相続があった際の「遺言書」の調べ方│遺産整理手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
遺言書の調べ方、探し方は大きく分けて3つ
なぜ遺言書を探す必要があるのか(遺言書と遺産分割協議の関係)
よく「相続」という言葉は使われますが、「相続」とは被相続人(亡くなられた方)の資産や負債、その人の地位(賃貸マンションにおける賃貸人の地位など)を引き継ぐことを言います。
そして相続は被相続人が「死亡」した時点で発生するとされています。
相続が始まった際、まずやるべきことは「遺言書」があるかどうかを探すことです。
遺言書がある場合、その内容が優先されます。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割などの話し合いをおこないます。
つまり、まずは遺言書が残されているかどうかを調べないといけません。
なお、次のような場合には「遺言書無効」などを争うことになるため、当事務所では提携弁護士を紹介するなどの対応をさせていただいております。
- 生前に書かれた遺言書の効力を争いたい
- 一部の相続人が遺言書を取り込んでいる、破棄した
は弁護士の担当領域になります。
では、どのように遺言書が残されているのか、あるいは遺言書を調べる方法があるのでしょうか。
大きく分けて3つの方法が考えられます。
- 法務局に照会する
- 公証役場に照会する
- 自宅・居所・介護施設などを探す
次の項目から、これらの調べ方について解説します。
法務局に照会(自筆証書遺言書保管制度にもとづく照会)
2020年7月10日より、ご自身で書かれたいわゆる「自筆証書遺言」について法務局で保管できる制度がスタートしました(自筆証書遺言補完制度)。
「公正証書遺言」は、作成をおこなう国の役所である公証役場で保管されますが、自筆証書遺言は自宅や貸金庫など被相続人自身で保管しなければなりませんでした。
このような場合、被相続人が作成し残したとしても、「遺言書自体が見つけられない」「第三者に改ざんされる」「紛失する」などのリスクがありました。
しかし、この自筆証書遺言保管制度を利用すれば、そうしたリスクを取り除くことができるようになりました。
ただし、ここで注意しなければならないのは、2020年7月以降の開始となります。
それ以前の自筆証書遺言については、後述する「被相続人の自宅・居所・介護施設を探す」しかありません。
しかし、遺言書が見つからない場合には、念のため相続人として法務局に照会されると良いでしょう。
相続人としての照会方法(遺言書保管事実証明書の交付の請求)
法務局に対して被相続人が自筆証書遺言を、法務局に預けているかどうかを確認することができます。
照会できる人
照会できるのは相続人だけには限られません。
相続人以外の第三者も、ご自身が遺言により贈与を受けていないか、遺言内容の実現を取り仕切る遺言執行者に指定されていないかを調べるために照会をかけることも可能です。
- 相続人
- 遺言執行者
- 受遺者(遺言により贈与を受けた人)
- これらの親権者・成年後見人等の法定代理人
交付請求先の法務局
全国どこの法務局からでも交付請求手続は可能です。
不動産登記手続のように管轄は関係がありません。
そのため、明石市に在住の方であれば神戸地方法務局 明石支局(明石市大明石町二丁目4番25号)で交付請求をおこなうことも可能です。
また、淡路市などのように、旧淡路町、旧北淡町は明石市に近いため、神戸地方法務局 洲本支局(洲本市山手一丁目2番19号)に照会へ行くよりも、明石支局が近いようであればそちらでおこなっても構いません。
また郵送による請求も可能です。
請求手続の流れ、請求書の書き方
「遺言書情報証明書の交付請求書」に必要事項を記載します。
参考に請求書サンプルを掲載しておきます(画像をクリックすると拡大しご確認いただけます)。
これらの請求書用紙は法務局の窓口でも購入できますが、次の法務省ホームページからダウンロードも可能です。
請求書は①最寄りの法務局で提出、②郵送による交付請求がありますが、どちらの場合にも、次の添付書類が必要になります。
- 除籍謄本(役所で取得。遺言者の死亡の事実を確認するために必要)
- 住民票の写し(請求される方のもの)
- 郵送請求の場合、請求者の住所を書いた返信用封筒
- 請求者が個人の場合、遺言者との相続関係の分かる戸籍謄本
- 請求者が法人の場合、代表者事項証明書(3か月以内に発行のもの)
- 請求者が法定代理人の場合、3か月以内に発行された(A)親権者は、戸籍謄本(B)成年後見人等は、登記事項証明書
なお交付には、1通800円の手数料が必要です。
この費用は窓口で請求する場合には収入印紙を請求書に貼って納めます。
郵送による請求の場合には手数料相当分の郵便切手を同封します。
なお、法務局に持参し交付を受ける場合には、事前に訪問予約をおこないます。
窓口で交付を受ける際には運転免許証などによる本人確認が必ず行われるため、本人確認のための顔写真つきの身分証を持参しましょう(有効期限内の運転免許証、マイナンバーカードなど)。
現在、「法務局手続案内予約サービス」専用のホームページから訪問予約が可能になっています。
参照リンク
▶ 法務局(法務省ホームページ)│法務局手続案内予約サービス
新型コロナウイルスの感染等を避けるためインターネットによる予約サービスが普及しましたが、法務局でも各種手続の訪問予約が可能になっています。
