親が亡くなったらやるべき手続きと期限について解説


相続手続

執筆者 司法書士 上垣 直弘


  • 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
  • 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号

日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。


親が亡くなった時におこなう相続手続きや流れなどについて、手続き期限も合わせて司法書士が解説します。

目次

親が亡くなったらやるべき手続きと期限について解説


多くの方にとって、親が亡くなったあとの各種手続きや相続について、どのように進めるべきか悩まれることがあります。

はじめての経験であれば、なおさらどの順序で行うべきか途方に暮れてしまう方も少なくないでしょう。

 

心の整理もつかない中、膨大な手続きをこなすことは容易ではありません。親が亡くなった後には、死亡診断書の取得や葬儀の準備、さらには相続や公的手続きなど、多岐にわたる手続きが必要となります。

手続の中には期限が設けられているものもあり、優先順位をつけて進める必要があります。

 

本記事では、親が亡くなった後に基本的に必要となる手続きや期限、提出先についてわかりやすく解説します。

多忙な時期に漏れなくスムーズに対応できるようにするための参考としてご活用ください。

1.親が亡くなった時の手続き一覧

 

親が亡くなった当日から7日目までを目安に、やるべきことを解説します。

2.葬儀までにやるべき手続き




家族や親しい人が亡くなった場合、一家の中で最も悲しみや混乱が大きい時期でもあります。
その中で、必要な手続きを行うことは難しいかもしれませんが、スムーズに進めるために知識が重要です。

逝去当日から葬儀にかけての手続きには、死亡診断書の受領、死亡届の提出、葬儀社の手配、公的手続きなどがあります。

2-1.死亡診断書・死体検案書(病院・介護施設、警察署)


まず、親が亡くなった直後に行わなければならないのが、死亡診断書の取得です。
これは、入院中の病院、入所中の介護施設で死亡した場合に医師が発行するもので、故人の死亡を正式に確認するために必要な書類です。
死亡届を役所に提出することになりますが、この際に死亡診断書が必要となります。
死亡診断書の発行手数料は、医療機関により異なりますが、3,000円~1万円程度です。

なお、事故死のように自宅以外の場で亡くなった場合には、警察による確認、医師による検案(警察署が依頼した医師が死因の調査・診断)がおこなわれることがあります。
この場合、死体検案書が発行され、検死終了後に遺体は遺族のもとへ搬送されます。

「検死」は、検視、検案、解剖を含んだ広範囲な調査のことを言います。
そのため、死体検案書の発行には約3万円~10万円と高額になることがあります。
参照│「検死」「検案」「解剖」の違い
検視 実施者:検察官。あるいは司法警察員(検視官)または検察事務官
目 的:事件性の有無を調べる
内 容:遺体の状況や周囲の状況を検分
検案 実施者:医師
目 的:医学的見地から死因や死亡時刻を調べる
内 容:遺体の外表面を検査し、病歴や死亡状況から判断
解剖 実施者:医師
目 的:医学的見地から詳細な死因や死亡時刻を調べる
内 容:遺体を切開して内部構造を観察・分析

2-2.死亡届(市区町村役場)


市区町村役場で、死亡届出と同時におこなっておくと良い手続きは次の通りです。
  1.  死亡届 [死亡の事実を知った日から7日以内]

  2.  世帯主変更届 [世帯主の死亡日から14日以内]

    死亡した親が世帯主の場合に必要です。

  3.  火葬許可申請

    市区町村役場で名称異なる場合があります。火葬後、埋葬許可証となります。

2-3.葬儀社の手配、葬儀の連絡


お葬式を執り行うために、葬儀社の手配も早急におこなわなければなりません。

葬儀の規模や形式を家族で相談し、適切な業者を決定します。

故人が事前に葬儀社を決めて申し込んでいた場合には、すみやかに当該葬儀社に連絡を入れましょう。

 

葬儀社との打合せでは、葬儀プラン(家族葬、一般葬など)、葬儀の日程、お寺や斎場、火葬場の確認をおこないます。一般葬であれば喪主、案内連絡係、御香典を預かる受付、通夜や葬儀の参列者への対応を決めていきます。

 

