載2の不動産について取得し、その代償金として相続人Cに金200万円を支払う」といった条項で記載する場合もあれば、「相続人Aは次の預金について相続する。〇〇〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号1234567 口座名義 〇〇〇〇〇〇」と、遺産ごとに、誰が承継するかを記載する方法もあります。

いずれの記載方法でも問題ありません。


参照 財産目録として遺産一覧を記載する場合

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した△△ △△の遺産について、相続人〇〇 〇〇、◇◇ ◇◇は次の通り分割る ことに合意する。

1 相続人〇〇 〇〇は、財産目録記載1の預金について相続する。

2 相続人◇◇ ◇◇は財産目録記載2の不動産について取得し、その代償金として相続人〇〇 〇〇に金200万円を支払う

財産目録

 

1 預貯金
  〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号1234567 口座名義 〇〇〇〇

2 不動産
(1)土地
    所  在:
    地  番:
    地  目:
    面  積:〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
    所  在:
    家屋番号:
    種  類:
    構  造:
    床 面 積:1階
        2階

【解説】 遺産を列記します。複数枚に渡る場合には契印するなどして、遺産分割協議書と一体のものとして作成します。

5-1.不動産の文例

 

相続不動産は原則として、新所有者に名義変更登記をしなければいけません。

遺産分割協議書は、相続登記手続きの必要書類のひとつです。

 

そのため、法務局での手続きがおこなえる記載にしておくことが必要です。

 

不動産の記載は、登記事項証明書(不動産全部事項証明書/登記簿謄本)の記載に合わせるのが基本です。

被相続人死亡の際における相続財産調査で、所有不動産を取得した証明書の記載を参考にしましょう。

 

なお、2024年4月からの相続登記義務化については、特集ページにて解説しています。

特集ページ|相続登記の義務化

2024年4月から開始される相続登記の義務化。相続が発生し、不動産を引き継いだ際に登記名義を変更するための手続をとらなければ、罰則を受けることになります。ほとんどの方は、生きているうちに経験する「相続」。知っておきたい相続登記の義務化について解説します。

  • わかること ・相続登記義務化の制度
    ・最新情報
    ・相続登記の方法

詳しくはこちら

5-1-1.戸建の場合

 

不動産(戸建)の遺産分割に関する文例、ひな形は次の通りです。


参照 不動産(戸建の場合)の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産

(1)土地
    所  在:
    地  番:
    地  目:
    面  積:〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
    所  在:
    家屋番号:
    種  類:
    構  造:
    床 面 積:1階
        2階

【解説】 新取得者は法務局での相続登記手続に使用することになるため、登記事項証明書の記載通りに記載します。


 

5-1-2.マンションの場合

 

不動産(マンション)の遺産分割に関する文例、ひな形は次の通りです。


参照 不動産(マンションの場合)の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産

(一棟の建物の表示)
所   在  〇〇県〇〇市〇丁目〇番地〇〇
建物の名称  プラウド〇〇〇〇〇
(専有部分の建物の表示)
家屋番号   〇丁目〇番〇の〇
建物の名称  〇〇〇
種   類  居宅
構   造  鉄筋コンクリート造〇〇階建
床 面 積  〇階部分 〇〇.〇〇m²
(敷地権の目的たる土地の表示)
符   号  1
所在及び地番 〇〇県〇〇市〇丁目○番地○○
地   目  宅地
地   積  〇〇〇〇.〇〇m²
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 〇〇〇〇分の〇〇

【解説】 新取得者は法務局での相続登記手続に使用することになるため、登記事項証明書の記載通りに記載します。

 

 

5-1-3.共有持分の場合

 

不動産を共有して所有する場合の遺産分割協議の文例、ひな形は次の通りです。


参照 不動産(共有持分の場合)の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産

(1)土地
 次に掲げる土地の共有持分2分の1
 所  在:
 地  番:
 地  目:
 面  積:〇〇.〇〇平方メートル
2 相続人〇〇 〇〇が取得する財産
(1)土地
 次に掲げる土地の共有持分2分の1
 所  在:
 地  番:
 地  目:
 面  積:〇〇.〇〇平方メートル

