遺産整理

相続財産を受け取る、名義変更するための手続

遺産分割について合意などができたあとは、遺産をお金にかえる、受け取る、名義を変える手続をおこないます。主な財産についての手続について解説します。

相続内容が決まったのち、大きな負担のひとつが遺産整理手続です。預貯金口座の解約、受け取り。不動産や自動車などの名義変更手続などをおこないます。しかし、預貯金口座にしても、銀行により書類や手続が異なっており、最寄りの窓口に出向かなければならないこともあります。

ここでは、よく問題となる財産についての遺産整理手続について解説します。

「遺産整理」とは

「遺産整理」とは、亡くなられた方(被相続人)の資産の名義変更、換価処分(お金に変える)などの手続をおこなうことを言います。

遺産整理という手続が法律上定められているわけではありません。

そのため、相続人の範囲、相続財産の内容の調査など「相続」のための準備手続を含め、相続を完了させるまでのことを指して遺産整理という言葉が使われることもあります。

図表:遺産整理の全体像

遺産整理の範囲
相続人調査 遺産分割の話合い(協議)には、相続人全員が参加しなければ「無効」となるため、亡くなった方の相続人調査をおこなう必要があります。
相続財産調査 相続は、資産(プラスの財産)、負債(マイナスの財産)、契約上の地位などを引き継ぎます。
資産を負債が上回る場合には、負債のみを相続することになります。そのため相続財産の調査をおこないます。なお、相続をしたくない場合には、家庭裁判所において相続放棄手続をおこなう必要があります。
遺産分割協議 相続人全員で、相続財産をどのように分割するかを話し合います。通常、後から揉めることがないよう合意内容を書面にします(遺産分割協議書の作成)。なお、遺言書がのこされていた場合には、原則その内容に従うことになります。
遺産整理(相続した財産の名義変更、処分) 預貯金の解約/上場株式の処分/非上場株式の処分/会員権の名義変更/不動産の名義変更/会社の登記手続

まず、被相続人が亡くなられた時点(相続)からの流れにそって、遺産整理業務について解説します。

相続人調査

遺産分割の話合い(協議)には、相続人全員が参加しなければ「無効」となるため、亡くなった方の相続人調査をおこなう必要があります。

相続人の範囲は法律で定められています。相続人は、役所に戸籍などを取り寄せ調べます。詳しくは、次のページで解説しています。

「相続人調査」の解説

相続人となれる人の範囲、法律で定められている相続分(割合)、相続人の調査方法について、司法書士が解説しています。

  • 書式・文例 ・相続関係図
  • ポイント解説 ・戸籍謄本等の取り寄せ方・相続人の範囲

詳しくはこちら

相続財産調査

相続は、資産(プラスの財産)、負債(マイナスの財産)、契約上の地位などを引き継ぎます。

資産を負債が上回る場合には、負債のみを相続することになります。そのため、負担を背負わないためにも、相続財産を調査する必要があります。

「相続財産調査」の解説

相続の対象になる財産の範囲、相続財産の調べ方、その調査の結果をまとめる「財産目録」の作り方まで、司法書士が解説しています。

  • 書式・文例 ・財産目録のサンプル
  • ポイント解説 ・預貯金口座などの調べ方・負債の調べ方・財産の換価方法

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遺産分割協議

相続人全員で、相続財産をどのように分割するかを話し合います。一般的には、後から揉めることがないよう合意内容を書面にします(遺産分割協議書の作成)。なお、遺言書がのこされていた場合には、原則その内容に従うことになります。

遺産分割の話合いが終われば、相続人それぞれが受け継ぐ財産の処分を進めることになります。

「遺産分割協議の進め方」の解説

遺産分割の話合いの流れ、合意内容の書面作成(遺産分割協議書の作成)、書式のサンプルなどについて、司法書士が解説しています。

  • 書式・文例 ・遺産分割協議書のサンプル
  • ポイント解説 ・遺産分割協議の進め方・遺産分割協議書の書き方

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遺産整理

「遺産整理」は、多くの場合には相続人が引き継いだ相続財産の名義変更、処分などの行為を指します。遺産分割協議のあと、各財産についてどのように手続を進めるのかを解説します。

預貯金の相続手続(解約払戻しと名義変更)