さらに、故人の勤務先や参列者への連絡も速やかにおこないましょう。

訃報は直接電話やメールで知らせると共に、SNSを活用して広く連絡する方法もあります。ただし、SNSでのお知らせは必要に応じてプライバシー設定を行い、公開範囲を制限するようにしましょう。

こうすることで、故人を敬う気持ちとともに円滑な葬儀運営を実現することができます。



3.葬儀後にやるべき手続き




葬儀が終わった後も、多くの重要な手続きが残されています。

これらの手続きを漏れなく適切におこなわなければ、罰則を受ける場合 や、親が遺した財産や権利を正しく引き継ぐことができないなどのリスクが生じることがあります。

葬儀後の手続きは大別すると公的手続き、税金関連の手続き、相続手続き、遺産整理手続き、そして民間サービスの解約や変更の手続きがあります。

具体的な手続きの内容とその方法について詳細に解説していきます。

3-1.公的機関への手続き


市区町村役場、年金事務所、ハロワーク(公共職業安定所)、健康保険組合(または協会けんぽ)、税務署などの公的機関に対しておこなう手続きについて解説します。

公的機関に対する手続きには、年金や健康保険、介護保険などの手続きがあります。
以下に、各手続きの詳細と注意点を解説します。

3-1-1.年金(年金事務所・年金相談センター)


親が亡くなった際、年金を受給していた場合に停止手続きを速やかにおこないます。

参照 年金受給停止の手続期限


 ① 厚生年金受給者の場合
 死亡後10以内に手続き

 ② 国民年金受給者の場合 死亡後14以内に手続き

 ※ 日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合、原則死亡届の提出不要

 

(参照リンク 日本年金機構「Q年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」

期限を過ぎてしまうと、「不正受給とみなされる」「故人の口座に年金が振り込まれ続け、後日返金が必要になる」といった問題が発生する可能性があります。

 

手続きは、年金事務所または年金相談センターで行います。必要書類には、年金受給者死亡届(報告書)、故人の年金証書、死亡を証明する書類(死亡診断書のコピーや戸籍抄本など)が含まれます

 

また、遺族年金を受け取る場合も、申請が遅れると受給開始が遅れることになります。

年金に関する手続きを怠らず、迅速に行うことで、後のトラブルを避けることができます。

 

また、故人が国民年金に加入していた場合、一定の条件を満たせば、遺族年金や寡婦年金を受け取ることが可能です。

このためには、速やかに手続きを行い、必要な書類を年金事務所に提出する必要があります。

手続きをおこなわないでいると遺族年金の受給開始が遅れてしまい、故人の収入をもとに暮らしていた場合、その生活に困難をもたらすこともあるため注意が必要です。

参照 遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金
  • 遺族基礎年金(市区町村役場・年金事務所・年金相談センター)
    遺族基礎年金は、以下のいずれか条件を満たす場合に受給できます。
     ① 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
     ② 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
     ③ 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
     ④ 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

    故人に生計維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子(障害の状態にある場合は20歳未満)のいる配偶者」または「子」が受給できます。「生計を維持されていた」とは、日常生活を送るうえで家計が同じ(お財布が一緒)で、遺族の前年の年収が850万円未満(または前年の所得が年額655万5千円未満)である場合をいいます。
  • 寡婦年金(市区町村役場・年金事務所・年金相談センター)
寡婦年金は、以下の条件を満たす場合に「妻」が受給できます。
妻が先に死亡した場合、夫に寡婦年金は支給されません。
 ① 故人(夫)が国民年金の第1号被保険者(自営業者等)として
   10年以上保険料を納付していたこと
 ② 婚姻期間が10年以上であること
 ③ 妻が死亡当時に夫によって生計を維持されていたこと
 ④ 妻が60歳以上65歳未満であること
 ⑤ 故人(夫)が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがない
 ⑥ 妻が老齢基礎年金の繰り上げ支給を受けていない

寡婦年金の金額は、夫が65歳から受けることができた老齢基礎年金の年金額の4分の3を、60歳から65歳までの5年間受給することができます。
  • 死亡一時金(市区町村役場)
死亡一時金は、上記の寡婦年金のいずれかしか受給できません。
 ① 故人が国民年金第1号被保険者として3年以上保険料を納付
 ② 故人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していなかった

