遺言書を見つけた際の検認申立(記載例つき)│遺産整理手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
遺言書を見つけたら「検認」が必要な理由
「検認」申立とは、検認をおこなったその時点における「遺言書の状態(形状、文言、日付、署名など)」を家庭裁判所が証明する手続です。
そのため、遺言書の内容に立ち入って「遺言書の成立自体が有効・無効」を判断するものではありません。
- 「遺言書作成時点で、遺言者は認知症であり(遺言書は)無効だ!」
- 「遺言書は(他相続人に)無理やり書かされたもので無効だ!」
などの、遺言書の成立自体を争う場合には訴訟による解決をはかっていくことになります。
図表 検認済証明書の例
令和3年(家)第●●●●●号
この遺言書は、令和3年8月1日当裁判所において、検認済みであることを証明する。
令和3年8月1日
神戸家庭裁判所明石支部
裁判所書記官 ●● ●● (印)
この検認手続はどうして必要なのでしょうか。
相続手続において、検認を受けないと次のように相続人として困った状況に置かれてしまいます。
遺言書を勝手に開封すると「罰則」を受ける
検認をしなかった相続人には、5万円の過料(かりょう)の罰則規定が設けられています。
法律上、亡くなられた人(被相続人)の死亡後、遺言書を見つけた相続人は家庭裁判所で「検認(けんにん)」と呼ばれる手続をおこなわなければなりません。
自筆証書遺言の場合、封書(封筒)にして封じ目に封印をすることが一般的によくおこなわれています。
そのため、相続人は遺言書を見つけたら検認を受けるまで開封してはいけません。
検認日に家庭裁判所にて開封し、A4サイズの用紙にコピーした遺言書の写しに上記証明書を付け綴じられ交付を受けます。
「検認」がない遺言書は、遺産整理手続に利用できない
遺言書にもとづく相続預貯金の払戻し、相続不動産の登記手続などをおこなう場合、金融機関や法務局に対して遺言書を提出します。
しかし、この家庭裁判所による検認証明を経た遺言書でないと、それぞれの手続を進めてはくれません。
そのため、相続財産を承継するための遺産整理において、手続をスムーズに進めるためにも検認は必要な手続であると言えます。
「検認」が必要な遺言書の種類
検認が必要な遺言書
一般的に利用されることの多い遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など様々な形式・方式がありますが、「公正証書遺言」以外のものは検認手続が必要です。
ここで少し遺言書の種類を図表で確認してみましょう。
図表 遺言書の基礎知識│普通方式の遺言書の特徴
遺言書の種類 | 検認 | 作成方法・内容など |
---|---|---|
公正証書遺言 | 不要 |
・作成…公証役場で公証人が作成 ・保管…公証役場(改ざん等の恐れがない) |
自筆証書遺言 | 必要(※不要な場合あり) |
・作成…遺言者自身 ・保管…遺言者自身で手配 法務局で保管することも可能(※) ・方式…法律に定める遺言書の要件に従い作成 |
秘密証書遺言 | 必要 |
・作成…遺言者自身 ・保管…遺言者自身で手配 ・方式…法律に従い作成 但し、作成後に公証役場で証人2名立会いのもとで、手続をおこないます。 ② 公証役場で、公証人・証人の前に封筒を提出し、ご自身の遺言であること、氏名・住所を伝えます ③公証人が、提出した日付、遺言者の氏名・住所など封筒に記載し、公証人、証人、遺言者それぞれが封筒に署名押印します。 |
自筆証書遺言保管制度を利用していたら不要
2020(令和2)年7月10日に開始された「自筆証書遺言保管制度」を利用し、法務局で保管された遺言書の検認は不要です。
なお、自宅など遺言者自身で保管されている自筆証書遺言については、検認手続が必要になります。
家庭裁判所における検認手続
実際の検認手続について解説していきます。
検認手続の「流れ」
遺言書を見つける
ご家族や親族が亡くなられた後、遺言書があるかどうかを調べます。
これは相続において、相続人同士の遺産分割の話合い(遺産分割協議)よりも、遺言書の内容が優先されるためです。
実際、遺言書をもとに相続財産の名義変更などをおこなうことができるため、とても重要な書類と言えます。
なお、遺言書の調べ方については次のコラムで詳細に書かせていただいていますので、ご参考にしてください。
関連コラム
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- 相続があった際の「遺言書」の調べ方│遺産整理手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
相続発生時に、相続人の方がやるべきことのひとつが「遺言書」があるかどうかを探すこと。遺言書の内容は、遺産承継にあたって優先されます。法務局、公証役場への遺言書保管の有無の照会方法についても司法書士が解説しています。
- 相続があった際の「遺言書」の調べ方│遺産整理手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
家庭裁判所に申立する
家庭裁判所に申立書、必要書類を添えて郵送または窓口に持参して申立をおこないます。
なお、申立書の記載方法については後述します。
家庭裁判所に出向き、証明書の交付を受ける
家庭裁判所と調整した日に検認をおこないます。
検認には、申立人は立ち合いをしなければなりません。
この際、封書の場合には初めて開封をおこないます。
そしてこの遺言書の写しに証明書を添付し交付されます。
なお、他相続人の方には検認をうけたことが通知されます。
これで検認は終了となります。検認手続の「申立書」の書き方
遺言書検認申立についての家庭裁判所の書式は次のとおりです。
裁判所のホームページから入手することが可能です。
