遺産分割協議書の書き方を徹底解説【書式ひな形・15点以上の条文例あり】


登記手続

執筆者 司法書士 上垣 直弘


  • 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
  • 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号

日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。


目次

1.遺産分割協議書とは

 

 

遺産分割協議書とは、相続内容の取り決めを記載した書面です。

この記事では、遺産分割協議書の書き方、気を付けるべきポイントについて徹底解説します。

2.遺産分割協議書の作成は必要?

 

 

相続人全員が話し合いで、遺産分割内容に合意ができた場合に「遺産分割協議書」を作成することがあります。

遺産分割協議書は、法律上必ず作成する書面ではなく、書き方も特に決まりはありません。

ただ、「相続登記」「 預金口座の解約」「相続税申告」など相続手続の書類として求められるため、実際には相続の場面では作成することが多いです。

なお、①有効な遺言書がある場合、②相続人が1人の場合には遺産分割協議書の作成は必要ありません。

①の場合においては遺言書を提示、②の場合は被相続人との相続関係を証明する戸籍謄本などを提示して遺産整理手続きを進めます。

2-1.遺言書がない場合


遺産をどう分けるか、負債の負担をどうするか相続人間で話し合いをすることを「遺産分割協議」と言います。

遺産分割協議は、① 遺言書が残されていない場合、② 遺言書は残されているが内容に不備があり法律上無効の場合におこないます。(遺言書無効、相続分についての争いは、調停や訴訟による解決を求めます。)

法律上その遺言書が法律上無効である場合は、① 他相続人が権利を主張して調停や裁判を起こされる場合、② 相続人全員で協議することにより遺産の最終的な帰属を決めることが考えられます。

遺言書が残されている場合、原則としてその 内容が尊重されます。

 

参照 相続人間で揉めるケース
  • 遺言書の偽造が疑われるケース
     (例:親が認知症発症後に遺言書を作成されていた。⇒遺言無効の訴訟の可能性)
  • 自分の相続分の記載がなかったケース
     (例:法律上確保された最低限の相続分(遺留分)を超えた遺贈があった⇒遺留分侵害額請求訴訟の可能性)
  • 遺言書作成内容が違法
     (例:法律にそった形式・内容で作成されていなかった=法律上の効力なし)


なお遺産分割協議では、分け方については自由に決めることができます。

2-2.遺産整理手続で使用する

 

亡くなられた親族のことを「被相続人(ひそうぞくにん)」と言います。

被相続人名義の「預金口座」「自動車」「不動産」などの遺産を、相続する方の名義に変更することを「遺産整理手続」と言います。

 

遺産整理手続では、「相続関係を証明する書類(戸籍謄本など)」と合わせて「遺産分割協議書」の提出が求められることが一般的です。

 

2-2-1.預金、上場株式、会員権


金融機関の預金口座の解約・名義変更や残高照会、各証券会社や信託銀行に対する上場株式の名義変更や売却処分の手続き、ゴルフ会員権の名義変更、百貨店積立(毎月一定額積立、満期時に上乗せした額相当の商品券受取)の解約手続きなどで、遺産分割協議書の提出が必要になることがあります。

なお、預金口座は、相続発生により口座凍結され取引ができなくなります。

被相続人の葬式費用、介護施設の未払い費用の支払いのため、現金が必要になることがあります。
この場合、「仮払い制度」の利用を検討します。

この制度を利用することで、相続人全員の同意がなくても遺産分割前に一定の範囲で支払いを受けることができます。

なお、ゆうちょ銀行、三菱UFJ銀行における相続手続については、次の記事で解説しています。

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2-2-2.不動産


法務局で「相続登記手続(名義変更手続)」をおこなう際の必要書類となります。

登記申請には遺産分割協議書以外にも、被相続人の出生から死亡までの戸籍、被相続人の住民票除票などの書類も必要です。

相続登記は、2024年4月1日から義務化されます。

義務違反には罰則もあります。
① 自身に相続があったことを知り、② 亡くなられた親族の不動産の所有権を取得したことを知った時から3年以内に相続登記手続をおこなう必要があります。

相続登記義務化については、次のページで特集しています。

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法務局のホームページでも、遺産分割協議書のひな形や記載例を紹介しています。


なお、先代名義のままの不動産がある場合、その登記手続もおこなう必要があります。


手続きが複雑で、ご自身で進めるには不安がある方は、当事務所までお問合せください。
相続登記に必要な遺産分割協議書の作成、戸籍謄本など必要書類の収集など、トータルフルサポートをおこなっています。

