【書式例あり】相続人が相続放棄をしないまま死亡した際の対応(再転相続)│相続手続シリーズ 明石市の相続相談専門窓口


相続手続

執筆者 司法書士 上垣 直弘


  • 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
  • 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号

日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。

相続人が相続放棄をしないまま死亡した際の相続(再転相続)とは


相続は、亡くなられた家族や親族(被相続人)の資産・負債・契約上の地位などを引き継ぎます。

資産よりも負債が上回るような場合には、事実上負担を背負うことになります。

そのため、負債を含め相続することを放棄することが可能です。

図表 相続のイメージ図

図表 相続のイメージ図


相続の初めから「相続人でなかったことにするための手続」を相続放棄と言います。

「自身に相続があったことを知ってから3か月以内(熟慮期間)」に家庭裁判所に手続
をとる必要があります。

 

参照条文 │ 民法915条

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない
ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。


一般的に、被相続人の相続人としての判断は次の3つとなります。

図表 相続人としての判断の選択肢

図表 相続人としての判断の選択肢



今回、被相続人の祖父の相続について、
唯一の相続人である「父」が死亡した場合を例に考えます


図表 相続関係図(今回の事例)

図表 相続関係図(今回の事例)



被相続人である祖父が多額の負債を抱え死亡し、相続人である父は相続放棄を検討していました。

しかし、相続放棄のできる熟慮期間内に父が死亡し、
その子である「私」が祖父・父の相続人としての地位を承継するにいたった場合(再転相続;さいてんそうぞく、と言います)、「私」はどのように対応すべきでしょうか。

この際の「私」の地位は、次のような立場にあると言えます。
  1. 被相続人 祖父の相続
  2. 被相続人  父の相続 

上記の相続に関して、「相続する」か「相続しない(相続放棄)」を選択できることになります。


これをもとに「私」として、どのように対応すべきか次の3パターンが考えられます。

  1. 被相続人である「祖父」「父」両方を相続する。
  2. 被相続人である「祖父」「父」両方を相続放棄する。
  3. 被相続人である「祖父」を相続放棄し、
    被相続人である「父」について相続する。

なお、被相続人である「父」を相続放棄し、「祖父」について相続することはできません。
次の図をご覧ください。

図表 相続関係図(相続放棄の効果)

図表 相続関係図(相続放棄の効果)


父が有していた「祖父の相続について、相続する/放棄するかの選択ができる立場」を放棄するということは、「祖父の相続についての選択できる立場」を「私」は承継しなかったことになります。

そのため当然、祖父の相続についても放棄したことになります。

また、相続人である父が相続放棄手続をしないまま、熟慮期間経過後に死亡した場合には、単に父は祖父について相続していることになります。

よって、「私」は「父」について相続するか、放棄するかの判断をすることになります。

① 被相続人である「祖父」「父」両方を相続する場合


こちらについては、特段何もしなくても問題はありません。

② 被相続人である「祖父」「父」両方を相続放棄する場合


3か月の熟慮期間内において相続放棄をする場合において、父の相続放棄のみをすれば良いことになります。


③ 被相続人である「祖父」を相続放棄し、被相続人である「父」について相続する場合


被相続人である祖父の相続放棄をおこないます。


再転相続における相続放棄申述申立書の書き方


先の「③ 被相続人である「祖父」を相続放棄し、
被相続人である「父」について相続する場合」における相続放棄申述申立書の書き方は次のとおりです。

書き方のポイント


相続放棄申述書を書くにあたってのポイントは次の通りです。

  1. 熟慮期間の開始時点(起算点;きさんてん)を明確にする。


     再転相続における熟慮期間3か月を計算する開始時点は「民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」です。

    「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいう。(最高裁判所第2小法廷判決 平成30年(受)第1626号 令和元年8月9日、最高裁判所民事判例集73巻3号293頁/裁判所時報1729号1頁/判例タイムズ1474号5頁/ 金融・商事判例1581号7頁)」とされています。

     

    参照条文 │ 民法916条

    相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

     