故人と生計を同じくしていた(① 配偶者、② 子、③ 父母、④ 孫、⑤ 祖父母、⑥ 兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)が受けることができます。
死亡一時金の額は、保険料納付期間に応じて12万円から32万円の範囲で支給されます。

なお、故人の方において未支給の年金を受け取りせずに亡くなった場合、故人と生計を同じくしていた(① 配偶者、② 子、③ 父母、④ 孫、⑤ 祖父母、⑥ 兄弟姉妹、⑦ ①~⑥以外の3親等内の親族の順)が受けることができます

 

参照 故人の要件


 ① 年金を受け取る前に亡くなった

 ② 年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金)を受け取る権利はあったが、請求しないうちに亡くなった

この未支給年金の請求には死亡後から5年以内におこなう必要があります。

死亡後5年を経過すると、権利が消滅してしまうことに注意が必要です。

3-1-2.国民年金の死亡一時金(市区町村役場、年金事務所、年金センター) 


死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者、農業者・漁業者などの方々や、その配偶者)として一定期間保険料を納めた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けることなく亡くなった場合に、その遺族に支給される給付金です。

この制度は、長期間保険料を納付したにもかかわらず、年金を受給することなく亡くなった場合に、その納付した保険料の一部を還元することで国民年金制度の公平性を保ちつつ、遺族への一定の経済的支援をおこなうことで「社会保障制度」の一環としての役割を果たしています。

ただし、請求期限が死亡日の翌日から2年と定められているため、遺族は速やかに手続きをおこなう必要があります。

保険料納付済月数及び免除月数の合計 支給金額
36月以上 180月未満 120,000円
180月以上 240月未満 145,000円
240月以上 300月未満 170,000円
300月以上 360月未満 220,000円
360月以上 420月未満 270,000円
420月以上 320,000円

 

3-1-3.遺族年金(年金事務所)

 

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。

いずれも請求期限があり、死亡後5年以内に手続きをおこなう必要があります。

 

国民年金の被保険者が亡くなった際に、①子のある配偶者、または②子に以下の金額の「遺族基礎年金」が支給されます。

 

参照 令和6年4月分からの遺族基礎年金の年金額

 

  1. 子のある配偶者が受け取る場合

    ・ 昭和31年4月2日以後生まれの方       816,000円 + 子の加算額

    ・ 昭和31年4月1日以前生まれの方       813,700円 + 子の加算額

  2. 子が受け取る場合

    1人あたりの額は、以下の金額を子の数で割った額

    ・ 816,000円+2人目以降の子の加算額

     1人目および2人目の子の加算額 各234,800円

     3人目以降の子の加算額 各78,300円

厚生年金保険の被保険者が亡くなった際には「遺族厚生年金」が支給されます。

遺族基礎年金と異なり、子がいなくても受給できます。

また、亡くなった人によって生計を維持していた、①子のある配偶者、②子(18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子)、③子のない配偶者、④父母、⑤孫(子と同じ条件)、⑥祖父母の順で受給できます。

 

遺族年金の申請を行うことで、生活の安定を図ることができます。

親が亡くなると家計に直結する収入が減少する可能性が高くなるため、遺族年金を受給することは生活を維持するためには重要な手続きです。忘れずにおこなうようにしましょう。

3-1-4.健康保険(市区町村役場・年金事務所)


親が亡くなった際、速やかに健康保険の資格喪失手続きが必要です。

 

期限を過ぎて手続きをおこなった場合、「保険料の過払い(本来支払う必要のない保険料を支払ってしまう)」「不正利用(亡くなった方の保険証が有効なままとなり、誤って使用してしまうと、後で医療費を返還しなければならない事態に陥る)」といったトラブルが発生する可能性があります。

保険証の返却、資格喪失届の提出などの手続きを適切におこなうことで、予期せぬトラブルや不正利用を未然に防ぐことができます。

  • 国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合(市区町村役場)

     死亡後14日以内

  • 健康保険の場合(年金事務所)

      死亡後5日以内

3-1-5.介護保険(市区町村役場)


故人である親が65歳以上、または40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合、死亡後14日以内に介護保険資格喪失届を市区町村役場へ提出する必要があります。

 

