相続人が知っておきたい「戸籍」の取寄せ方・読み方
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
戸籍を取寄せる方法
相続が発生した際、相続手続を進めるために誰が「法定相続人」であるかどうかを確定させる必要があります。
例えば、亡くなられた方が持つ預金口座の解約をおこなう場合には、相続人であることや、遺産分割協議などによって確かに預金を相続することになったことを証明する必要があります。
相続人が誰であるかは、被相続人や相続人の戸籍を取寄せ、調べることになります。
「相続人調査」について解説
相続における「相続人調査」の基礎知識について、司法書士が解説しています。
- 書式・文例 ・相続関係図の作成方法
- ポイント解説 ・法定相続人の範囲・相続人調査の流れ
戸籍を取得するには、本籍地のある市区町村役場へ請求します。
例えば被相続人の最後の本籍地は明石市で、その前は神戸市、もともとの実家は大阪市の場合、明石市、神戸市、大阪市で戸籍を取得することになります。
戸籍の取得は、現地の役所に直接行って取得することもできますが、遠方であれば郵送で請求することも可能です。
郵送で請求する場合、郵便局で「定額小為替」を購入し、返信用の封筒と切手、身分証明書を一緒に入れて送付すると、申請した戸籍謄本類を返送してもらえます。
また、誰でも取得できるものではなく、戸籍に記載されている人、またはその配偶者、直系親族、代理人(委任状が必要)に限られています。
戸籍の取得時に必要なもの(一例) |
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相続手続で戸籍を取得する際のテクニックとしては、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本の違いを気にすることなく「相続手続に使うので、被相続人の出生から死亡まで(請求する役場に)存在するすべてのものを発行してください」と伝えることです。
郵送の場合は、その旨を記載したものを同封して請求してみましょう。
請求先の役場によりますが、役場に存在する全ての戸籍を発行してくれることがあります。
参照リンク
各市役所の郵送による戸籍取り寄せのための案内ページを紹介いたします。
当事務所のある明石市を含め東播磨方面、淡路市の市役所公式ページはこちらになります。
▼ あかし 明石市│戸籍謄抄本等郵送依頼書
戸籍謄抄本等郵送依頼書の申請書のダウンロード、戸籍謄本の費用などについての説明があります。
▼ あわじ 淡路市│戸籍謄(抄)本・印鑑証明・住民票の写しなどの請求
「各種様式」から戸籍、住民票など郵送請求のための書式をダウンロードできます。
▼ いなみ 兵庫県加古郡稲美町│住民票・戸籍等郵便請求
申請書のダウンロード、郵送請求における手続方法についての説明があります。
▼ かこがわ 加古川市│戸籍謄本等が必要なとき
郵送申請書のダウンロード、記入例、必要書類などについての説明があります。
▼ たかさご 高砂市│戸籍謄抄本等を郵便で請求するとき
「戸籍謄抄本等郵送交付申請書及び請求方法」がPDFファイルで用意されており、内容に従って請求することで戸籍などの交付を受けることができます。
▼ はりま 兵庫県加古郡播磨町│戸籍証明書等交付請求書(郵送用)
「請求書をダウンロード」から、郵送用の戸籍謄抄本等の請求書をダウンロードできます。
戸籍の種類と読み方
戸籍には種類があり、その種類ごとに記載方法が異なります。
ここでは、相続人として知っておきたい戸籍の読み解き方について解説します。
戸籍の種類
戸籍には大きく分けて、「戸籍謄本」「改製原戸籍」「除籍謄本」の3種類があります。
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
戸籍謄本とは、現に効力のある戸籍のことをいい、最新の情報が記載されている戸籍です。
なお、戸籍抄本というのは、例えば夫のみを記載するなど、戸籍のなかの一部の人のみを記載したものです。 - 改製原戸籍
