遺言書は、ご自身の死後に財産をどうするかについて生前に指定し書き残しておくものです。遺言書で指定すれば、相続人以外の人にも財産を残すこともできます。上手く遺言書を利用することで、死後の相続人間の相続トラブルを回避することも可能です。
ここでは、遺言書の種類、それらのメリット・デメリット、作成方法などについて解説いたします。
遺言書作成を考えている方へ
ひと昔前まで、遺言書は資産家や会社の社長など一部の人が作成するものという考えが一般的でした。
しかし、「終活」という考え方が社会に定着してから、「遺された家族の負担を軽くしたい。」「死後の手続について自分の意思を明確にしておきたい。」という目的で、遺言書を作成される方が増えています。
ここでは、遺言書について詳しくご紹介していきます。
遺言書とは
遺言書とは、自分の死後に財産をどのように処分するのかなどを指定する書面です。
遺言書に記載すると法的効力が発生するものについては、法律(民法)で定められています。
代表的なものとしては、①相続分の指定、指定の委託 ②遺産分割方法の指定、指定の委託 ③遺贈 ④子の認知 ⑤相続人の廃除、廃除の取消し ⑥遺言執行者の指定、指定の委託 ⑦遺言による信託の設定などがあります。
それ以外、例えば「家族仲良くくらしてほしい」「お葬式をこのようにしてほしい」といった内容を記載してもかまいませんが、その部分に法的効力は発生しないことになります。
遺言の種類
遺言の種類は、まず「普通方式による遺言」と「特別方式による遺言」にわけられます。
普通方式による遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が、特別方式による遺言には、「一般危急時遺言」「難船危急時遺言」「伝染病隔絶者遺言」「在船者遺言」の4種類があります。
図表 遺言の種類
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。
自筆証書遺言は、全て自書で作成するのが原則です。したがって、記載の不備により遺言書が法的に無効になってしまうリスクがあります。
なお、平成31年の法改正によって、遺言書に添付する財産目録についてのみ、自筆しなくても良いことになり、パソコンなどで作成が可能です。
また、自筆証書遺言書を発見したときは、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に遺言書を提出し、検認をおこなう必要があります。
「検認」手続とは、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 家庭裁判所に申立をおこない、遺言書の形状などその内容を明確にします。なお、検認手続では遺言の有効・無効を判断することはなく、遺言書の無効確認を求める場合には別の裁判手続になります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が作成する方式の遺言です。
具体的には、公証役場で遺言者が、証人2人以上の立会いのもとで、公証人に遺言御内容を口述します。公証人がこれを文章にまとめ、遺言者本人、証人が署名押印します。最後に公証人が法律に定められた方式にしたがって作成したものであることを付記して、署名押印することで成立します。
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、偽造や変造、紛失の心配がありません。また、公証人が作成するためまた、記載不備により法律的に無効ということは考えにくいです。
なお、家庭裁判所での検認の手続は不要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言の存在自体は明らかにしながら、遺言の内容は秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。
具体的には、① 遺言者が遺言書を作成し、これに署名・押印したうえ、② 自分で遺言書を封紙に入れて、遺言書に押印した印鑑で封印し、③ 遺言者がその封書を公証人および証人2人以上の前に提出して、自分の遺言書であることおよび氏名・住所を述べ、④ 公証人が遺言書の提出された日付および遺言者が述べたことを封紙に記載し、遺言者、証人および公証人が封紙に署名・押印することにより成立します。
秘密証書遺言は、署名と押印だけ遺言者がおこなえば、遺言書をパソコンで作成したり、代筆してもらったりしても問題ありません。公証役場には、秘密証書遺言をしたことが記録されるだけで、遺言書の保管は遺言者にゆだねられます。
なお、秘密証書遺言も自筆証書遺言と同様、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で検認の手続が必要です。
特別方式による遺言
特別方式による遺言は、特殊な状況で作成することを想定した遺言の方式です。