【解説】 不動産を共有して相続する場合、持ち分(割合)を記載します。

 

 

5-1-4.配偶者居住権

 

配偶者居住権とは、被相続人と配偶者が住んでいた建物を、一定期間またはその配偶者が亡くなるまで無償使用できる権利のことです。

配偶者がある日突然に 、相続により家を追い出され、それまでの生活環境を失ってしまうことがないよう2020年の法改正で定められた制度です。


参照 配偶者居住権の文例(一定期間の場合)

1 相続人〇〇 〇〇は、別紙財産目録〇記載の建物につき、存続期間を令和〇年〇月〇日から〇年とする配偶者居住権を取得する。

 

 



参照 配偶者居住権の文例(終身の場合)

1 相続人〇〇 〇〇は、別紙財産目録〇記載の建物につき、存続期間を相続人〇〇 〇〇の終身の間とする配偶者居住権を取得する。

 

 

5-2.預貯金の文例


遺産分割協議書を預金の払い戻し、解約、名義変更手続きに利用することを想定して、預金口座の特定をおこないます。
金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号を記載します。

なお、基本的に預金残高は記載しません。
相続時までに入出金、利息がつくなどして預金残高に変動が発生します。


この場合、遺産分割協議書と預金残高に「違い」が生じます。
そのため金融機関は遺産分割協議書の内容に沿って、相続手続きに応じるべきかを判断できません。(相続手続きが進められない可能性が高くなります。)

遺産分割協議書の記載にあたっての注意事項が、全国銀行協会ホームページに記載されています。

参照リンク


 一般社団法人全国銀行協会

 「遺産分割協議書」[別紙] 遺産分割協議書の記載に係る留意点」

 


参照 預貯金の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産

 

銀行預金
  〇〇〇〇銀行〇〇支店口座番号〇〇〇〇〇〇〇 定期預金

 

 

 

信用金庫や農協などは、出資金が存在する場合もありますので、併記してもよいでしょう。

 

なお、出資金に関しては、全国生活協同組合連合会(コープ)などがあります。

また、出資金というものではありませんが、百貨店に毎月積み立てをおこなうと満期日に積立額以上で買い物券で返ってくる「友の会」などに加入されている場合にも、買い物券は遺産相続の対象となることがあります(規約の確認が必要です)。

5-2-1.名義預金の場合


相続における名義預金とは、口座名義人が被相続人ではないものの、実質的には被相続人がお金を出して管理していると認められる預金のことです。

例えば、相続税対策として、遺産を減らし相続税を減らすことを目的に、相続人の孫名義で口座を作成し、積み立てが行われているようなケースです。

しかし、こうした名義預金は税務署に指摘されることがあり、また他の相続人から「不公平」だとしてトラブルになるケースもあります。

そのため予め相続財産の対象として挙げておき、遺産分割をおこなうことがあります。


参照 名義預金の文例

1 相続人〇〇 〇〇、同◇◇ ◇◇及び△△ △△は、下記の預金が被相続人●● ●●の預金であることを確認する。

相続人〇〇 〇〇は、下記(1)の預金の元本及び利息を、相続人◇◇ ◇◇は下記(2)の預金の元本及び利息を取得する。

(1)〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人■■■■
(2)〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人■■■■

2 △△△△は、相続人〇〇 〇〇が前項(1)の預金の名義変更をするにつき必要な協力をする。

 

 

5-3.有価証券(上場株式)の文例


証券会社に対する名義変更手続きをおこなうために必要な文例、ひな形は次の通りです。
証券会社名、発行会社名、株式数などを記載します。

ただ、遺産分割時点で株式分割などにより株数に変更が生じている可能性があるため、最新の残高報告書などを取得して、現時点での株式数を確認しておくようにしましょう。

 