2-2-3.自動車


新所有者となった相続人へ名義変更をおこないます。

運輸支局に①申請書、②手数料納付書、③自動車検査証(車検証)、④相続関係を証明する戸籍謄本等、⑤新所有者の印鑑証明書と、遺産分割協議書を提出しておこないます。

被相続人名義のままにしていると、売却処分や廃車手続きができず、また自動車税の納付書が届かず未払いとなり罰則を受ける可能性があります。

なお、自動車保険の名義変更も同時におこないましょう。
保険による補償が受けられない可能性があります。

2-3.相続税申告で使用する

 

税務署に対する相続税申告書を提出する際に添付します。
相続税申告は、相続開始の翌日から10か月以内におこなうことになっています。

なお、相続から10か月以内に遺産分割が合意にいたらず相続税申告が難しい場合には、一旦相続税申告をし、遺産分割協議後に修正申告をおこないます。


相続税申告と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。
これにより、修正申告(更正の請求)をする際に税制上の優遇である「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額軽減」の適用を受けることができます。

相続税申告は注意点が多いため、税理士に相談されることをお勧めします。
当事務所でも相続税に強い税理士と提携しています。
申告が必要かの診断、相続税額のシュミレーションが可能です。ぜひお気軽にお問合せください。

なお、税務署の課税・徴収業務の指導・監督をおこなう国税庁では、ひな形を公開しています。

 

参照リンク

「相続税の申告書の記載例」(国税庁ホームページ)

相続税申告書の記載例に続き、ページ後半に遺産分割協議書の記載参考例を掲載しています。

2-4.あとで揉めないため

 

遺産分割協議後に、ぶり返すことがないように遺産分割協議書を作成することが多いです。

原則、遺産分割協議が合意にいたった場合、再度の協議はできません。
(相続人全員が参加せずにした遺産分割協議は法律上無効です。こうした場合は、相続人全員での遺産分割協議を改めておこないます。)

遺産分割の内容を証拠として残すために、書面にしておくことが重要です。

3.遺産分割協議書の作成期限は?

 

法律上、遺産分割協議書の作成期限はありません。
ただ、遺産分割協議書は各相続手続で必要になるため、遺産分割協議の成立後 すみやかに作成します。

 

参照│遺産分割協議書提出が必要な相続手続き

提出先 遺 産 手続き 期 限
金融機関 預金 ・解約
・名義変更
なし(長期間放置で休眠口座にかる可能性)
金融機関 出資金 ・払戻し なし
税務署 相続税申告 相続開始翌日から10か月以内
運輸支局 自動車 名義変更 なし
軽自動車検査協会 軽自動車 名義変更 なし
法務局 不動産 名義変更 自身に相続があったことを知り、
亡くなられた親族の不動産の所有権を取得したことを知った時から3年以内

 

上記で期限が設けられている相続税申告や相続登記の手続きを考えると、余裕をもって半年程度で済ませるのが良さそうです。

早く済ませておくのが良い理由は、期限以外にもあります。
例えば、手続期限 の無い預金口座も、凍結されたまま10年経過すると休眠預金となり払戻しに手間がかかります。

また、相続が繰り返し発生することで、権利関係や相続関係が複雑になります。
期限がない手続きでも相続手続を放置することで、より面倒なやりとりが生じてしまうため、早めの対応をお勧めします。

4.遺産分割協議書作成の流れ

 


被相続人が死亡した時点で相続は開始します。
その相続開始から遺産分割協議書の作成までの手順を解説します。

4-1.相続人調査


遺産分割協議は「相続人全員」の参加が必要です。

そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を本籍地のある市区町村から取り寄せ、相続人を確定します。
なお、戸籍謄本等は、郵送での取り寄せが可能です。

相続人(法定相続人)の範囲と、相続の割合(相続分)は法律で決まっています。
被相続人の配偶者は常に相続人となり、それ以外は「子」→「直系尊属(被相続人の親、親が居なければ祖父母)」→「被相続人の兄弟姉妹」の順で、先順位に該当する人がいなければ順位が移ります。