特殊な状況を前提としているので、遺言作成後に危機を回避し、普通方式による遺言をすることができるようになってから6か月間生存している場合は無効になります。なお、一般的に利用されることはほぼありません。
図表 特別方式の遺言書の種類と内容
特別方式の遺言 | |
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一般危急時遺言 | 死の危急に迫った人が、証人3人以上の立会いのもと、その1人に遺言の内容を口頭で伝えて作成する遺言です。伝えられた人が、その内容を筆記して、それを遺言者および証人に確認してもらい、各証人が署名・押印することで完成します。 |
難船危急時遺言 | 船舶が遭難した場合に、その船舶の中で死の危急に迫った人が、証人2人以上の立会いのもとに遺言の内容を口頭で伝え、証人がそれを筆記して署名・押印する方式によってされる遺言です。 |
伝染病隔絶者遺言 | 伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にある者が、警察官1人および証人1人以上の立会いのもと遺言書を作成する方式です。 |
在船者遺言 | 船舶中にある者が、船長または事務員1人および証人2人以上の立会いのもと遺言書を作る方式です。 |
「公正証書遺言」による作成をお勧め
当事務所では遺言を作成する場合、公正証書遺言の方式でされることをおすすめします。
その理由にについて、次の「公正証書遺言のメリット」で詳細をご説明しますが、最も大切なのは、遺言者が亡くなったあとに遺言書にもとづいて確実に相続手続ができるよう、法的に有効な遺言書を作成する必要があるからです。
なお、もちろん公正証書遺言のデメリットも存在します。これらは確実に間違いがない遺言書を作成するがゆえのデメリットですが、その点についてもご説明します。
公正証書遺言のメリット・デメリット
遺言を公正証書で作成するにあたり知っておきたいメリット・デメリットは次のとおりです。
図表 遺言を公正証書で作成するメリット
遺言を公正証書で作成するメリット | |
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無効になる可能性が低い | 遺言は民法という法律で、その形式などについて厳格なルールが定められており、遺言の一部でもそれを満たしていないと遺言全体が無効になってしまう場合もあります。公正証書遺言では、遺言を法律の専門家である公証人が作成するので、法律上の形式や要件を検証しており、無効になるリスクが低いといえます。 |
偽造、変造(改ざん)、紛失などの心配がない | 公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。このため、遺言が作成されたということさえ明らかにしておけば、遺言者本人が遺言書を紛失していたとしても、遺言者が亡くなったあと相続人が公証役場に対し、公正証書遺言の検索や閲覧、謄本の請求ができます。したがって、誰かに遺言書を偽造、改ざんされたり、廃棄されたりする心配ないなど、保管上のリスクがありません。 |
検認手続が不要 | 公正証書遺言以外の遺言は、遺言者が亡くなったあと、家庭裁判所に検認の申立を行う必要があり、相続手続をスタートするまでに数カ月の期間が必要です。それに対し公正証書遺言は、遺言者が亡くなったあと、検認の手続を経ることなく即時に相続手続をスタートできます。 |
図表 遺言を公正証書で作成するデメリット
遺言を公正証書で作成するデメリット | |
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第三者に遺言の内容を知られる | 公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会が必要です。そのため、証人には遺言の内容を知られることになります。 |
諸々の打合せを経て公証人が作成するので、手間と時間がかかる | 自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言を作成する場合、原則的に公証役場に出向くことになります。なお、病気などで公証役場に行けない場合、公証人に出張してもらうことも可能ですが、日当などの費用が発生します。また実務上は、遺言書の作成の前に、まず遺言者が遺言内容について説明・相談し、法的なチェックをしながら内容を詰めていくことになります。したがって、少なくとも3回は公証役場に出向く必要があります。 |
費用がかかる | 公正証書を作成するために公証人に支払う手数料がかかります。また、公証人に提出する資料として、相続関係を説明するための戸籍謄本など、不動産については登記事項証明書や固定資産税評価証明書などが必要となり、それらの取得費用が必要となります。 |
公正証書遺言作成の流れ
図表 公正証書遺言の作成の流れ