預貯金の相続手続は次の2つの手続があります。

1つは、「払戻し」手続です。これは、相続人が預金口座を解約して現金を受領するためのものです。多くの場合には、この払戻しにより相続が行われます。

2つめは、「名義変更」手続です。亡くなられた方の預金口座の名義を、相続人に変更するための手続です。なお、ゆうちょ銀行の通常貯金は名義変更することはできません。

預貯金の払戻し手続の流れ

金融機関である都市銀行、地方銀行などは500以上が存在します(令和3年5月現在)。預貯金の払戻し手続のための申請用紙、必要書類は異なります。

ただ、一般的な払戻し手続の流れは次のようになっています。

図表:預貯金口座の払戻しの流れ
預貯金口座の払戻しの流れ
①銀行
  • 死亡届の提出(口座凍結)
  • 残高照会、払戻しのための必要書類確認
  • 申請用紙の取り寄せ
②関係各所 必要書類の収集、および作成
例:法定相続情報または戸籍謄本(役所)
印鑑証明(役所)
遺産分割協議書(公証役場など)
③銀行 窓口あるいは郵送にて必要書類をそえて申請書を提出
④銀行 支払いを受け、通帳などの受け取り
①銀行への「死亡届」の提出

銀行指定の死亡届出を提出することで、口座が凍結されます。

この際、遺産分割についての話合いに備えて、資産の額を確認するために「残高証明書」、遺産分割協議の後の「払い戻しのための申請書」を取寄せておきます。

なお、他相続人などによる預金の異動が疑われるような場合には、取引明細を合わせて不審なお金の動きが無いかを確認します。

②銀行に各種申請するための必要書類取り寄せ

各銀行により申請書は異なります。
銀行から要求されることの多い次の資料を取り寄せ、作成しておくことで速やかに対応することができます。

図表:預金口座を相続人が払戻しする際の一般的な必要資料
預金口座を相続人が払戻しする際の一般的な必要資料
戸籍謄本など
(役所)
亡くなられた方の相続人であることを証明するための資料。
なお、相続人全員の戸籍を収集し、法務局で「法定相続情報」と呼ばれる書面を無料で交付を受けることができます。
銀行において、当書面を戸籍の代わるものとして取り扱ってもらえることが多くあり、遺産整理の先が多くなるような場合には、ぜひ準備しておきましょう。
当事務所では、法定相続情報の取り寄せをサポートしています。
相続人の方の印鑑証明
(役所)
印鑑証明などの公的機関から交付を受けた証明書は、発行から3か月~6か月のものしか受け付けないとする金融機関もあるため、有効期限をきちんと確認しておきましょう。
遺産分割協議書
(相続人全員で作成)
遺産分割協議書は、遺産整理のために預金口座の解約・名義変更の際のみならず、不動産の名義変更における法務局への提出などにおいても利用します。法律的な誤りがないよう、公証役場や司法書士に依頼されることが多くあります。
③銀行に申請書、必要書類を提出

必要資料の準備ができれば銀行の「窓口」あるいは、相続センターなどの部署へ「郵送」にて提出をおこないます。対応は銀行により異なりますので、きちんと確認しておきましょう。

なお、この際に提出した戸籍謄本、印鑑証明書などの原本を返してもらうことができます(原本還付と言います)。

但し、特に原本還付の希望を申し出しないと返してもらえない場合があります。
金融機関における手続の際には、すべての申請において原本還付して欲しいことを伝えておくと良いでしょう。

なお、残高証明書や取引履歴の明細書を取り寄せするにも、銀行が定めた手数料がかかります。

④銀行からの支払い、受け取り

銀行により、①その場で現金の支払い、②後日振込みにより受け取ります。

上場株式・投資信託の相続手続(名義変更、売却処分)

相続人本人が証券会社や信託銀行に対する相続手続について、① 証券会社や信託銀行の取引口座管理の場合、② 信託銀行等(株主名簿管理人)の特別管理口座の場合に分けて解説します。

証券会社や信託銀行の取引口座管理の場合

相続人として、亡くなられた被相続人が開設していた証券会社、信託銀行に口座を開設する必要があります。

なお、相続人が同じ証券会社などに口座を既にお持ちの場合には、別途開設する必要はありません。

証券会社などにより様式は異なりますが「相続手続依頼書兼特定口座開設者死亡届兼相続上場株式等移管依頼書」などを提出することで、株式の名義が書き換えられ、相続人名義の口座に移されます。

信託銀行等(株主名簿管理人)の特別管理口座の場合

平成21年に「全株券の電子化」が実施され、証券会社に預託されていなかった株式は信託銀行などに、自動的に「特別口座」が開設され、管理されることになりました。

特別口座にある株式は、直接売買することができませんので、証券会社にある相続人名義の取引口座へ振り替えることになります。

出資金の相続手続(出資金の返金)