参照 有価証券・上場株式の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産


株式
  〇〇株式会社   普通株式〇〇株
  〇〇〇〇株式会社 普通株式〇〇株

 

 

 

参照 投資信託・債権・MRFの文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産


次の証券会社において預託している被相続人〇〇 〇〇の金銭、MRF、投資信託、株式、公社債、投資信託、預け金を含むすべての預託財産及びこれに関する未収配当その他一切の権利。

株式会社〇〇〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)

 

 

5-4.自動車の文例

 

被相続人が所有する自動車の名義変更は陸運支局でおこないます。
遺産分割協議書には、車検証の記載内容にそって、自動車登録番号、車台番号を記載します。

遺産分割協議書に記載する自動車の承継についての文例、ひな形は次の通りです。

 

参照 自動車の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産

自動車
自動車登録番号 〇〇 〇〇〇 〇 〇〇〇〇
車台番号 〇〇〇〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇〇

 

 

5-5.ゴルフ会員権の文例

 

各ゴルフ場に対しておこなう会員権の名義書き換えの手続きに必要となる記載につき、文例、ひな形は次の通りです。

なお、ゴルフ場に預託金がある場合、その記載もおこないます。

 

参照 ゴルフ会員権(預託金がある場合)の文例

1 相続人〇〇 〇〇が取得する財産


預託金ゴルフ会員権
 株式会社〇〇〇〇カントリークラブ
  預託金ゴルフ会員権
  預託金証書番号〇〇〇〇〇〇〇

 

 

5-6.負担(税金、葬儀費用)・借金の文例

 

遺産分割協議の対象外となる負債、債務、葬儀用費用や税金、医療機関・介護施設などの未払い金の負担方法についても、遺産分割協議書に記載できます。

5-6-1.葬式費用


葬儀費用に関して、誰が負担するかを決めて記載することは可能です。


遺産分割の対象となるものではありませんが、相続税申告時に支出した相続人について控除の対象となるため記載することがあります。


参照 葬儀費用に関する文例(費用負担の取り決め)の文例

1 被相続人の葬儀費用について、相続人〇〇 〇〇が負担する。

 

 

 


参照 葬儀費用に関する文例(支出済み葬儀費用の精算)の文例

1 被相続人の葬儀費用の精算として、別紙遺産目録記載1の現金〇〇万円について相続人〇〇 〇〇が取得する。

 

 

5-6-2.借金(債務)

 

原則として被相続人の負債は、法律に定められた割合(法定相続分)で当然に相続人に引き継がれます。


「当然」とは、何も手続きをしなくても相続人が負担する、ということです。

そのため、基本的には遺産分割協議書に記載する必要もありませんが、特定の相続人が負担することについて協議し記載することは可能です。


なお、特定の相続人に負担させる内容での協議も可能ですが、この取り決めた内容は債権者に対しては無効です。


参照 負担(借金・債務)に関する文例

1 被相続人の次の債務につき、相続人〇〇 〇〇が負担する。

令和〇年〇月〇日付 〇〇金銭消費貸借契約※(※契約書の名称を記載)
債権者 株式会社〇〇銀行

 

 

6.遺産分割対象外の財産


被相続人の財産と思われるものでも、法律上あるいは契約により遺産分割の対象外となるものがあります。

6-1.生命保険金


被相続人の死亡により、指定されていた受取人が生命保険金を受領する場合、遺産分割の対象とはなりません。
原則として、受取人固有の財産となります。

なお、個別のケースで判断されることになりますが、生命保険金の受取りにより、相続人間で著しい不公平が生じる場合などにおいて、遺産分割の場面で調整が入る可能性はあります(最高裁平成16年10月29日決定・東京高等裁判所平成17年10月27日決定)。