財産の確認 | ①自分が所有している財産(資産・負債)を確認し把握する |
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相続内容の検討 | ②誰に、何を、どのような割合であげるのかを決める |
公証役場に連絡 | ③公証役場に連絡し、必要書類・費用について確認する |
必要書類の準備 | ④公証役場に連絡し、必要書類・費用について確認する |
公証役場で面談 | ⑤公証人と遺言の内容について打合せをする |
公証役場に予約 | ⑥遺言作成日の予約・調整、証人の確保 |
遺言書作成 | ⑦公証人、証人2名以上の立会いのもと、遺言書を作成する |
① 財産の確認
遺言書を作成するにあたり、まずは自分が所有する財産について、財産の種類、財産の額を把握することが必要です。
不動産の評価額はいくらなのか、預金はどこにいくらあるのか、などを全て調べていきます。
また、遺言書には財産を特定するため正確な情報を記載する必要があります。そのために、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、通帳、有価証券などの必要書類を集めましょう。
集め終わったら、財産の種類、その評価額を財産目録のようにリスト化することをおすすめします。
②財産内容の検討
財産を把握したあと、誰に、何を、どのような割合であげるのかを決めます。
相続人の遺留分にも注意が必要です。決めた内容は、メモなど紙に書きおこしてください。
公証人との打合せの際に使用します。
③公証役場に連絡
公証役場を調べ連絡し、公正証書遺言を作成したいことを伝えます。
なお、「住所地を管轄する公証役場でなければならない」などの決まりはありません。一般的には、自宅や職場の最寄りの公証役場を利用する場合が多いです。
参照リンク
- 全国の公証役場の所在地
全国の公証役場の所在地の一覧表です(公証役場ホームページ)
④必要書類の準備
公証人などから必要書類を指示されますので、それらの書類を取得していきます。
一般的に公正証書遺言作成時に必要となる書類は、下記のとおりとなります。
図表 公正証書遺言作成時に一般的に必要となる書類
公正証書遺言作成時に一般的に必要となる書類 | |
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遺言者本人 |
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相続人に相続させるとき |
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相続人以外の人に財産を譲るとき |
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財産の中に不動産があるとき |
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財産の中に預貯金・有価証券があるとき |
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証人に関する資料 |
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⑤公証役場で面談
財産内容を検討した際に作成したメモや、公証役場から事前に指示された書類を持参し、公証人と遺言の内容について打合せします。
打合せをもとに公証人が遺言書の案を作成します。
⑥公証役場に予約
打合せが終了し、遺言書の案が完成したら、公正証書遺言を作成する日程を調整します。
なお、作成時に証人2人以上の立会が必要となるため、証人を手配する必要があります。遺言者本人が証人を手配できない場合は、公証人が手配してくれますが、証人の日当など費用が発生します。
⑦遺言書の作成
証人2人の立会いのもと、公正証書遺言が作成されます。
遺言書の正本、謄本の交付をうけ、公証人の手数料を支払い終了です。
公正証書遺言作成にかかる費用
公正証書遺言の作成費用は、法令で定められており、相続財産の額によって変動します。
作成費用とは別に、証人の日当報酬、公証役場以外で遺言を作成した場合は公証人の出張費がかかります。
図表 公正証書遺言の作成費用(日本公証人連合会ホームページより引用)
目的の価値 | 手数料 |
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100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
遺言執行者の指定
遺言執行者とは、遺言内容を実現させるために必要な手続をおこなう人のことをいいます。
例えば遺言内容のとおりに不動産の名義を変更したり、預貯金口座を解約して各相続人に分配したり、遺言内容の実現のために、さまざまな手続をおこなう権限を有しています。