参照リンク 裁判所│家庭裁判所│遺言書の検認の申立書
法務省のホームページよりダウンロードが可能です。
▽ 検認申立書(本体)
▽ 検認申立書(当事者目録)
事件名・収入印紙の貼付
家事審判申立書の事件名については「遺言書の検認」を記載します。
その下にある収入印紙欄に、遺言書1通につき800円の収入印紙を貼ります。
なお、その他の費用として、郵券(郵便切手)を裁判所に納めます。
この郵券の内訳については、各裁判所により異なりますので、事前に確認します。
代表電話番号に連絡をし、遺言書検認についての問合せであることを伝えると窓口に繋いでもらうことができます。
図表 神戸家庭裁判所管内の代表電話番号
裁判所名 | 電話番号 |
---|---|
神戸家庭裁判所 |
078-521-5930※ ※申立前における申立手続一般に関する窓口 |
神戸家庭裁判所 伊丹支部 |
072-779-3074 |
神戸家庭裁判所 尼崎支部 |
06-7670-9544※ |
神戸家庭裁判所 明石支部 |
078-912-3233 |
神戸家庭裁判所 柏原支部 |
0795-72-0155 |
神戸家庭裁判所 姫路支部 |
079-281-2011 |
神戸家庭裁判所 社支部 |
0795-42-0123 |
神戸家庭裁判所 龍野支部 |
0791-63-3920 |
神戸家庭裁判所 豊岡支部 |
0796-22-2881 |
神戸家庭裁判所 洲本支部 |
0799-25-2332 |
神戸家庭裁判所 浜坂出張所 |
0796-82-1169 |
申立人・裁判所名
遺言書検認の申立先の家庭裁判所を記入します。
申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所になります。
最後の住所地とは、遺言者である被相続人の住民票を置いている市町村となります。
市役所に「除票(じょひょう)」または「戸籍の附票」と呼ばれる住民票を取得することで確認できます。
申立人の連絡先情報、遺言者の情報
申立人の記載欄「本籍(国籍)」については、申立人である相続人の方の戸籍謄本の記載のとおり記入します。
そのほか「住所」「連絡先」「氏名フリガナ」「職業」生年月日について記入します。
申立人との記載の下に「※」がある個所には、「遺言者」と記入します。
「本籍」には、被相続人の除籍謄本の記載の本籍地を記入します。
遺言者の「住所」は「最後の」を加筆し、「最後の住所」とします。
「連絡先」は、既に死亡されているため空欄とし、氏名には遺言者名、生年月日の個所は遺言者の生年月日を記入します。
申し立ての趣旨
「申し立ての趣旨」欄には、「遺言者の自筆証書による遺言書の検認を求めます。」と記入します。
申し立ての理由
申し立ての理由には、発見の経緯、検認を求める旨の内容を記載します。
例えば、申立人は遺言書を、遺言者の自宅で発見したこと。
遺言者が死亡したので検認を求めること、を記入します。
当事者目録
申立人以外に相続人がいる場合には、当事者目録にその全員を記入します。
検認手続のパターン別「必要書類」
この遺言書検認申立てにあたって、必要になる書類は次のとおりです。
- 申立書
- 遺言者の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子が死亡している場合、その子の出生から死亡時までの戸籍謄本等
なお、子が死亡している場合、その子(孫)へと相続権が移ります(代襲といいます)。
この場合には、代襲者の出生から死亡時までの全戸籍が必要になります。
なお相続人の方によって、上記に加えて次の書類が必要になります。
相続人が、遺言者の父母・祖父母(直系尊属)
次の方が相続人で「直系尊属で死亡している方」がいる場合、以下の書類が必要になります。
- 相続人が遺言者の配偶者と、遺言者の父母・祖父母の場合
- 相続人が遺言者の父母・祖父母の場合
必要書類は次の通りです。
- 直系尊属で亡くなられている方の死亡の記載のある除籍・改製原戸籍謄本
次の場合
次の場合、以下の書類が必要になります。
- 相続人がいない場合
- 相続人が遺言者の配偶者のみの場合
- 相続人が遺言者の配偶者と、遺言者の兄弟姉妹(その代襲者;おい・めい)の場合
-
遺言者の兄弟姉妹(その代襲者;おい・めい)の場合
必要書類は次の通りです。
- 遺言者の父母の出生から死亡時までの全戸籍謄本
- 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある除籍・改製原戸籍謄本
- 遺言者の兄弟姉妹で死亡者がいる場合、その兄弟姉妹の出生から死亡時までの全戸籍謄本
- 代襲者(おいめい)で死亡者がいる場合、その者の死亡の記載のある除籍・改製原戸籍謄本
まとめ(遺言書検認手続を含めた遺産分割協議、遺産整理のサポート)
相続にあたって、気をつけなければならない期限がいくつかあります。
中でも、相続税申告(10か月)、相続放棄(3か月)については、相続人にとって財産的に大きな負担を背負う可能性があるものです。
しかし、検認手続には1か月程度かかるため、貴重な時間を要します。
不慣れな戸籍謄本の収集や、手続などの精神的、時間的な負担は意外と大きく、つかれてしまう相続人の方も見られます。
明石市にある上垣司法書士事務所では、こうした遺言書検認の申立手続を含め、遺産分割、遺産整理の手続をサポートしています。
「日々の生活で忙しく、相続にかける時間がない」
「役所や裁判所、税務署など分からないことばかりで、気持ちが重い」
という相続人の方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
丁寧に、きちんとしっかりと報告、連絡をおこない相続手続をお手伝いいたします。
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