介護保険資格喪失届を提出せず、被保険者証を返却しないと、不正受給とみなされるリスクがあります。

また、介護保険料の未納がある場合は、相続人である遺族が納付義務を引き継ぐため、不足分を支払う必要があります。

反対に、介護保険料を納め過ぎている場合には、相続人に還付されます。

この点もしっかりと状況を確認しておくようにしましょう。

3-1-6. 雇用保険受給資格者証の返還(雇用保険を受給していたハローワーク)


雇用保険を受給していた親が亡くなった場合、失業手当の受給資格を証明する雇用保険受給資格者証をハロワークに返還します。

この返還は、死亡後1か月以内におこなう必要があります。


3-1-7.埋葬料(健康保険組合または協会けんぽ)


埋葬料は、健康保険の被保険者である親が業務外の事由で亡くなり、その故人に生計を維持されていて、かつ埋葬をおこなう方が請求できます。
この「生計を維持されていた」方は、相続人である親族であるかは問いません。
埋葬料として5万円が支給されます。

注意点として、① 死亡日の翌日から2年以内に請求をしないと権利が消滅すること、② 被保険者だった故人が、資格喪失後3か月以内に亡くなったときにも請求できる点が挙げられます。

必要書類には、健康保険埋葬料請求書、健康保険証、死亡診断書、葬儀費用の領収証などが必要になりますが、加入先の健康保険組合によって必要書類が異なることがあります。
申請先となる健康保険組合などに確認しておくようにしましょう。

なお、故人が国民健康保険に加入の場合は、次の項目で説明する「葬祭費」を請求することになります。

3-1-8.葬祭費(市区町村役場)


葬祭費は、国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた方が亡くなった際、その葬儀を執り行った人に支給される給付金です。
支給額は自治体によって異なり、おおむね3万円〜7万円程度です。

申請期限は葬儀を行った日の翌日から2年以内です。
葬祭費は喪主の経済的負担を軽減するための制度ですので、該当する場合は必ず申請するようにしましょう。

申請者(喪主)が市区町村役場の担当窓口(主に年金・保険部署)に申請します。
葬祭費の申請時には、死亡診断書(埋葬許可証と一体となっているもの)や故人の保険証、葬儀の費用を証明する領収書などが必要となることが多いため、これらの書類を速やかに整えましょう。

3-1-9. 高額医療費の還付(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村役場)


高額医療費の還付は、故人が生前に高額な医療費を負担した場合に、その費用の一部を還付してもらう手続きです。

 

「高額な医療費を負担した場合」とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合のことを言います。

自己負担の上限は年齢や所得によって異なります。

 

また、所得の判定や必要書類についても、健康保険組合と協会けんぽ、国民健康保険について異なるため、あらかじめ申請先に確認しておくようにしましょう。

 

医療費支払い(診療月)から2年以内となっているため、申請期限に注意が必要です。



3-2.税金関連


親が亡くなった後、税金に関連する手続きも重要なポイントの一つです。
税金関連の手続きには、相続税申告や準確定申告などが含まれます。

税務申告において、申告をしない、申告期限に遅れる、申告内容に誤りがあると、無申告加算税、延滞税、過少申告加算税、重加算税などのペナルティが課される可能性があります。
そのため、特に相続に関する税務申告は、専門的な知識を持つ税理士などの専門家のサポートを受けることも大切です。

3-2-1.所得税の準確定申告(税務署)


生前に得た所得に対する税金を正しく申告するために、親が亡くなった日から4ヶ月以内に所得税の準確定申告が必要です。

亡くなった人の所得税を、その年の1月1日から死亡日までの分を管轄税務署に申告するもので、これを「準確定申告」と呼びます。 
もしこの手続きを怠ると、延滞税税や無申告加算税が課される可能性があります。

準確定申告が必要になる例として、親が不動産収入や事業所得、2,000万円を超える給与所得、400万円を超える年金所得などを得ていた場合、これらを計算し準確定申告書を作成・提出する必要があります。

この準確定申告は、相続人が申請します。

なお、税務申告というと「税金を支払う」ことをイメージしがちですが、医療費控除や配偶者控除、扶養控除、雑損控除、寄附金控除などの所得控除の適用などにより、還付金を受けられるケースもあります。