郵便による請求の場合には、請求された方の住所宛に郵送で交付されます。
請求の際にご自身の住所を書いた返信用の封筒を同封することを忘れないようにしてください。
公証役場に照会(遺言検索システムによる照会)
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、国の役所である公証役場(こうしょうやくば)で作成された遺言のことを言います。
公証役場には公証人(こうしょうにん)と呼ばれる公務員がおり、元裁判官、元検察官などの法律の専門家が公証事務を取り扱っています。
難しい言葉が続きますが、「公証事務」とは、公証人による書類の作成、公証人による証明などに関する法律サービスのことを指します。
つまり、公正証書遺言とは、公証人において作成された法的に確かな「遺言書」であると言えます。
公正証書遺言は作成後、遺言者本人に交付されるだけでなく、その原本は公証役場で保存・保管されます。
公証人が作成した公文書である「公正証書」の保存期間は法律(公証人法施行規則)により、原則20年となっています。
ただし、特別の事情があるような時には、その事情が存在する間は保存しないといけない、と定められています。
公正証書遺言は、実際には20年しか保存されていない、ということはほぼなく半永久的に保管されています。
しかし、注意しなければならない点が一つあります。
実は、「平成元年」以降に公証役場で作成されている場合にしか、公証役場の「遺言登録・検索システム」を利用しての照会をすることができません。
- 作成された公証役場名
- 作成した公証人名
- 遺言者の情報(氏名・生年月日)
- 公正証書遺言の証書番号
- 公正証書遺言の作成日
請求の方法(流れ)と必要書類
どの公証役場からでも、無料で検索することが可能です。
但し、この遺言登録・検索システムの利用に関して、遺言者の生前に利害関係者から照会・検索することはできません。(遺言者本人はその生前に検索をすることは可能です)
遺言者の死後、次の書類をそろえて、最寄りの公証役場に出向いて照会・検索を請求します。
図解 「遺言登録・検索システム」の照会の必要書類
- | 書 類 | 書類の詳細・説明 |
---|---|---|
① | 除籍謄本など | 遺言者の死亡が確認できるもの |
② | 遺言者との利害関係人であることを証明する書類 |
● 相続人の場合:戸籍謄本など ● 相続人以外 :法律上の利害関係を証明する書類 ● 成年後見人:登記事項証明書 ● 親権者 :戸籍謄本
※ 法律上の利害関係人にあたるかどうか、公証役場に事前に問合せ・確認されるようにしてください。 |
③ | 請求者の本人確認資料 |
次のような本人しか取得できない印鑑証明書や、顔写真付きの官公署が発行した身分証により本人確認がおこなわれます。
など |
以上のように、法務局・公証役場で照会・検索し調べた結果どこにも見当たらなかった場合には、最終的に自宅などを探すことになります。
被相続人の自宅・居所・介護施設などを探す
司法書士としてサポートできないのは、亡くなられた方のご自宅などを実際の捜索です。
「生前に遺言書を作成したと聞いていた」
「遺言書を作成した形跡がある」
「他相続人から遺言書を作成していると聞いた」
など、遺言書の存在が疑われる場合には、被相続人の方のお住まいに関する場所を探していただくことになります。
- ご自宅(机の引き出し、仏壇など)
- 貸金庫(取引金融機関に照会されるのも良いでしょう)
- 居所(親族の自宅など)
- 介護施設などの入居施設
- 別荘
- 貸倉庫
あまり印象の良くない表現で言えば「家探し」をするということですが、あまりこの遺言書があるかどうかに時間をかけることも得策ではありません。
相続財産が多く、相続税申告の対象になるような「相続」の場合には、亡くなられたことを知ってから10か月以内に相続税申告をおこなわなければならず、この期限を過ぎてしまうと税金が加算されてしまうリスクがあります。
遺言書が見当たらない、存在しない場合には「遺産分割協議」により、相続人全員での話し合いをおこないます。
まとめ(遺言書の調査を含めた遺産整理のフルサポート)
「相続」は人生に一度は訪れるものです。
しかし、そこには法律と事実問題が存在していて、その仕組みや手続の理解が必要で、相続人の方々の大きな負担となっています。
相続すると決めた場合には、相続税申告や各種手続きの期限。
負債が多く相続しないことを決めた場合には、家庭裁判所への相続放棄手続の期限(亡くなったことを知ってから3か月)があるなど、「相続」は待ったなしの状況が続きます。
上垣司法書士事務所では、こうした相続財産調査、相続人調査、遺言書の各種照会・検索などの遺産整理(遺産承継)のための手続を代行させていただくことができます。
事務所のある明石市のみならず、神戸市、高砂市、加古川市、淡路市など周辺にお住いの方々からもご依頼をうけ代行させていただいた実績があります。
「相続」手続で、ご負担に感じられている状況がおありでしたら、お気軽に当事務所までお問合せ・ご相談ください。
ご事情に耳を傾け、親身になってご相談、アドバイスをさせていただきます。
「遺産整理」についての解説
相続預貯金、不動産、株式、車両、動産など「相続」を原因として引き継ぐ場合、財産の名義変更や、解約・換価による現金で受領するための手続はとてもわずらわしいものです。これら相続財産を引き継ぐための手続について司法書士が解説いたします。