株式会社である「銀行」と異なり、信用金庫・信用組合・農業協同組合(JA)などの共同組織と取引をおこなう場合には、組合員などになることが必要で、そのために出資金を出資します。そのため、預貯金口座の払戻しのための相続手続と合わせて、組合員の脱退請求をおこなうことが必要になります。

なお、出資金の返還は事業年度の終了後になりますので、すぐに出資金を受け取れるわけではありません。

生命保険金などの相続手続

亡くなられた方が加入していた保険契約について請求をおこなうにあたり、①死亡保険金、②入金保険金について解説します。

死亡保険金の相続手続

まず、気を付けなければいけないのは「死亡保険金は、死亡保険金受取人が指定されている場合は、相続財産の対象にはならない」ということです。つまり、指定された受取人の方の財産となります。

一方で、受取人が指定されていない場合や、法定相続人として指定されている場合には、保険会社の約款等(規約)に定められている順位で相続手続をおこないます。

そのため、相続財産になる場合において、生命保険会社などに連絡をし、届出用紙などを取り寄せ、必要書類を添えて手続をおこないます。

入金保険金の相続手続

入金保険金(入院給付金)の受取人は被保険者です。しかし、被保険者が亡くなられた方で、未請求となっている場合には、相続人から請求をおこないます。

会員権の相続手続(ゴルフ、リゾートホテル)

ゴルフ会員権、リゾートホテル会員権などについて場合に分けて解説します。

ゴルフ会員権の場合

ゴルフ会員権には、①社団法人、②預託金制、③株主会員制の種類に分かれています。

この中でも社団法人制をとるゴルフクラブは歴史があり名門であることが多く、会員権の譲渡が困難である場合がみられます。

ゴルフクラブの会員資格について、「会員の死亡により資格を失う」とされている場合もあり、相続の対象にならない場合もあります。
こうしたゴルフクラブにおける規約がない場合には、相続財産の対象になります。
ただし、共有名義で会員権を相続することはできず、遺産分割協議などにおいて、どの相続人が相続するのかを決める必要があります。

なお、ゴルフクラブに施設の利用権として「預り金(預託金)」をしている場合があります。このような場合には、預託金の返還を求めることができます。

リゾートホテルの会員権の場合

リゾートホテルの会員権には、①施設を利用するための預託金タイプ、②不動産としての持ち分のある共有分タイプがあります。

①の預託金タイプの場合には、ゴルフ会員権の預託金と同じように考えることになります。

②の不動産共有分タイプの場合には、契約内容にもよりますが、売却が可能な場合があります。

以上のように、ゴルフ会員権、リゾートホテルの会員権については、種別、契約内容などが複雑なため、まずは当事務所までご相談ください。遺産整理の方針についてアドバイスいたします。

自動車の相続手続

亡くなられた方の名義である自動車は、相続人全員の共有財産となります。遺産分割協議などにより、特定の相続人が相続することができます。

永久抹消で、車検残存期間が1カ月以上ある場合、自動車税の還付を受けることができます。還付金を受けるための申請する相続人の預金口座の情報などが必要になります。

図表:自動車の必要書類の一覧表
自動車登録手続の種類
特定の相続人への名義変更
第三者への譲渡
廃車手続(一時抹消)
廃車手続(永久抹消)
手続の種類 主な必要書類
1 2 3 4
自動車検査証
被相続人および相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の印鑑証明書
申請人となる相続人1名の印鑑証明書
相続人全員からの実印または委任状(実印で押印)
申請人となる相続人1名の委任状(実印で押印)
相続人全員からの譲渡証明書(新所有者以外の相続人全員)
遺産分割協議書(遺産分割調停調書など遺産分割の内容が分かるもの)
車庫証明書
ナンバープレート(前後2枚)
解体に係る書類(引き取り業者からの書類一式)
OCR申請書
手数料納付書
自動車税、自動車取得税申告書

公的年金の相続手続

亡くなられた方が年金受給者であった場合、相続人が未支給となっている年金を受けることができる場合があります

未支給の年金は、亡くなられた方によって生計を維持されていた遺族である「配偶者」「子」「父母」「孫」「祖父母」の順序で支給されます(支給対象者)。

支給対象者からの請求がなければ支給されず、年金事務所などに確認のうえ必要な手続をとります。
また、一定の支給要件を満たすような場合には、遺族基礎年金なども受給できることがあります。

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