被相続人の出生が古いと戸籍の形式や手書きの記入文字(昔の行書体)を読み解くのに時間がかかります。

また、法律上の相続人の確定など、一般の方には少し難しい作業となります。

4-2.相続財産調査


遺産分割協議の対象となる「被相続人の財産」を調査します。

調査対象としては、現金、預金口座、出資金、上場株式、不動産、自動車・自動二輪車、保険契約(生命保険、火災保険など)、高価な動産(宝飾貴金属、絵画)、金銭の貸付、特許権などがあります。

また、借金などマイナスの財産も相続対象となるので、調査漏れに注意が必要です。

資産を負債が上回る債務超過の場合、負債を承継することになります。
この場合、家庭裁判所で相続放棄手続をおこなうことが一般的です。

 

但し、原則として相続放棄は「自身に相続があったことを知ってから3か月以内」におこなう必要があります。
そのため、相続財産調査における「負債」の把握は、相続から3か月以内を目途に完了させられるように進めます。

なお、被相続人が特定の方に対して積立などをおこなっていた「名義預金」も遺産分割の対象になります。

名義預金が存在しないか確認しておきましょう。

名義預金は税務署の税務調査を機に指摘されることの多い遺産です。
また、相続人間でもめやすいもののひとつです。

被相続人名義の預金口座の解約前に、金融機関から3年~5年程度の口座履歴を取り寄せます。
お金の流れを確認し、定期的に一定の金額が出金・送金されている場合には追跡調査をおこないます。

当事務所にご依頼いただいた場合、相続人調査、相続財産調査から名義変更までをおこなう「遺産整理サポート」をおこなっています。お気軽にお問合せください。

4-3.遺産分割協議


相続人、相続財産が確定すれば話し合いをおこないます。

遺産分割協議は一堂に会して直接話をする場合、相続人が全員全国におられる場合には電話や手紙・メールなどでのやりとりをする方法が一般的です。

疎遠、面識のない相続人とのやり取りする場合には、まずは書面でやり取りすることが多いです。
「被相続人(誰が亡くなったのか)」、「宛先の方が相続人となること」、「遺産分割協議の必要があること」、「遺産分割協議の内容や提案」などを記載した書面を挨拶とともに送付します。

最終的に遺産分割内容で合意ができれば、署名押印をおこなうことになりますが、遠方や海外居住者との遺産分割協議書のやり取りは郵送でおこないます。

なお、遺産分割協議で相続人全員が合意できない場合、家庭裁判所の調停や審判手続きにより解決をはかります。

また、相続人の中に未成年、認知症など物事の理解に乏しい方がおられる場合には、別途「特別代理人選任」「後見制度」の利用が必要となります。

4-4.公証役場で作成


遺産分割協議書は、決まった作成方法はありません。

のちのトラブル、遺産分割協議書が法的に無効とならないように公証役場で「公正証書」の形で作成することもできます。

元裁判官、元検察官など法律の専門家である公証人が、相続人間で合意できた内容を公正証書にします。(公証人に遺産分割協議を仲介してもらうことはできません。あくまで合意した内容を公正証書の形にするだけです。)

 

参照│公正証書による遺産分割協議書作成のための必要書類

  • 被相続人の除籍謄本(死亡の事実確認)
  • 相続関係を証明できる書類(戸籍謄本等や法定相続情報)
  • 各相続人の印鑑登録証明書と実印(または身分証+実印または認印)


なお、公正証書で作成することで、原本が公証役場で20年間保管されます。
そのため、紛失や改ざんの恐れが無く、謄本(コピー)を紛失したとしても、再発行を受けることができるため安心です。

5.遺産分割の方法


遺産分割は、誰がどの財産をどのように相続するかを明確にしておこないます。
遺産分割の方法は次の4種類があります。

5-1.現物分割

 


例えば、遺産が、「車」「自宅」「預金」のみのケースで、車は長男、自宅は配偶者(妻・夫)、預金は次男といった形状や性質を変えずに分けることを「現物分割」と言います。

5-2.換価分割

 


例えば、遺産が「自宅」しかない場合で、自宅を売却し現金にかえて、売却金を相続人間で分配することを「換価分割」と言います。


なお、この場合、売却手続を円滑に行うために、共同相続人の1人が単独名義で相続登記をしたのち換価処分するケースが多いです。


この場合、単独 での相続登記をおこないお金を分配する行為が「贈与税」の対象にならないか心配されるかもしれません。
これについては、原則として贈与税の対象にはならないとされています。

 

 

5-3.代償分割

 