    つまり、父の死亡を知った時点から、熟慮期間の計算がスタートすることになります。

  2. 被相続人(本ケースでは「祖父」)についての相続放棄であることを明記する


    申立書書式の記入欄に従い、被相続人欄に対象となる「被相続人(本ケースでは「祖父」)」の氏名を記入し、申述の理由については、別紙で対象とする被相続人を明記することが考えられます。

     

    この記載例については、この後の書式例で解説します。


申述書の書き方(書式をもとに図示)


相続放棄申述受理申立書の書式の記入例は次の通りです。
記入欄に従って、注意すべき個所について説明をしていきます。

書式サンプル│相続放棄申述受理申立書(1ページ目)

書式サンプル│相続放棄申述受理申立書(1ページ目)


書式サンプル│相続放棄申述受理申立書(2ページ目)

書式サンプル│相続放棄申述受理申立書(2ページ目)


申述人欄、添付書類の記入欄

 

書式サンプル│申述人欄・添付書類欄の記入例

書式サンプル│申述人欄・添付書類欄の記入例(※クリックで拡大)


申述人とは、相続放棄をする人のことです。
相続放棄をおこなうのが、あなたであれば、あなたの氏名を記入します。

なお、相続放棄の手続には相続関係を示す戸籍などが必要になります。

必要添付書類については、申述人と被相続人との関係により異なります
詳しくは次のページで添付資料について解説しています。
 関連ページ

相続放棄手続

被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述する方の戸籍謄本などが必要となります。詳しくは「相続放棄手続の流れ」の「相続放棄手続の必要書類」の項目についてご確認ください。

詳しくはこちら


被相続人欄の記入例

 

書式サンプル│被相続人欄の記入例

書式サンプル│被相続人欄の記入例(※クリックで拡大



被相続人欄は、今回相続放棄をする被相続人を記入します。

 

先ほどのケースで考えると、① 父については相続し、祖父の相続を放棄する場合(被相続人欄は「祖父」)、②父、祖父のいずれも相続放棄する場合(被相続人欄は「父」)で、被相続人欄の記入は変わってきます。


申述の理由の記入例


書式サンプル 申述の理由欄の記入例

書式サンプル 申述の理由欄の記入例


申述の理由は、記入欄が短いため、別紙の記入例のように記載します。

 書式サンプル 
  • 申述の理由


    私は、被相続人(祖父の名前)の孫であり、被相続人(父の名前)の子です。

    被相続人(祖父の名前)の子である、被相続人(父の名前)は、(祖父の名前)の相続の承認あるいは放棄のいずれもしないまま令和2年2月1日に死亡しました。
    なお、私は(祖父の名前)の債権者からの連絡により令和2年10月1日に(父の名前)の死亡を知りました。


    被相続人(祖父の名前)には、さしたる積極財産はなく債務超過の状態にあり、(祖父の名前)について相続放棄の申述をします。

    この申述により(祖父の名前)の相続についてのみ放棄し、(父の名前)の相続については放棄いたしません。


相続放棄についてのサポート


上垣司法書士事務所では、相続放棄について添付書類である戸籍の収集から申立書の作成までフルサポートしております。

仕事で忙しい、不慣れな手続に負担を感じている方からの相談をお受けしております。
まずはお気軽に、相続の相談をご利用ください。

具体的な解決策や疑問・不安点について、個別にしっかりと説明させていただきます。

 関連ページ

相続放棄手続

通常の相続放棄の例をもとに、手続の流れ、必要書類などについての基礎知識について解説しています。

詳しくはこちら



補足 神戸家庭裁判所における管轄(兵庫県内の相続放棄申述書の提出先)


上垣司法書士事務所では遠隔地にお住いで、相続放棄を検討されている方の手続代行もおこなっております。

郵送での相続放棄申述申立書の提出、家庭裁判所のやりとり、必要添付書類である戸籍の収集までしっかりカバーしております。

次の兵庫県内の神戸家庭裁判所における各管轄の手続代行も可能です。
まずはお気軽にお問合せください。

図表 兵庫県のお住い別、家庭裁判所の管轄(相続放棄申述申立書の提出先)

