未成年者における相続放棄手続│相続手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなられたご親族の方の「相続」をしないための
家庭裁判所での手続のことを言います。
亡くなられた方を、法律上の用語で「被相続人(ひそうぞくにん)」と呼び、
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所において手続をおこないます。
「相続」とは、資産や負債、契約上の地位などを引き継ぐことを言い、
相続放棄をすることで、
はじめから相続人ではなかったこととみなされます。
次のような場合に、相続放棄を利用されることがあります。
- 資産よりも借金が多い(相続により負債をおってしまう場合)
- 面倒な相続関係から離脱したい(相続関係から外れたい場合)
- ひとりの相続人に財産を集中させたい
なお、相続放棄をおこなっても、
相続財産の管理義務(管理責任)を負わなくなるというわけではありません。
相続放棄後の財産管理義務については次のコラムで、
詳しく解説しています。
相続放棄後の相続放棄者の管理義務
相続放棄後の相続財産の管理義務について解説しています。実家が空き家となり老朽化した場合の損害賠償請求されるリスクなど、事例をもとに解説しています。
相続放棄手続(相続放棄申述受理申立について)
相続放棄手続は、
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対しておこないます。
この手続は、法律行為として「意思能力」が必要とされています。
相続放棄をするために必要な能力「意思能力」とは?
「意思能力」とは、ご自身が意思表示をすることで、
どのような結果になるのかを判断することができる能力を言います。
意思能力は、6歳~7歳で備わるとされています。
一方で、令和2年4月1日に改正された法律(民法:みんぽう)では、
次のように定められています。
つまり、意思能力がないままにおこなわれた法律行為は「無効」となります。
無効とは、はじめから効力がなかったこととされています。
このため、意思能力のない未成年者が有効な相続放棄をおこなうには、
法定代理人(ほうていだいりにん:親権者など)が代わって
相続放棄の手続をおこなうことになります。
同時に相続人となる親と子(未成年)の利益
意思能力のない「未成年者」において、
相続放棄をするにあたって、どのようなことに注意をするべきでしょうか。
例えば、ご主人が亡くなり、
その配偶者とそのお子さまが相続人となる場合を考えてみましょう。
なお、相続人の範囲は、
配偶者は常に配偶者となります。
配偶者と共に相続人となるのは
- 被相続人の子
- 被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)
- 被相続人の兄弟姉妹
の順で、先順位の相続人が不在の場合等において、
次順位へと移っていきます。
相続で親と子の利益がぶつかる場合(利益相反)とは
上記の相続関係において、
配偶者と子どもの相続分は、原則ともに2分の1ずつになります
(法律上定められた相続割合のことを「法定相続分」と言います。)。
しかし、相続人全員が参加する
「相続をどう分けるかの話し合い(遺産分割協議)」において、
法定相続分と異なる分け方をすることは可能です。
そこで、仮に2歳の子Bよりも、
Aがその相続財産を多く取得した場合、
もちろん、子Bの相続分は少なくなります。
このように、一方の利益(配偶者A)が、
他方の損失(子B)となる関係を「利益相反」と言うことがあります。
利益相反する場合、しない場合
はじめに「相続放棄」をすることで、
はじめから相続人ではなかったものとしてみなされる、と説明しました。
先ほどの相続関係において、
配偶者が既に相続放棄をしている場合には、
既に相続人の地位から外れていることから、
子Bと利益が相反することはありません。
しかし、配偶者Aが相続権を持っているような場合には、
子Bとの利益は相反する関係にあると言えます。
そのため、仮に配偶者Aが子Bの相続放棄をする(相続権の放棄)を
代わっておこなうことができるとすると、
相続放棄により配偶者Aの相続分が増加することになり、
子Bに一方的な不利益を与えることになってしまいます。
利益相反する場合の未成年の子のための相続放棄
例えば、ご主人に資産がまったくなく、
多額の借金しかない場合、
相続により相続人が「負債」を背負うことになります。
つまり、被相続人の借金を返済しなくてはならなくなります。
このような場合、
お子さんにおいて相続放棄をさせたい、
と考えられると思います。
しかし、利益相反する場合における
未成年者の子の相続放棄を
親(被相続人の配偶者A)が
子ども(B)に代わって
相続放棄をおこなうことはできません。
こうした際に利用されるのが
家庭裁判所の「特別代理人選任申立」手続です。
家庭裁判所の特別代理人選任申立が必要(書式例)
家庭裁判所における特別代理人選任申立とは、
今回のケースでは、
お子さんBの代理人をつけるための手続です。
特別代理人は、
家庭裁判所の手続(審判)の中で決められた行為について、
代理権などを行使します。
特別代理人は、
家庭裁判所から選任されると
相続放棄の手続をおこなうことになります。
なお、当申立は相続放棄の場合だけではなく、
遺産分割協議をおこなう際に、
相続人において未成年者などが含まれる場合にも利用することが可能です。
特別代理人が選任されず相続放棄をした場合
たとえば、利益相反するにも関わらず、
特別代理人選任申立がなされないままにおこなわれた配偶者Aの相続放棄は無効となります。
参照:被成年後見人等において、成年後見人等と利益相反する場合
相続放棄には「意思能力」が必要だと解説しました。
法律上、6歳未満程度の未成年者以外にも、
「意思能力」をもたないとされているのは、
重度の知的障害者の方などです。
以上のような場合で、
被成年後見人等と、
それを見守る成年後見監督人等が共同して相続人となるような場合にも、
特別代理人選任の申立が必要になります。
相続放棄及び特別代理人選任申立のサポート
相続放棄において、
遺されたご家族さまからの相続放棄をおこなうことがあります。
ことに小さなお子さまとともに相続人となられる場合には、
特別代理人選任申立をおこなう必要があります。
当事務所では、家庭裁判所における相続放棄手続について
サポートさせていただくことが可能です。
まずはお気軽に電話や当サイトのお問合せフォームよりご連絡ください。