ただ、他相続人が生命保険金の受取りに納得するかどうかは別問題であり、原則としては受取人の財産となり、遺産分割の対象外です。

解説│生命保険契約の当事者

生命保険における用語として「契約者」「被保険者」「受取人」があります。
契約者は、生命保険会社と契約し、保険料を支払う人です。
被保険者とは、保険の対象となっている人のことです。
受取人は、保険金などを受け取る人のことで、生命保険の契約者が指定します。

6-2.死亡退職金、遺族年金


本来被相続人が受け取るはずの退職金を、相続人に支払うものを死亡退職金と言います。

死亡退職金が支払われるかどうかは勤務先である会社に退職金規程や退職金制度の内容によります
退職金規程といった会社の規則は、労働基準法や労働災害補償保険法などの法律に基づいて定めていることが一般的です。

死亡退職金が遺産分割の対象かどうかの判断


労働者であった被相続人の配偶者や内縁者、家計を同じくしていた子供、祖父母、父母、孫や兄弟姉妹などが受取人として指定されていることがあります。

受取人として指定されている場合には、その受取人固有の財産となり、相続財産には含まれません。
つまり、遺産分割の対象外となります。

反対に、退職金規程で受取人の指定がない場合、遺産分割の対象となる相続財産となります。

遺族年金は遺産分割の対象外


厚生年金や国民年金を受給していた被相続人が死亡した際に遺族に支払われる遺族年金は、相続の対象外です。

そのため、相続放棄をして相続関係から外れていた場合でも、遺族年金は受け取ることができます。

また、原則として所得税も相続税も課税されません。

6-3.祭祀財産(墓、仏壇など)


被相続人が有していた家系図、位牌、仏像、神棚、墓地、墓石などの祭祀財産(さいしざいさん)は、相続の対象外です。

誰が承継するかは、相続とは別に祭祀主宰者を決めて、原則として単独で承継します。


参照 祭祀承継財産の文例

1 相続人〇〇 〇〇は、被相続人△△ △△が最後に居住する建物(〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇)にある仏壇仏具等について承継する。

 

 

7.その他の遺産分割についての文例


遺産の具体的な分割内容以外に次のような条項を記載することがあります。

7-1.後日判明財産の分割方法についての文例


相続財産調査をおこなったとしても、後日に遺産が判明することがあります。


こうした場合に、どのように対応するべきか予め決めておくと良いでしょう。
遺産判明時点で再協議、特定の人が承継するといった内容で決めておくことが多いです。

遺産分割協議成立の後日、新たに財産が判明した際の文例、ひな形は次の通りです。


参照 後日判明財産の再協議の文例

1 後日、上記以外の遺産が判明した時は、これにつき相続人全員で改めてその分割を協議する。

 

 

 


参照 後日判明財産を特定の相続人が取得する場合の文例

1 後日、上記以外の資産、負債が判明した時は、その資産ないし負債は、相続人明石花子が取得および承継するものとする。

 

 



8.遺産分割協議書ひな形リンク集


官公署で公開されている情報に基づき、遺産分割協議書のリンク先をまとめました。
いずれも、相続による各種手続きの申請を見すえた内容となっています。

遺産分割の対象に、不動産、自動車、預貯金が含まれている場合や、それらの評価をもとに相続税申告をおこなう場合の参考になります。

8-1.法務局の遺産分割協議書ひな形

 

法務局の遺産分割協議書サンプル


管轄法務局に対する相続不動産の名義変更登記申請をすることを想定した内容となっています。

法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議辺)」
  「遺産分割協議書のイメージ」11ページ目
  https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001392977.pdf
法務局「17 相続(遺産分割のとき) 記載例」
  「遺産分割協議書の例」3ページ
  https://houmukyoku.moj.go.jp/shizuoka/page000001_00223.pdf

なお、法務局の遺産分割協議書のひな形をさらに詳しく、次のコラムで解説しています。

関連コラム


8-2.国税庁の遺産分割協議書ひな形

 