遺言執行者を選任場合、以下のいずれかの方法で選任します。
図表 遺言執行者の選任方法
遺言執行者の選任方法 | |
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①遺言者が、遺言書で指定する方法 | |
②遺言者が、遺言により遺言執行者の指定を第三者に委託し、その委託を受けた者が遺言執行者を指定する方法 | |
③利害関係人の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任する方法 |
遺言執行者を指定しておいたほうがいいケースとして、財産を相続人以外の第三者にゆずる(遺贈)場合があります。
例えば遺言者が自分の死後、不動産をAという非営利法人に遺贈するという遺言を作成した場合、遺言執行者の指定がない場合は、遺言者の相続人全員とA法人で名義変更の手続をすることになり、手続が複雑になります。
また、遺言者の相続人全員が手続に協力してくれるかどうかもわかりません。
その点、遺言執行者の指定があれば、遺言執行者とA法人で名義変更の手続をすることになるので、より確実にA法人へ遺贈できることになります。
このように遺言を作成する際、遺言内容によっては、遺言内容を確実に実現させる方法として遺言執行者を指定しておくことも考慮する必要があります。
なお、遺言執行者は未成年者および破産者以外であれば誰でも遺言執行者に選任できます。
遺言書作成時の注意点
「遺された相続人の負担を軽くしたい」「自分の死後の財産の処分方法について自分の意思を明確にしておきたい」と思い作成した遺言書でも、形式的に法律で定められた遺言の要件を満たしておらず無効になったり、相続人側の権利を無視した内容の遺言など、遺言の内容によっては、かえってトラブルを招いたりすることもあります。
ここでは、遺言書を作成する際に特に注意が必要となる点についてご紹介します。
「遺留分」に注意
「遺留分(いりゅうぶん)」とは、相続人に最低限保障された相続分のことです。
たとえ遺言書であってもこれを侵すことはできません。
相続について定めている「民法」という法律は、遺言者の意思はできるだけ実現させようとする一方、遺された相続人にも財産を受け取る権利があると考えています。
遺留分は、法定相続人のうち配偶者、第1順位の血族相続人(子)および第2順位の血族相続人(親)にありますが、第3順位の血族相続人(兄弟姉妹)に遺留分はありません。
遺留分は、各相続人の法定相続分に対し一定の割合が認められています。
図表 遺留分の割合
遺留分の割合 | |
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1 配偶者、子、孫など | 法定相続分の2分の1 |
2 親だけの場合 | 法定相続分の3分の1 |
3 兄弟姉妹 | 遺留分なし |
遺留分を侵害された相続人は、多くの相続財産を取得した人などに対し、「遺留分相当の金銭を払え(遺留分侵害額請求)」と主張することができます。
例えば、父Aが亡くなり、Aには配偶者Bと子C、子Dがいるとします。法定相続分はBが4分の2、CおよびDが各4分の1です。
この場合、B、C、Dの遺留分は、Bが8分の2(4分の2×2分の1)、CおよびDが各8分の1(4分の1×2分の1)となります。
図表 法定相続分と遺留分
仮に父Aが全ての財産をXに遺贈するという内容の遺言を作成していた場合、配偶者Bは相続財産全体の8分の2について、CおよびDは8分の1について、Xに対し遺留分侵害額請求ができることになります。
したがって、遺言を作成する場合は、各相続人の遺留分に十分に配慮しながら作成する必要があります。
ただし、事情によっては遺留分を侵害する内容の遺言を書かざるを得ないこともあります。
その場合は、遺言の内容を調整したり、遺留分侵害額請求をされたときに備えて資金を準備しておくなどの対策が必要です。
自筆証書遺言書作成の際の注意点
自筆証書遺言は証人の立会いが不要など、いつでもどこでも気軽に作成できる一方、法律で定められている形式を守らないと無効になってしまいます。
また、形式は満たしていたとしても、遺言の内容があいまいな場合は、かえって相続人を混乱させてしまう可能性もあります。ここでは自筆証書遺言作成の流れにそって注意が必要なポイントを解説していきます。
図表 自筆証書遺言の作成の流れ
財産の確認 | ①自分が所有している財産(資産・負債)を確認し把握する |
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相続内容の検討 | ②誰に、何を、どのような割合であげるのかを決める |
遺言書の作成 | ③法律で定められた形式にしたがい作成 |
遺言書の保管 | ④遺言書を法務局などで保管する |
①財産の確認
遺言書の内容に記載する「財産」の内容について今一度、確認をおこないます。
なお、預貯金、上場株式、会員権、不動産、絵画、宝石・自動車などの動産類などについて、調べたうえで財産目録を作成します。