例えば、遺産が「自宅」しかない場合で、長男が自宅を取得する代わりに、他相続人には金銭などを支払う分割方法を「代償分割」と言います。

5-4.共有分割


例えば、遺産が「自宅」しかない場合で、相続人である長男、次男がそれぞれ1/2の割合で取得することを「共有分割」と言います。

6.遺産分割協議書作成のための必要書類


遺産分割協議書作成のための必要書類と準備するものは、相続人全員の「印鑑登録証明書」と「実印」です。

一般的に、協議内容への合意の意思を証明するため、基本的に本人しか取得できない印鑑登録証明書を遺産分割協議書に添付します。

基本的に遺産分割協議書は相続人全員が保有するため、相続人全員分の協議書を作成します。
よって印鑑登録証明書も人数分用意します。

協議書への氏名欄に自署、実印で押印します。
協議書が複数枚に渡る場合には、契印も実印で押印します。

なお 法定相続人の中に海外居住者がいる場合、サイン証明書を添付することがあります。
サイン証明書は、居住先の日本領事館で、領事官の面前で自署し、それを「本人の自署」として証明を受けたものです。

7.遺産分割協議書作成の記載事項(書式サンプル)

 

遺産分割協議書の書式サンプルを掲載します。


なお、くり返しになりますが遺産分割協議書には決まった書式はありません。
手書き、パソコンなど作成方法は自由です。

 

書式サンプル│遺産分割協議書(不動産、株式、預貯金の各側続人で分割)

遺産分割協議書

 

令和〇年〇月〇日に死亡した明石太郎(最後の本籍 兵庫県明石市○○○○○、最後の住所地 兵庫県明石市○○○○○)の遺産について、共同相続人明石花子、明石一郎、明石二郎の全員による遺産分割協議の結果、次に掲げる者がそれぞれに掲げる財産を取得し、債務を承継することに合意した。

 

1 相続人明石花子が取得する財産

 (1)土地

  所  在 兵庫県明石市〇〇〇〇

  地  番 150番

  地  目 宅地

  面  積 ○○.○○平方メートル

 

 (2)建物

  所在 兵庫県明石市〇〇〇〇番地

  家屋番号 150番

  種  類 居宅

  構  造 木造瓦葺2階建

  床 面 積   1階 ○○.○○平方メートル

       2階 ○○.○○平方メートル

 

2 相続人明石一郎が取得する財産

 (1)預託金ゴルフ会員権

     株式会社明石海峡カントリークラブ

     預託金ゴルフ会員権

     預託金証書番号〇〇〇〇〇

 

3 相続人明石二郎の取得する財産

 (1)銀行預金

  〇〇〇〇銀行〇〇支店   定期預金 口座番号○○○○○○○

  〇〇〇〇信用金庫〇〇支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

 (2)株式

  〇〇〇〇株式会社  〇〇株

 

後日、上記以外の遺産が判明した時は、これにつき相続人全員で改めてその分割を協議する。

 

上記の通り、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書3通を作成し、次に署名押印する。

 

令和〇年〇月〇日

兵庫県明石市○○○○○     

相続人 明石 花子  印 

兵庫県神戸市○○○○○     

相続人 明石 一郎  印 

兵庫県西宮市○○○○○     

相続人 明石 二郎  印 

 

次に項目ごとの遺産分割協議書の書き方で注意すべきポイントを解説、例文も紹介します。

7-1.相続関係(被相続人、相続人)


参照 相続関係についての文例

令和〇年〇月〇日に死亡した明石太郎(最後の本籍 兵庫県明石市○○○○○、最後の住所地兵庫県明石市○○○○○)の遺産について、共同相続人明石花子、明石一郎、明石二郎の全員による遺産分割協議の結果、次に掲げる者がそれぞれに掲げる財産を取得し、債務を承継することになった。

遺産分割協議は、全員が参加することが法律上必要です。
そのため、相続人全員が参加したことがわかるように記載します。
なお、上記の文例のように被相続人を特定するために最後の本籍と最後の住所を記載します。

7-2.財産目録


上記の書式サンプル記載の方法以外にも、遺産が多い場合には遺産分割協議書に別紙で「財産目録」の形で遺産分割協議書に添付することがあります。

財産目録には、遺産を列記し、それぞれ順に番号を振ります。
この場合、各相続人が別紙記載のどの財産を取得するのかを具体的に書きます。

参照 別紙財産目録で定める場合の文例
明石花子は、別紙財産目録1の(1)記載の土地、同(2)記載の建物を取得する

参照 別紙財産目録の書き方(例)