還付金を受け取るための準確定申告は、4か月を超えたとしてもペナルティを受けることはありません。しかし、還付申告の期限は5年以内となっており、期限を過ぎてしまうと時効により還付が受けられなくなるため注意が必要です。

また、還付金は相続財産に当たるため、相続税申告が必要なケースでは、相続財産に含めて申告しなければなりません。
税務申告については、複雑で広範囲に渡る知識や理解が必要になるため、税理士に相談されることをおすすめします。

3-2-2.相続税申告(税務署)


相続税申告はすべての相続において必ず発生する手続きではありません。
相続財産が基礎控除額を超える場合に、相続税の申告・納税が必要になります。

参照 相続財産の基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例:法定相続人が3人の場合
      4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3)を超えると申告が必要
      ※ 上記に加え、特例を適用することで更に控除が増えることがあります。
        なお、特例を利用する場合、相続税が発生しなくても
           申告が必要になるため注意が必要です。
          ・ 配偶者の税額軽減
            ・ 小規模宅地等の特例
            ・ 農地の納税猶予の特例
            ・ 特定計画山林の特例


相続税の申告及び納税について、相続開始の日の翌日から10か月以内におこなわなければなりません。

これを過ぎると追徴課税を受ける可能性があります。

 

相続税申告には、資産・負債に関する資料や相続関係を証明する資料などが必要となり、適用が受けられる特例や控除についての知識、財産評価などについて専門的な知識が求められます。

申告期限内に相続財産の調査や評価などやるべきことが多く、税理士などの専門家のアドバイスを早めに受けることが大切です。

適切に税務申告をおこなうことで、後々の問題を未然に防ぐことが期待できます。

3-3.相続手続き(遺産分割手続き)


親が亡くなると、相続手続きは避けて通れない重要なステップです。
具体的には、どのような手続きが必要で、どのように進めるのかを理解しておくことが大切です。

相続人調査や相続財産調査から始まり、遺言書の照会や検認、最終的に相続放棄や遺産分割まで、一つひとつの手続きについて順を追って解説していきます。

3-3-1.相続人調査


相続人調査は、故人の相続人の範囲を確定するために必要な手続きです。
故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本等を本籍地のある市区町村役場の窓口、郵送で取寄せて、相続人を確認します。

相続人単独でできる手続きもありますが、相続人全員でおこなわなければならない 手続きもあるため「相続人」の調査は、相続開始後に何よりも先におこなうべき調査です。

参照 法定相続人の範囲

配偶者

 配偶者は常に相続人となります。

1順位 子供

  子供がいる場合は子供が相続人となります。

  子供が既に死亡している場合は、
  その子供の直系卑属(孫など)が代襲相続人となります。
  なお、婚姻関係のない男女間において認知された子がいる場合、
  この「子供」に該当します。

 第2順位: 直系尊属(親、祖父母など)

  第1順位の相続人がいない場合に相続人となります。

  親がいる場合は親が優先され、親がいない場合は祖父母が相続人となります。

 第3順位: 兄弟姉妹

  第1順位、第2順位の相続人がいない場合に相続人となります。

  兄弟姉妹が既に死亡している場合は、その子(甥・姪)が代襲相続人となります。


なお、202431日から全国にある戸籍謄本等を最寄りの市区町村役場の窓口で取得できるようになりました。

 

広域交付制度で取得できない書類については、従来通り本籍地の市区町村役場で取得するか、郵送で請求する必要があります。

また、この制度を利用できるのは本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限られており、兄弟姉妹や甥姪の戸籍謄本等は取得できません。

参照 広域交付制度(202431日から導入)

最寄りの市区町村役場の窓口で取得できるようになった戸籍謄本等の種類と、取得できない種類

 ■ 取得できる戸籍謄本等

  ・ 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)

  ・ 除籍全部事項証明書(除籍謄本)

  ・ 改製原戸籍謄本

 ■ 取得できない戸籍関連書類

  ・ 戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)

  ・ 除籍抄本

  ・ 戸籍の附票

  ・ コンピューター化されていない戸籍

  ・ 戸籍諸証明(身分証明書、独身証明書等)