財産目録を作成する際には、負債についても確認しておくようにしましょう。
これらの資産、負債について「具体的にどこに、どれだけ」あるのかが分かるようにしておきます。
「相続財産調査」の解説
相続の対象になる財産の範囲、相続財産の調べ方、その調査の結果をまとめる「財産目録」の作り方まで、司法書士が解説しています。
- 書式・文例 ・財産目録のサンプル
- ポイント解説 ・預貯金口座などの調べ方・負債の調べ方・財産の換価方法
②相続内容の検討
相続が発生した際に、「遺言書」が存在する場合には遺言書の内容が優先されます。
そのため、遺言書の内容については、「誰に」「何を」「どれくらいの割合」で相続させるのかを決めていく必要があります。
③遺言書を書く
自筆証書遺言の形式は法律で定められています。
遺言書を書くにあたって注意すべきポイントは以下のとおりになります。
図表 遺言書本文の記載例
全文の自書(遺言者本人による手書き)
筆跡によって遺言者自身が作成したことを明らかとするため、自書が必要です。したがって、他人の代筆や、パソコンなどを用いて作成した場合無効となります。
ただし、例外があります。
平成31年の法改正によって、本文に添付する財産の目録についてのみ、自筆しなくてもいいことになりました。したがって、パソコンなどで作成が可能です。また、財産目録は、預貯金通帳の写しや、不動産の登記事項証明書などの資料の添付でも代用することができるようになりました。ただし、パソコンで作成したものや、資料で代用する場合にはすべてのページに遺言者の手書きによる署名と、押印(本文に押印したものと同じ印鑑)が必要です。
日付の自書
2通以上の遺言書が作成された場合に、その前後を明らかにするため遺言書が完成した日付を自書しなければなりません。日付は「年・月・日」まで記入します(和暦・西暦どちらでも可)。
氏名の自書
氏名も自書する必要があります。戸籍上の氏名を正確に記載してください。
押印が必要
押印は実印でも認印でもどちらでも大丈夫ですが、実印での押印をおすすめします。
認印で押印している場合、遺言者本人が押印したものではなく他人が押印したものだといって、遺言の効力が争われるような場合があります。
実印で押印しておけば印影の照合も可能ですので、後日の紛争のリスクを軽減することができます。
なお、遺言書が数枚にわたる場合は、ホチキスなどで順番に綴じ、用紙と用紙の間に契印(割り印)を押しておきます。契印は、1枚目と2枚目の継ぎ目に印を押すことで、2枚の書類が一続きの書類であることを示すものです。
財産は正確に記載する
遺言者が亡くなったあと、相続人は遺言書を使用して相続手続をすることになります。
例えば不動産の所在が間違っているなど、財産の記載に誤りがある場合は、相続手続に支障をきたします。登記事項証明書や通帳などの資料を確認しながら、正確に記載する必要があります。
自筆証書遺言の加除訂正方法
遺言書の加除訂正についても、厳格な様式が定められています。
民法968条第3項では、「自筆証書中(前項の財産目録も含む)の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければその効力を生じない。」と定めています。
つまり訂正の仕方を誤った場合その訂正は無効となり、さらに遺言全体が無効になる恐れもあります。したがって、加除訂正が必要な場合は、新たに作成しなおすことをおすすめします。
④遺言書を保管する
法律上定められているわけではないですが、遺言書の変造や改ざん防止のため、封筒に入れ封印したうえで保管することをおすすめします。
また、封筒には「遺言書在中」および「遺言者の氏名」を書いておけば、遺言者の死後、相続人が発見しやすくなります。
なお、令和2年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まりました。
図表 法務局による「自筆証書遺言書保管制度」
法務局による「自筆証書遺言書保管制度」 |
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今まで自筆証書遺言は遺言者本人が保管しなければならず、紛失、変造・改ざんしやすいことがデメリットでした。 このような不都合を回避するため、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえることが可能になりました。 ただし、注意が必要なのは、法務局の審査は、あくまで遺言書の形式的な審査に過ぎず、遺言書の有効無効(内容が適正かどうか)を判断するものではないことです。 つまり、保管されていた遺言書が、実際の相続手続に使用できるかは別問題ということになります。 参照リンク 法務省HP |
遺言書作成と合わせて作成することがある契約書
死後事務委任契約書