財産目録

1 不動産

 (1)土地

  所  在 兵庫県明石市○○○○○

  地  番 150番

  地  目 宅地

  面  積 ○○.○○平方メートル

 

 (2)建物

  所在 兵庫県明石市○○○○○番地

  家屋番号 150番

  種  類 居宅

  構  造 木造瓦葺2階建

  床 面 積 1階 ○○.○○平方メートル

       2階 ○○.○○平方メートル

 

2 ゴルフ会員権

 (1)預託金ゴルフ会員権

     株式会社明石海峡カントリークラブ

     預託金ゴルフ会員権

      預託金証書番号〇〇〇〇〇

(以下省略)



相続は、預貯金などの資産だけでなく、賃借人などの契約上の地位、借入といった負債も引き継ぎます。
そのため、それぞれの相続内容を明確に記載します。

7-2-1.遺産分割方法の記載

 

遺産分割方法は4種類あると解説しました。

先ほどの書式サンプルは「現物分割」の方法によるものです。
上記以外の「代償分割」「換価分割」のサンプルを掲載します。

参照 換価分割の文例
相続人明石花子は、別紙財産目録1の不動産を速やかに売却・換価をおこない、売却代金から、売却に関する一切の費用(不動産仲介手数料、登記費用、譲渡所得税、公租公課など)及び、売却完了までに要する管理費用などを控除した残額を、全相続人の間で法定相続割合に従って分割し取得する。

参照 代償分割の文例
相続人明石一郎は、別紙財産目録1の不動産を取得する代償として、明石花子、明石二郎に代償金として100万円ずつを支払う。

7-2-2.預金

預金の分割について合意した場合、「金融機関名」「支店名」「口座種別(普通/定期/貯蓄など)」「口座番号」「口座名義人」などを記載します。

参照 預金についての文例

(1)銀行預

 〇〇〇〇銀行〇〇支店   定期預金 口座番号○○○○○○○

 〇〇〇〇信用金庫〇〇支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

預金解約手続で、遺産分割協議書を提出する場合に必要となる記載です。
金融機関で厳格に審査を受けることになります。

預貯金は利息が付くため金額が変動します。
「預貯金額」を協議書に記載すると、解約時点と残高と金額が合わないために、金融機関が解約に応じない可能性があります。

そのため、遺産分割協議書には残額ではなく、相続の割合を記載することが一般的です。(下記の文例)

参照 預金についての文例

被相続人明石太郎の次の財産につき、相続人明石花子が4分の3、明石一郎が4分の1の割合でそれぞれ取得する。

 

(1)銀行預金

 〇〇〇〇銀行〇〇支店   定期預金 口座番号○○○○○○○

 〇〇〇〇信用金庫〇〇支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

7-2-3.不動産


相続登記手続をおこなうために必要な記載になります。

 

参照 不動産表記の文例

相続財産中、次の不動産については、相続人明石花子が相続する。

 

(1)土地

  所  在 兵庫県明石市○○○○○

  地  番 150番

  地  目 宅地

  面  積 ○○.○○平方メートル

 

(2)建物

  所在 兵庫県明石市○○○○○番地

  家屋番号 150番

  種  類 居宅

  構  造 木造瓦葺2階建

  床 面 積 1階 ○○.○○平方メートル

       2階 ○○.○○平方メートル

 

被相続持分2分の1


遺産分割協議書に、相続対象の不動産を具体的に特定して記載します。

通常、不動産は登記されています。
法務局で交付を受けることができる「登記事項証明書(登記簿謄本、全部事項証明書)」の表示どおり正確に記載します。

土地については、所在、地番、 地目、地積を記載します。
建物(家屋)であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。

よくある間違いとして、不動産の特定で「住所」を記載する、不動産の所在が記載されていないといったケースがあります。

なお、共有名義の場合には、被相続人の持ち分も併記します。(上図 「被相続持分2分の1」の箇所の記載のとおり)