兵庫県内の住所地からの逆引き管轄表 

兵庫県内・50音順

市区名

管轄 家庭裁判所

あいおいし

相生市

神戸家庭裁判所 姫路支部

あかしし

明石市

神戸家庭裁判所 明石支部

あこうし

赤穂市

神戸家庭裁判所 姫路支部

あさごし

朝来市(赤穂郡(上郡町))

神戸家庭裁判所 姫路支部

あさごし

朝来市(旧朝来郡朝来町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

あさごし

朝来市(旧朝来郡生野町)

神戸家庭裁判所 姫路支部

あさごし

朝来市(旧朝来郡山東町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

あさごし

朝来市(旧朝来郡和田山町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

あさごし

朝来市(神崎郡(市川町 福崎町 神河町))

神戸家庭裁判所 姫路支部

あしやし

芦屋市

神戸家庭裁判所 尼崎支部

あまがさきし

尼崎市

神戸家庭裁判所 尼崎支部

あわじし

淡路市

神戸家庭裁判所 洲本支部

いたみし

伊丹市

神戸家庭裁判所 伊丹支部

いぼぐん

揖保郡(太子町)

神戸家庭裁判所 龍野支部

おのし

小野市

神戸家庭裁判所 社支部

かこがわし

加古川市

神戸家庭裁判所 姫路支部

かこぐん

加古郡(稲美町 播磨町)

神戸家庭裁判所 姫路支部

かさいし

加西市

神戸家庭裁判所 社支部

かとうし

加東市

神戸家庭裁判所 社支部

かわにしし

川西市

神戸家庭裁判所 伊丹支部

かわべぐん

川辺郡(猪名川町)

神戸家庭裁判所 伊丹支部

こうべし きたく

神戸市北区

神戸家庭裁判所

こうべし すまく

神戸市須磨区

神戸家庭裁判所

こうべし たるみく

神戸市垂水区

神戸家庭裁判所

こうべし ちゅうおうく

神戸市中央区

神戸家庭裁判所

こうべし ながたく

神戸市長田区

神戸家庭裁判所

こうべし なだく

神戸市灘区

神戸家庭裁判所

こうべし にしく

神戸市西区

神戸家庭裁判所 明石支部

こうべし ひがしなだく

神戸市東灘区

神戸家庭裁判所

こうべし ひょうごく

神戸市兵庫区

神戸家庭裁判所

さようぐん

佐用郡(佐用町)

神戸家庭裁判所 龍野支部

さんだし

三田市

神戸家庭裁判所

しそうし

宍粟市

神戸家庭裁判所 龍野支部

すもとし

洲本市

神戸家庭裁判所 洲本支部

たかぐん

多可郡(多可町)

神戸家庭裁判所 社支部

たかさごし

高砂市

神戸家庭裁判所 姫路支部

たからづかし

宝塚市

神戸家庭裁判所 伊丹支部

たつのし

たつの市

神戸家庭裁判所 龍野支部

たんばし

丹波市

神戸家庭裁判所 柏原支部

たんばささやまし

丹波篠山市

神戸家庭裁判所 柏原支部

とよおかし

豊岡市

神戸家庭裁判所 豊岡支部

にしのみやし

西宮市

神戸家庭裁判所 尼崎支部

にしわきし

西脇市

神戸家庭裁判所 社支部

ひめじし

姫路市

神戸家庭裁判所 姫路支部

みかたぐん

美方郡(旧美方郡村岡町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

みかたぐん

美方郡(旧城崎郡香住町 旧美方郡美方町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

みかたぐん

美方郡(新温泉町)

神戸家庭裁判所 豊岡支部

みきし

三木市

神戸家庭裁判所

みなみあわじし

南あわじ市

神戸家庭裁判所 洲本支部

やぶし

養父市

神戸家庭裁判所 豊岡支部




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