取寄せ手続き、戸籍謄本等の読み解き、正しく相続人調査をおこない相続人を確定させることに自信のない方は、司法書士に依頼できるケースがあります。

当事務所でも、相続不動産の名義変更など遺産整理手続きと合わせて相続人調査のサポートもおこなっています。

お気軽にお問い合わせください。

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3-3-2.相続財産調査


相続財産調査は相続手続きの中でも特に重要なステップです。

相続財産が正確に把握できないと、相続人間で公平な分配や税務申告が難しくなり、トラブルの原因となる可能性があります。

 

なお、相続財産には「借入れ」などの負債も含むことに注意が必要です。

そのため、相続財産調査の範囲は資産だけでなく、負債についても調査をおこなうことが大切です。

 

例えば資産については、故人が所有していた預貯金、不動産、株式、自動車などの財産を調査します。

詳しくは、後述の「3-4.遺産整理手続き」の項目で解説します。

 

反対に、負債については、個人の自宅などに届く郵便物の確認、登記事項証明書を取り寄せて所有不動産に担保権の設定がされていないかの確認、信用情報機関(株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC))への照会などにより、借入れがないかを調査します。

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3-3-3.遺言書の照会

故人である親が遺言書を残している場合、原則としてその内容が優先されます。

遺言書の内容、作成の過程における問題があり無効となる場合には、相続人全員で遺産分割協議(話し合い)をおこないます。

 

そのため、遺言書が残されているかを確認する必要があります。

遺言書の探し方については次の関連コラムで詳しく解説しています。


遺言書を探す先は主に、自宅、入院・入所先、金融機関の貸金庫、法務局(自筆証書遺言書保管制度の利用の有無の照会)、公証役場(平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言の照会)などが考えられます。

遺言書が残されているかどうかで、遺産分割方法の手続きが異なってくるため、まずはその有無を確認しておくことが大切です。

なお、法務局・公証役場以外で遺言書を発見した場合には、次の「検認(けんにん)」と呼ばれる家庭裁判所の手続きが必要になります。

3-3-4.遺言書の検認


遺言書の検認は、検認時点での遺言書の形状、状態を記録し明確にし、相続人全員に遺言の存在と内容を知らせる手続きで、遺言書の偽造・変造、隠匿(隠すこと)を防止するものです。

なお、これは遺言書が法的に有効であることを証明するものではありません。

また、この検認手続きは、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人の法律上の義務となっています。

検認をしなかった相続人には、5万円の過料(かりょう)の罰則があります。

 

遺言書の検認手続きについては、次の関連コラムで詳しく解説しています。

3-3-5.相続放棄


相続放棄は、相続によって発生するすべての権利と義務を放棄する手続きです。

親が亡くなった際、その相続財産がプラスよりもマイナスの財産、つまり負債の方が多い場合、相続放棄を行うことでその負債を引き継がないという選択肢があります。

 

「親の多額の借金を引き継ぎたくない」といったケース以外にも、「農地・山林を引き継ぎたくない」「複雑で面倒な相続関係から離脱したい」「特定の相続人に財産を集中させたい(引き継がせたい)」などの場合にも利用されることがあります。

 

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行う必要があり、被相続人が亡くなったことを知った日から3カ月以内(熟慮期間)に「相続放棄の申述書」を提出することが必要です。

この期間を過ぎると自動的に相続を承認したとみなされてしまいますので、期限内に速やかに手続きをすることが求められます。

 

前述の相続財産調査が進まず、熟慮期間内に相続放棄の判断ができない場合には、同期間内に家庭裁判所に対して「相続放棄申述受理期間の伸長」をおこないます。

熟慮期間が延長するか、延長を認める場合にどれだけの期間を延長するかについては裁判所の判断になります。

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  • 「相続放棄」

    当事務所でも相続放棄の手続代行をおこなっております。お気軽にお問い合わせください。

 

なお、相続放棄をした場合でも、一定の条件の場合に「財産管理義務」が残ることがあります。特に、農地の相続放棄を考えている相続人の方は次の関連コラムをご参照ください。




3-3-6.遺産分割


遺言書が残されておらず、相続放棄せず、遺産を引き継ぐ場合には、相続人全員による遺産分割協議をおこないます。

法律上、相続人全員の参加が必要です。

ひとりでも欠けている場合には、遺産分割協議は法的に無効となります。

 