国税庁の遺産分割協議書サンプル


管轄税務署に対する相続税申告を想定した遺産分割協議書のひな形、記載例について公開されています。

▽ 国税庁「相続税の申告のしかた(令和5年分)」「➍ 相続税の申告書の記載例」
  「(参考)遺産分割協議書の記載例」
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2023/pdf/E06.pdf

8-3.運輸支局の遺産分割協議書ひな形

 

国土交通省の遺産分割協議書サンプル


被相続人名義の自動車について、名義変更手続きのための申請書類として遺産分割協議書のひな形が公開されています。

国土交通省「遺産分割協議書」
  https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000109120.pdf

8-4.金融機関の遺産分割協議書ひな形


メガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)、ゆうちょ銀行で公開されている遺産分割協議書のひな形はありません。

相続による預金解約、名義変更については相続人ら自身で作成する遺産分割協議書や、各行の定型書式に記入、必要書類を添えて手続きをおこないます。

関連記事


9.遺産分割協議書の作成


遺産分割の合意内容に応じて遺産分割協議書の記載内容を定めたら、実際に書面にして作成します。

9-1.実印と印鑑登録証明書


遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ、無効です。
無効とは、法律上の効力が発生せず、遺産整理手続などに利用することもできません。

そのため、相続人全員が自筆で署名押印をし、印鑑登録証明書を添付するようにしましょう。

基本的に、印鑑登録証明書は本人しか交付を受けられないため、遺産分割内容に合意したことを証明するために添付するものです。
なお、相続人が海外居住者の場合、領事館でサイン証明書の交付を受けて添付します。

認印で押印し、印鑑登録証明書の添付がない場合でも遺産分割協議書がただちに無効になるわけはありません。
ただ、遺産整理手続のために提出する金融機関、官公署から、遺産分割協議書に実印押印と印鑑登録証明書の添付が求められることがあります。

9-2.袋とじと契印


遺産分割協議書が複数枚に渡る場合、後日の改ざんを防ぐために、製本のために袋とじ、ページ間の契印を押印するのが良いでしょう。

9-3.相続人数分を作成


遺産分割協議書は、相続人の人数分を作成することが一般的です。


各相続人がそれぞれに相続手続きをおこなう場合や、遺産分割協議書の改ざんを牽制するなど後日のトラブルを防ぐ意味もあります。

そのため、遺産分割協議書に添付することが多い、印鑑登録証明書(海外居住者の方は、領事館のサイン証明書)については、相続人の人数分を用意しておきます。

10.遺産分割協議の注意点、よくある質問


遺産分割協議書について寄せられることの多い質問は次の通りです。

10-1.【注意点①】 相続人全員が参加しないと遺産分割協議は無効



Q 「 遺産分割協議後に、相続人が他にもいることが判明しました。どうなりますか。


A 「 相続人全員が参加しないと法律上無効です。

1人でも相続人が欠けた場合の遺産分割協議は無効です。

まずは行方不明者の所在を確認するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を本籍地である市区町村役所の窓口または郵送で取り寄せ、相続人調査をおこなうのが一般的です。

なお、相続関係を証明する書類として、戸籍謄本等の原本は遺産整理手続(遺産の名義変更)に必要となります。
そのため、相続人調査は必ずおこなうようにしましょう。


相続人が複数になる場合、相続関係図も作成しておくと良いでしょう。

10-2.【質問①】 行方不明の相続人がいる場合どうする?


Q 「 行方不明の相続人がいる場合、遺産分割協議を進めるにはどうしたらいいですか?


A 「 行方不明の人がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任審判」の申し立てをします。

行方不明者である不在者の代わりに、家庭裁判所から選任された不在者財産管理人が相続人と遺産分割協議をおこないます

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相続人が行方不明の場合に利用する「不在者財産管理人選任手続」を解説

遺産分割協議は相続人全員が参加せずに成立させた協議内容は無効です。
相続人の中に行方不明者がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらうための手続をおこないます。
このコラムでは家庭裁判所の不在者財産管理人選任のための手続きについて解説しています。

詳しくはこちら

10-3.【質問②】 認知症の相続人がいる場合どうする?