人が亡くなると、葬儀、納骨、埋葬、役所への行政手続、病院代等の支払い、年金手続など、さまざまな死後の事務手続が発生します。
一般的に、これらの事務手続は家族や親族が行ってくれますが、身寄りがいない場合など、死後事務をおこなう人がいない場合もあります。
このような場合に、死後の煩雑な事務手続を、生前に誰かへ委任しておくことができる制度が「死後事務委任契約」です。
「死後事務委任契約」の解説
死後の葬儀、病院や介護施設への未払い料金の支払いなどについて代理で手続を依頼できる「死後事務委任契約」について、司法書士が解説いたします。
- 書式・文例 ・死後事務委任できる行為の一覧表
- ポイント解説 ・死後事務委任の作成方法・メリット・デメリット
任意後見契約書
本人の判断能力があるあいだに、将来認知症などで判断能力が衰えた場合に、自分に代わって財産を管理したり、介護サービスなどの身上監護に関する契約などをすることについて、本人が信頼できる人に委任しておくことができる制度が「任意後見契約」です。
任意後見契約書は、公正証書で作成する必要があります。
「任意後見契約」の解説
判断能力が衰えた際にサポートを受けるための手続である「任意後見契約」について、司法書士が解説いたします。
- 書式・文例 ・任意後見手続の流れ
- ポイント解説 ・任意後見契約書作成のための必要書類・裁判所の手続
家族信託
家族信託とは、財産管理の方法の一種です。
具体的には、将来認知症などで、自分が自分の財産の管理をできなくなってしまった場合に備えて、元気なうちに自分の財産を信頼できる自分の家族に託し、管理や処分を任せる制度のことです。
家族信託にも「遺言代用機能」というものがあり、本人が亡くなった場合に対象となった財産をどうするかを決めておくことができますが、信託に適さない財産もあり、そのような財産については遺言書でカバーする場合などがあります。
「家族信託」の解説
生前から財産承継をおこない、家族による積極的な管理・処分を依頼することができる「家族信託」制度について、司法書士が解説いたします。
- 書式・文例 ・家族信託手続の流れ
- ポイント解説 ・家族信託制度の仕組み・メリット・デメリット
相続人にとっての遺言書
遺言書があるかどうかの調べ方(公証役場)
公正証書遺言の場合、被相続人(亡くなった方)が生前に遺言書を作成しているか否かを検索すること可能です。
これを遺言検索といいます。特に平成元年以降に作成された遺言書に関しては、データで一元管理されているため、全国の公証役場が検索対象になります。
したがって、遺言を作成された公証役場が分からない場合でも検索が可能となります。(逆に、昭和の時代に作成された公正証書遺言については、作成された公証役場でのみ検索が可能です。)
遺言書を見つけた際の対応(家庭裁判所)
自宅などで遺言書を発見した場合、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認とは、相続人など関係者の立会いのもと、遺言書の内容について検認時の状態で保存する一種の証拠保全の手続です。
遺言書の有効無効を判断する手続ではありません。
なお、検認時の状態で保存する手続なので、できる限り発見時の状態で検認を受けることが望ましいです。
封印された遺言書を検認前に開封することは避けましょう。
検認前に勝手に開封すると5万円以下の過料が科されることとなっています。
検認を受ける必要がある遺言(特別方式による遺言を除く)の種類は、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。ただし、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言については検認は不要です。
これらの遺言書は、検認を受けなければ不動産の相続登記や、預貯金の相続手続に使用することはできません。
検認の申立は、被相続人(遺言者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対しておこないます。なお、検認手続は申立から検認を終えるまでに数カ月の期間を要しまので注意が必要です。
公正証書遺言作成のフルサポート
遺言は、遺言者が亡くなったあとに効力が生じるものです。その時になって遺言の内容に疑義が生じても遅いので、遺言を作成する場合には十分に注意する必要があります。
当事務所では、財産調査から遺言書の文案作成、公証役場との調整など、遺言作成をサポートさせていただきます。お気軽にご相談ください。
検認手続のフルサポート
当事務所では、家庭裁判所における検認申立書の作成、その準備としての戸籍謄本などの必要書類の収集からしっかりサポートさせていただきます。お気軽にご相談ください。
財産管理契約・死後事務委任契約
遺言書を作成する際に、利用されることが多い財産管理契約と死後事務委任契約。老後の生活サポートに不安がある方のために、これらの「老後支援」のための仕組みについて、司法書士が解説いたします。