遺産分割について、詳しくは次の関連コンテンツで、遺産分割協議の進め方について解説しています。

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また、遺産分割協議成立後に「遺産分割協議書」を作成することが一般的です。
遺産分割協議による相続手続きを進める場合、不動産は法務局、自動車は運輸局、預貯金口座の解約は銀行などの金融機関、株式は証券会社などで遺産分割協議の成立を証明するものとして遺産分割協議書の提出を求められます。

そのため、遺産分割協議書作成までが「遺産分割協議」と言っても過言ではありません。
なお、遺産分割協議書の書式(サンプル)については、次のコラムで詳しく解説しています。


相続登記の申請先である法務局が提供する遺産分割協議書の雛形をもとに解説したコラムもご参照ください。


3-4.遺産整理手続き


遺産整理手続きとは、故人の遺産を承継するための手続きです。

具体的には、自動車や不動産の名義変更、預貯金口座の解約、株式の売却処分などが挙げられます。

 

代表的な遺産の遺産整理手続きについて解説します。

詳細な遺産整理手続きについては、次の関連コンテンツをご参照ください。

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3-4-1.不動産(相続登記)


相続不動産の登記名義の変更は法律上の義務となっています。
「正当な理由なく」変更登記をおこなわない場合には、罰則として10万円以下の過料を受ける可能性があります。 
相続登記の義務者 登記義務の期限
相 続 相続人 ①相続人、②遺言書による贈与(遺贈)を受けた方は、自身のために相続が開始、遺贈があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内(改正不動産登記法76条の2第1項)
遺贈(遺言書による贈与) 贈与を受けた相続人(受遺者) ①相続人、②遺言書による贈与(遺贈)を受けた方は、自身のために相続が開始、遺贈があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内(改正不動産登記法76条の2第1項)
遺産分割
(改正された不動産登記法76条の21項の期間内に、相続登記申請がなされていない場合の遺産分割)
共同相続人全員 ①相続人、②遺言書による贈与(遺贈)を受けた方は、自身のために相続が開始、遺贈があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内(改正不動産登記法76条の2第1項)
遺産分割
(法定相続分で相続登記申請がなされた後の遺産分割)
法定相続分を超えて所有権を取得した方 ③遺産分割による取得者については、遺産分割の日から3年以内(改正不動産登記法76条の2第2項)

相続不動産を管轄する法務局に対して、相続登記をすみやかにおこなう必要があります。
これを怠ると、後々の手続きやトラブルの原因となることがあります。
例えば、未登記のままだと売却や名義変更がおこなえないため、資産売却による換価処分が進めることもできません。

以前は、相続登記は義務ではなかったため、いまだに登記が先代名義のままのケースもあります。現在、法律が改正され、改正前の相続登記についても義務化の対象となっています。

上垣司法書士事務所では、先代名義のままの登記名義の不動産についても名義変更のためのサポートをおこなっています。
相続登記でお困りの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

なお、土地・建物の固定資産税は毎年1月1日の所有者に課税されます。
例えば、故人が10月1日に逝去され、その年の12月末までに相続登記をおこなった場合、登記簿上の新所有者が納税義務者となります。

その年の12月末までに相続登記をおこなわなかった場合は「相続人全員」が納税義務者となります。この場合、基本的に相続人代表者を決めて、不動産のある市区町村役場に連絡をおこない、その代表者当てに納税通知書が送付されます。
納税についても、どのように対応するか相続人間で話し合いをおこなっておきましょう。

3-4-2.預貯金


相続人から提出された相続届などにより故人が亡くなったことを知った金融機関は、故人名義の口座を凍結します。

 

預貯金の名義変更や解約による払い戻しには、遺産分割の内容を証明するための「遺言書」「遺産分割協議書」、相続人間で揉めて遺産分割調停を経て分割した場合には「調停調書」などに加えて、相続関係を示す「故人の戸籍謄本等」の提出が必要になります。

 

相続税申告が必要になるケースであれば、金融機関に解約などの相続手続きをおこなう際に、残高証明書、定期預金がある場合の経過利息計算書もあわせて取得しておくと良いでしょう。

 

なお、相続人全員の同意がなくても遺産分割前に一定の範囲で支払いを受けることができる「仮払い制度」の利用により、口座が凍結されている場合でも故人の葬式費用、介護施設の未払い費用の支払いのため充てることができます。