7-2-4.上場株式・出資金


参照 株式・有価証券の文例

○○○○○○株式会社  〇〇株



証券会社名、発行会社名、株式数などを記載し特定します。

なお、上場株式については、証券保管振替機構に照会手続をおこなうことで保有状況などが分かります。
照会手続きの詳細については、次のコラム記事で解説しています。

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7-2-5.ゴルフ会員権

ゴルフクラブの名義書き換えなどの手続きに必要な記載になります。

参照 ゴルフ会員権の文例

預託金ゴルフ会員権
 株式会社明石海峡カントリークラブ
 預託金ゴルフ会員権
 預託金証書番号〇〇〇〇〇



ゴルフ会員権購入時に、ゴルフ場の造成などに充てられる「預託金」を支払うことがあります。
預託金は、据置期間を経て、退会時に返還されることが一般的です。

預託金が存在する場合には「預託金ゴルフ会員権」と預託金があることを明記しておきます。

なお、預託金がなく単なるプレー権のみの場合、相続税の課税対象になりません。
財産評価については税理士に確認されると良いでしょう。

株式の所有を必要とせず、かつ、譲渡できない会員権で、返還を受けることができる預託金等(以下「預託金等」といいます。)がなく、ゴルフ場施設を利用して、単にプレーができるだけのものについては評価しません。

7-2-6.負債・債務


負債・債務は、相続人全員が法定相続分にしたがって相続します。(民法900条)
引用│法定相続分(国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」) 
  • <配偶者と子供が相続人である場合>
    配偶者2分の1 子供(2人以上のときは全員で)2分の1
  • <配偶者と直系尊属が相続人である場合>
    配偶者3分の2 直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1
  • <配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合>
    配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1

負債の負担(支払い)について問題が起こらないように決めておくことも可能です。
負債は借り入れだけではなく、今後発生する葬儀費用、相続税や未払いとなっている固定資産税の支払いなども債務にあたります。

参照 債務負担の文例

相続人明石一郎は被相続人の債務及び葬儀費用を負担する。



なお、相続人間で特定の相続人の負担とする取り決めは可能です。
しかし、この取り決めは金融機関など債権者に対しては無効です。
実際には、債権者と交渉し特定の相続人が債務を負担することについて同意を得ることが必要になります。

葬儀費用は、相続開始後に発生するため遺産分割の対象外です。
なお、相続税申告の際には、通夜、本葬の支出は控除として認められます。

葬儀費用は遺産分割の対象外ですが、相続人間で不公平感が生じて揉めるケースがあります。
そのため、「被相続人明石太郎の遺産から、債務及び葬儀費用を控除した額を、法定相続割合で取得する」などの記載をおこなうことがあります。

7-2-8.祭祀承継


お墓や位牌などは相続財産ではなく「祭祀財産(さいしざいさん)」です。
相続人全員が集まる機会に、合わせて誰が承継するかを決めておくと良いかもしれません。

参照 祭祀承継に関する文例

明石花子は、被相続人明石太郎が最後に居住する建物(兵庫県明石市○○○○○)にある仏壇仏具等について承継する。

7-2-9.名義預金

名義預金とは、例えば「被相続人が孫の名前で口座作成、積み立てや管理をおこなっていた口座」などを言います。
被相続人名義の預金口座ではないものの、事実上被相続人の預金と同視できるものです。

相続税申告の場面で、税務署の税務調査で指摘されることが多いもののひとつです(相続税申告の対象に含めます)。
また、不公平感から相続人間での遺産分割トラブルの原因にもなりやすいものです。

そのため、遺産分割協議で分割の対象にして、その分割方法について決めておくと良いでしょう。

参照 名義預金に関する文例

相続人明石花子、明石一郎、明石二郎は、名義の異なる下記預金が被相続人の遺産であることを確認し、相続人明石一郎が取得する。

銀行預金
 〇〇〇〇銀行〇〇支店 定期預金 口座番号○○○○○○○(名義人 明石 城太郎)

7-2-10.配偶者居住権

「配偶者居住権」は、相続後も遺産である建物に居住している被相続人の配偶者に、建物全部への無償使用を認める権利です。
遺産分割協議で配偶者居住権について合意した場合の記載例は次のとおりです。

参照 配偶者居住権を設定した場合の文例

相続人明石花子は、別紙財産目録記載2の建物につき、存続期間を令和〇年〇月〇日から〇年とする配偶者居住権を取得する。


なお、配偶者居住権の存続期間の定めをしないことも可能です。
この場合「配偶者居住権」は存命の間、存続します。
また、配偶者居住権の存続期間は、登記事項となり法務局に申請をおこないます。

