遺言書で贈与を受けた上場株式の名義変更手続│遺産整理手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
遺言書で贈与を受けた上場株式の「名義変更手続」
被相続人(亡くなられたご家族・ご親族)が死亡し、その遺産に上場株式がある場合において、遺言書で贈与(遺贈といいます)を受けた場合に、証券会社などにどのような対応をすればいいのでしょうか。
遺贈による名義変更手続の流れ
遺言書により上場株式の贈与を受けた場合、おおまかに次のような流れで名義変更手続をおこないます。
図表 遺贈による名義変更手続の流れ
① 証券会社・信託銀行などに「残高証明書」の請求
② 証券会社・信託銀行などに「取引口座の移管」の手続
残高証明書(株主名簿記載事項証明書)の請求
残高証明書は次の理由で必要になります。
名義変更にあたり「残高証明書(株主名簿記載事項証明書)」が必要になる理由
① 相続税申告の添付書類として必要なため
② 遺産分割協議の前提として相続財産の価値を把握するため
現在の上場株式は「株式等振替制度」にもとづき、紙による株券ではなく、株券の記録・管理などをおこなう証券保管振替機構および証券会社などで開設された口座においてデジタルで、株主の権利を管理しています。(平成21年1月5日実施「社債、株式等の振替に関する法律」による株券の電子化)
しかし、株券が電子化されたあとも、証券会社に対する口座振替が済んでおらず、株式が信託銀行などの特別口座で管理されている場合もあります。
「特別口座」とは、株券の電子化にあたり、証券保管振替機構に株券を預けられなかった株主の権利を保護するために、上場会社がその時点における株主名義で信託銀行などに開設した口座のことをいいます。
相続税申告の添付書類としての残高証明書
相続税の申告時に添付書類として、相続開始時の株式数を証明するために残高証明書である「株主名簿記載事項証明書」を添付する必要があります。
この残高証明書の「残高」は、被相続人の死亡時における日付で取得します。
なお、残高証明書の手続を取った時点で口座は凍結されます。
相続税申告における上場株式の添付資料としては、「評価証明書」「残高証明書」が必要になります。
一般的に残高証明書の請求方法、書式は各証券会社、信託銀行などにより異なります。
残高証明書の交付申請書に実印で押印し、印鑑証明書を添付し請求するケース。
また、電話による申請受付、ネットによる受付などさまざまです。
なお、各証券会社・信託銀行において「不動産の相続登記、金融機関における名義変更のお手伝い」を案内されていることがあります。
しかし、実際には信託銀行を通して司法書士、税理士などの専門家に依頼することと変わりはなく、仲介手数料がかかるため、割高となる可能性があります。
当事務所でも、遺産整理手続をサポートしておりますのでお気軽にお問合せください。
図表 各証券会社における相続時点の残高証明書発行の手続(公式WEBサイト一覧)
証券会社名 | 説明ページ | 説明内容 |
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野村證券株式会社 | リンク |
・残高証明書の申請方法 ・取引先・口座番号不明の場合の照会方法 |
大和証券株式会社 | リンク |
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SBI証券株式会社 | リンク |
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松井証券株式会社 | リンク |
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SMBC日興証券株式会社 |
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岩井コスモス証券株式会社 | リンク |
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auカブコム証券 | リンク |
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遺産分割の前提資料としての残高証明書
遺産分割協議をする場合においても、株式だけではなく他の遺産についてもどのように分割するか話し合いをします。
そのため、株式数の確認や残高を把握する必要があります。
株券の残高証明書の発行請求書の必要書類
残高証明申請書の添付資料として求められることが多いのは次の資料などです。
なお、これらは一例であり、各証券会社により異なりますので申請先に確認されると良いでしょう。
図表 遺贈による名義変更手続の流れ
- 遺言者である被相続人の除籍謄本
- 遺言により贈与を受けた相続人の戸籍謄本
- 法定相続情報一覧図(法務局で取得できる、戸籍に代わる証明書)
-
遺言により贈与を受けた相続人の本人確認資料
-
遺言書の写し
※ 原則、公正証書を除き、家庭裁判所で検認手続を受けた際の検認済調書謄本の写し
残高証明書の交付費用
残高証明書の発行手数料は各証券会社により異なります。
無料もあれば、1通1,000円などさまざまです。
証券会社に取引口座の名義変更手続(移管手続)をおこなう場合
株式について相続する方が決まった場合、証券会社に名義変更の手続をおこないます。
その際、遺言者である被相続人名義になっている口座の株式を、遺言で贈与を受けた方(受贈者:じゅぞうしゃ)の口座に株式を移します。
そのため、受贈者において名義変更手続を請求した証券会社において口座を開設している必要があります。
口座を保有していない場合には、新たな口座を開設するための手続もおこないます。
ただ、受贈者において対象の証券会社に口座を既にお持ちの場合でも、被相続人の取引内容によっては、新たに口座を開設することが必要であると指示される場合があります。
この辺りは、証券会社と連絡、確認を取りながら進めていくことになります。
相続手続依頼書と必要書類の提出(遺言による名義変更の場合)
各証券会社において定型の書式が用意されていますが、相続手続に関する依頼書を提出します。
遺言書により上場株式の取得する場合には、その書類に受遺者の実印による押印、印鑑登録証明書が求められることが一般的です。
その他、遺言者の除籍謄本、遺言書の写し、家庭裁判所の検認調書謄本(公正証書遺言以外)などが必要になります。
なお、家庭裁判所における「検認手続」については次のコラムで解説しています。
公証役場で作成する公正証書遺言以外は、遺言者の死後に発見した際には家庭裁判所で検認手続を受けなければなりません。
関連コラム
- 「遺言書を見つけたら家庭裁判所での検認手続」
被相続人の方がのこした遺言書を見つけた場合、家庭裁判所で検認手続が必要になることがあります。検認を受けずに相続手続を進めると、5万円以下の過料の支払いという罰則を受ける可能性があります。相続人の方において知っておいて欲しい検認手続について司法書士が解説いたします。
なお、遺言者がその死後に遺言書の内容を実現するために、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)と呼ばれる人(個人または法人)を定めている場合があります。
この場合、遺言執行者がいる場合には、その印鑑証明書が求められることがほとんどです。
また、遺言書で指定されていた遺言執行者が死亡している、または指定されていない場合でも利害関係人(相続人など)が家庭裁判所に申立てをおこなうことで、裁判所は選任することができます。
上場株式の名義変更手続等のフルサポート
金融機関における相続預貯金の払戻しと同様に、証券会社に対する株式の名義変更手続は各社により対応が異なるため、相続人・受遺者の方にとってかなりの負担となります。
上垣司法書士事務所では、こうした株式の名義変更手続についても事務代行をおこなっています。
信託銀行などにおいても同様のサービスをおこなっていることがありますが、直接司法書士に依頼される方が、① 進捗状況について確認しやすい、② 費用が格段に安い(見積金額を比較検討してみてください)、③ 関係者とのやりとりを任せられる(精神的なご負担の軽減)、④ 事務手続の代行(時間的なご負担の軽減)、というメリットがあります。
上垣司法書士事務所では、ご相談の際には難しい法律用語は極力使わず、分かりやすい説明を心がけています。
ぜひ遺産承継に関する手続でお困りの場合は、当事務所までご相談ください。
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