Q 「 相続人に認知症の人がいるため、遺産分割協議を進めることができません。


A 「 家庭裁判所の成年後見制度を利用します。

判断能力の程度によって、後見、保佐、補助の3つに分けれています。


家庭裁判所から後見人が選任され、財産管理や入院・介護サービスとの契約などの法律行為、遺産分割協議への参加をします。


なお、必ず選ばれるわけではありませんが、申立てにあたり特定の方を後見人候補者として推薦することも可能です。

10-4.【質問③】 未成年の相続人がいる場合どうする?



Q 「 相続人の中に未成年者がいる場合の、遺産分割協議のための注意点について教えてください。


A 「 家庭裁判所の手続きが必要になります。

未成年の子供が相続人となる場合、親が法定代理人となります。

しかし、夫が死亡し、相続人として妻とその未成年の子供2人が相続人となる場合、原則として妻は子供の法定代理人になれません。


親と子供が利益相反(親が財産を多く取ると、子供は少なくなる。などのように一方の利益が、他方の損失になる関係)となります。


この場合、未成年の子供のために家庭裁判所に「特別代理人選任審判」の申し立てをし、特別代理人の選任をおこないます。

また、未成年者の相続人に法定代理人(両親)がいない場合は、家庭裁判所の「未成年後見人選任審判」の申し立てをおこない、未成年者の代理人となる未成年後見人と遺産分割協議をおこなうことになります。

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特別代理人選任申立、流れについて解説│相続人の中に親権者と未成年の子どもがいる場合

遺産分割協議で親と未成年の子が利益相反するような場合などにおいて、親は子の法定代理人となり手続きを進めることができないことがあります。
このような場合、家庭裁判所で特別代理人選任申立をおこなう必要があります。
このコラムでは、申立方法や手続きの流れについて解説しています。

詳しくはこちら

10-5.【質問④】 遺産分割協議書の紛失の予防?



Q 「 遺産分割協議書の紛失や、相続人による改竄が心配です。


A 「 相続人全員が参加しないと法律上無効です。 」

遺産分割協議内容が決まれば、公証役場で公正証書にて作成することも可能です。
公証人は法律のプロであり、法的に有効な書面の作成が期待できます。


また、公正証書の原本は公証役場で保管されるため紛失や改ざんの恐れがありません。

ただ、公正証書で作成するデメリットとして、① 公証人手数料がかかること、② 遺産分割協議の仲介はしてくれないことなどが挙げられます。

10-6.【質問⑤】遺産分割協議書はどこでもらえる?


Q 「 遺産分割協議書のひな形はどこでもらえますか? 


A 「 官公署や行政で配布されているものはありません。 」

相続後の遺産整理手続きをおこなう法務局、国税庁のホームページで、見本・サンプルが掲載されていることがあります。


しかし、相続内容はそれぞれに違うため、実際にはゼロから作成することが必要です。
当ページでも、一般的な遺産分割協議書のひな形・サンプルを用意していますので、これらを利用して作成すると便利です。

 

 

 

【 利用にあたって 】
・本ひな形を利用して、被った損害について当事務所は責任を負いません。
・ひな形をもって作成した遺産分割協議書のチェックや質問などには対応しておりません。

10-7.【質問⑥】 資産よりも負債が多い場合どうする?