7-2-11.後日、遺産が判明した場合


遺産分割協議前の相続財産調査で、漏れなく遺産を洗い出し把握しておくことが望ましいですが、後日判明する場合もあります。

こうした場合に備えて、後日判明した場合① 再度相続人全員で協議する、② 特定の相続人が取得することを予め定めておくことがあります。

参照 相続人全員で再協議する場合の文例

後日、上記以外の遺産が判明した時は、これにつき相続人全員で改めてその分割を協議する。



参照 特定の相続人が取得する場合の文例

後日、上記以外の資産、負債が判明した時は、その資産ないし負債は、相続人明石花子が取得および承継するものとする。


7-2-12.日付と自署欄


遺産分割協議が成立した日付を、遺産分割協議書に記載します。

協議書は手書きでもパソコンによる作成のいずれでもかまいませんが、相続人の氏名は手書きの自署でおこないます。
なお、住所を併記しますが、この際の住所表記は印鑑登録証明書記載どおりに記入します。

8.遺産分割協議書作成の注意点

遺産分割協議書を作成する際に問題となりやすいケースや注意点について解説します。

8-1.協議がまとまらない場合


遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判手続きを利用します。

解決が先延ばしになるため、相続税申告の場合には一旦申告をおこなう、現金が必要な場合には金融機関の仮払い制度を利用するなど適宜対応が必要です。

相続トラブルは、弁護士に依頼されるのが一般的です。
当事務所でも、相続トラブルに強い弁護士と提携しております。
不動産の相続登記の問題と合わせてご相談が可能です。お気軽にお問い合せください。

8-2.協議ができない場合


遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。

しかし、相続人の一部が① 行方不明、② 認知症など意思能力が不十分、③ 未成年といったケースでは、そのままの状態では協議をおこなうことはできません。

そのため、こうした場合には、遺産分割協議をおこなう前に各種対応が必要になります。

参照 相続人に問題がある場合の家庭裁判所の手続き
相続人の状況 対応方法 内 容
行方不明 ① 不在者財産管理人選任申立
② 失踪者宣告

①行方不明の相続人の代理人を選ぶための手続き、

②行方不明の相続人を死亡したものと扱う手続きです。

意思能力に問題 成年後見制度 意思能力が低下した相続人の代わりに、
法律行為等をおこなう後見人を選任するための手続きです。
未成年 特別代理人選任申立 有効な法律行為をおこなうことができない未成年者の代わりに、
法律行為をおこなう特別代理人を選任するための手続きです。

 

8-3.遺産分割協議書が無効になるケース


相続人全員が参加していない、相続人全員が参加し合意したが意思無能力の相続人がいた、など内容に不備があり法律上問題となるケースがあります。

後から無効とならないよう法律の専門家に遺産分割協議書の作成を依頼されることも検討されても良いかもしれません。

8-4.過去の相続を含め協議する場合(相次相続)


先行する相続の遺産分割が終わらないうちに、重ねて相続が発生する場合があります。
これを「相次相続(そうじそうぞく)」と言います。

ひとつの遺産分割協議書にまとめること、被相続人ごとで遺産分割協議書を分けて作成することのいずれでも問題ありません。

 

8-5.製本


パソコンで印字した、同じ内容の協議書を人数分の通数用意します。
遺産分割協議書が複数枚におよぶ場合には契印をおこないます。
製本テープなどを利用して袋とじで作成すると押印箇所が少なく済むので便利です。

 

9.まとめ

 


遺産分割協議書を作成しておくことで、遺産整理手続や相続税申告がスムーズに進めることができます。

 

しかし、協議書作成のためには資料収集や調査、法律的な判断が求められるため、相続人における負担感は大きいと言えます。
また、遺産分割の内容によって、相続税の納税額が変わることもあり慎重に検討する必要があります。

遺産分割協議書の記載内容や必要書類の不備なく作成できるか不安な方は、当事務所までお問い合わせください。

「司法書士、弁護士などの専門家に依頼するのは費用が心配」という方がいらっしゃるかもしれませんが、
しかし、費用の対価に見合う「手続負担の軽減」「後日のトラブル防止・回避」などのメリットがあります。

資料収集から遺産分割協議書の作成、遺産の名義変更までを司法書士がサポートするので安心です。
また、相続税に強い税理士と提携しており、相続税額の計算もおこなうことが可能です。

相続問題はぜひ、手続き実績豊富な当事務所までご相談ください。

 

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