遺産分割に先行して支払いを受けるため、この仮払い制度により払い戻された預金は、払い戻しを受けた相続人が取得したものとして遺産分割において調整をはかることになります。

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3-4-3.株式(証券)


上場株式の場合、証券保管振替機構に照会することで、故人がどの証券会社や信託銀行で口座を開設していたかを知ることができます。


上場株式がある場合、証券会社などで名義変更手続きをおこないます。

相続人が証券口座を持っていない場合は、新規に口座開設が必要です。

名義変更後、保有し続けたり、売却したりすることになります。

 

なお相続税申告が必要な場合、株式の評価が必要になるため、相続時点(死亡日)の残高証明書などの発行を受けておくと良いでしょう。


3-4-4.自動車


軽自動車は軽自動車検査協会、普通自動車は運輸支局で、名義変更手続きをおこないます。
相続により新所有者となった相続人は、15日以内に移転登録(名義変更)の申請をしなければなりません(道路運送車両法 第13条 移転登録)。

自動車の売却、廃車処分をおこなうにも、まずは名義変更をおこなう必要があります。
また、名義変更を放置していると自動車税の納付書が旧所有者(故人)宛てに送られるため、新所有者が適切に納税できない可能性や、延滞金が発生や、車検が受けられなくなる可能性があります。
このような後のトラブルを回避するためにも、すみやかに手続きをおこなうようにしましょう。

なお、故人の運転免許証がある場合、自動車安全運転センターや警察署に返納します。
この点も忘れずにおこなうようにしましょう。


3-5.定期・継続的利用サービスの停止


親が亡くなった後、葬儀や公的手続きだけでなく、民間サービスの契約や登録の変更も必要です。

これにはクレジットカードの利用契約、新聞購読やインターネット関連サービスの定期利用の解約などがあります。

3-5-1.契約の解除(クレジットカード、定期契約サービス)


クレジットカードなど定期利用契約のサービスの解約をおこないます。

未使用のクレジットカードをそのままにしておくと、年会費が発生したり、不正利用のリスクが高まる恐れがあります。

 

クレジットカード会社や信販会社などからの請求書、預金口座の通帳記載の取引内容から、引き落としを確認することも一つの方法です。

  •  クレジットカード契約
  •  インターネット回線
  •  動画・音楽配信などサブスクリプションサービス
  •  新聞紙など定期購入サービス
  •  携帯電話
  •  貸金庫・貸倉庫
  •  有料会員契約
  •  各種保守契約
  •  公共料金(※利用継続する場合、次の項目の変更手続き)

 

3-5-2.公共料金の請求先変更

 

親が亡くなった後も、残されたもう一人の親が電気、水道、ガスなどのライフラインを利用継続する場合には契約の名義を変更します。

4.まとめ

 

本記事では、親が亡くなった際に、逝去当日から葬儀まで、そして葬儀後の公的手続き、税金関連、相続手続き、遺産整理手続き、民間サービスの対応方法など、項目ごとに詳しく紹介しました。

親が亡くなった際の手続きは多岐にわたり、法律上定められた期限があるものも多く、今回の記事を参考に計画的に早めの対応を心がけて行動しましょう。

 

こうした一連の手続きの中には、司法書士で対応できる手続きも含まれています。

相続手続きの多くは、平日の日中に対応しなければなりません。

そのため、大変手間のかかる相続手続きも、司法書士のサポートを得ることで、時間的にも精神的にも負担を大幅に軽減することができます。

 

上垣司法書士事務所では、普段お仕事などで忙しく、自分で書類を集めて手続きをおこなうのが難しい場合には手続きの代行も可能です。
相続不動産の登記名義の変更、預貯金の解約など遺産整理手続きについてもご相談ください。


なお、ご依頼の際、提携する税理士による相続税申告の無料相談や相続税額のシミュレーションも対応可能です。

相続税に強い税理士や相続問題に詳しい弁護士と提携しており、遺産相続問題について相談を実施しています。

随時実施しております相続に関するご相談では、ご事情をお伺いし、具体的な解決策のアドバイスや、司法書士としてできるサポートについてご提案いたします。

まずは、お気軽に電話、WEBフォームからお問い合わせください。

 

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