Q 「 相続財産調査の結果、資産よりも負債が多く、このままだと負債を背負うことになりそうです。 


A 「 家庭裁判所の相続放棄手続きをおこないます。

被相続人の相続財産調査の中で、資産よりも負債が上回る場合には、家庭裁判所に相続放棄手続きをおこないます。


ただし、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄をする必要があります。

なお、「自分のために相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人が死亡した時点ではありません。

例えば、被相続人の債権者から支払いの請求を受けた時に、初めて死亡の事実を知った時にはその時点から3か月になります。

また、相続財産調査が、相続から3か月以内に終わらない場合には期限延長の申し立てができます。
延長できる期間は、裁判官の判断によります。

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  • 相続放棄手続き

    家庭裁判所に対する相続放棄申述が受理されると、はじめから相続人でなあったものとして取り扱われます。しかし、一定の行為をおこなうことで、相続をしたことなることがあります。相続放棄についてお考えの方は、上垣司法書士事務所までご相談ください。

 

11.遺産整理手続き(名義変更、換価処分など)


遺産分割協議成立後、協議書をもって遺産の名義変更や処分をおこないます。
手続きによっては法律上期限が設けられています。

しかし、遺産分割協議には準備も話し合いに時間もかかります。
効率よく進めていくことに不安や心配がある場合には司法書士など専門家に相談すると良いでしょう。

参照 遺産分割協議の流れ

被相続人の死亡 (相続開始)

相続人調査 (相続人全員の確認と連絡)
  相続財産調査 (協議の対象範囲の確定)

遺産分割協議 (相続人全員の参加)

▼成立(相続人全員の合意)

④ 遺産分割協議書の作成


遺産分割協議書作成後の実際の手続きについて確認しておきましょう。

11-1.遺産分割協議書の提出先


遺産分割協議書作成後、すみやかに相続財産の名義変更手続きなどをおこないます。

相続税申告は申告と合わせて納税の必要があるなど、現預金の準備が必要となるため段取りよく相続手続きをおこなうことがポイントです。

現預金口座の解約には、銀行窓口でおこなう必要があり、現在ではインターネット などでの事前予約が必要になるケースが多いです。

 

しかし、金融機関において相続手続きの受付可能日を絞り込んでいることもあり、希望する日時で予約が取りづらいことが多くなってきています。

解約手続きには時間がかかることがありますので、納税資金の準備として相続財産である預金をアテにしている場合には、早め早めの行動が大切です。

参照│遺産分割協議書提出が必要な相続手続き

提出先 遺 産 手続き 期 限
金融機関 預金 ・解約
・名義変更
なし(長期間放置で休眠口座にかる可能性)
金融機関 出資金 ・払戻し なし
税務署 相続税申告 相続開始翌日から10か月以内
運輸支局 自動車 名義変更 なし
軽自動車検査協会 軽自動車 名義変更 なし
法務局 不動産 名義変更 自身に相続があったことを知り、
亡くなられた親族の不動産の所有権を取得したことを知った時から3年以内

11-2.相続手続きの期限一覧

 

一般的な相続手続きの期限について確認しておきましょう。

参照 │ 相続手続きの期限一覧
相続手続き 期限
相続放棄手続(家庭裁判所)

自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月
(但し、3か月の熟慮期間内に期限伸長の手続きをおこない、期限を延ばすことが出来る可能性があります)

相続税申告(税務署)

相続開始翌日から10か月以内
(但し、協議が成立しない場合、一旦期限までに申告をおこない遺産分割協議成立後に修正申告をおこないます)

相続登記(法務局)

自身に相続があったことを知り、
亡くなられた親族の不動産の所有権を取得したことを知った時から3年以内(令和6年4月1日から)

12.まとめ

 

 

司法書士にご依頼いただければ、相続人調査や疎遠な相続人との連絡の代行、遺産分割協議書作成などを代行させていただくことが可能です。

相続手続きの手間や負担を大幅に減らすことができます。

 

相続問題について、当事務所までお気軽にお問い合わせください。


なお、ご依頼いただける場合には提携税理士による相続税額の試算や、状況に応じて相続に強い弁護士との無料相談もご紹介が可能です。

安心して相続問題をご相談ください。

 

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