明治時代に戸籍制度が確立されてから、直近では平成6年に戸籍がコンピューター化されたように、何度か戸籍の 様式は改製されています。 改製された古いほうの戸籍を改製原戸籍(「かいせいはらこせき」または「かいせいげんこせき」)といいます。 - 除籍謄本
戸籍にはいっていた人が、結婚や死亡、または本籍地を移動して転籍した場合など、戸籍内の全員がいなくなった場合にその戸籍を除籍謄本といいます。
また、年代によっても戸籍は種類があります。
- 明治5年式戸籍(壬申戸籍)
明治5年式戸籍は、記載内容の一部に公開に適しないものがあり、また理論上も保存期間を経過しているため、交 付されることはありません。 - 明治19年式戸籍
- 明治31年式戸籍
- 大正4年式戸籍
- 現行戸籍
現行戸籍は戦後の民法改正により、戦前の「家制度」が廃止されたことにともない、抜本的に改められました。 なお、現行戸籍は平成6年の戸籍法改正により、戸籍が順次コンピューター化されたため一度改製されています。
戸籍の読み方
図表:平成6年式戸籍の記載例(全部事項証明書)
全部事項証明書 | |
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本籍① | 兵庫県明石市本町2丁目〇番地 |
氏名② | 明石 太郎 |
戸籍事項③ 戸籍改製 |
【改製日】平成15年7月20日 【改正事由】平成6年法務省令第51号附則第2条1項による改製 |
戸籍に記載されている者④ 除籍 |
【名】太郎 【生年月日】昭和10年1月1日 【配偶者区分】夫 【父】蛸太郎 【母】花子 【続柄】長男 |
身分事項 出生⑤ |
【出生日】昭和10年1月1日 【出生地】兵庫県明石市本町 【届出人】父 |
婚姻⑥ | 【婚姻日】昭和40年1月1日 【配偶者氏名】兵庫幸子 【従前戸籍】兵庫県明石市本町二丁目△番地 兵庫一郎 |
死亡 | 【死亡日】令和2年1月1日 【死亡時間】午前8時 【死亡地】兵庫県明石市本町 【届出日】令和2年1月1日 【届出人】親族 明石幸子 |
戸籍に記載されている者⑦ | 【名】幸子 【生年月日】昭和10年8月5日 【配偶者区分】妻 【父】兵庫一郎 【母】兵庫たえ 【続柄】長女 |
身分事項 出生 |
(省略) |
婚姻 | (省略) |
戸籍に記載されている者 | (省略) |
①本籍
本籍は、戸籍を請求する際に必要となります。
住所とは関係なく、国内であれば自由に定めることができます。
②氏名
戸籍の最初に書いてある氏名が、その戸籍の筆頭者(戸主)です。
戸籍は本籍地と筆頭者という2つの情報で管理されており、戸籍を請求する際には筆頭者も記載する必要があります。
③戸籍事項
戸籍が作成された日とその根拠が記載されます。
この例の場合は、改製日と根拠が記載されていますので、この戸籍の前に改製原戸籍が存在することになります。
転籍してきた場合は、転籍してきた日と従前の本籍がこの欄に記載されます。
④戸籍に記載されている者
この戸籍の筆頭者についての情報が記載されます。
死亡した場合や、結婚などにより戸籍から出た場合は「除籍」と記載されます。 。
⑤身分事項
「出生」「婚姻」「離婚」「養子縁組」「死亡」といった、身分上の重要事項が記載されます。
⑥婚姻
婚姻についての情報が記載され、婚姻した日、配偶者の氏名と従前戸籍が記載されます。
⑦戸籍に記載されている者
ここからは、筆頭者以外の人の情報が記載されます。
なお、除籍謄本および改製原戸籍の読み方も基本的には同じです。
平成6年式戸籍と異なる部分としては、ほぼすべて縦書きであり、また手書きで書かれています。
したがって、非常に読み取りづらい場合も多々あります。
除籍謄本の特徴は、「除籍謄本」と記載されるわけではありませんが、「除籍」というスタンプが押されているものが多く、また人の名前の部分に大きな斜線がつけられており、一読すれば除籍謄本であることがわかるようになっています。
改製原戸籍は、改製された後の戸籍には、その当時在籍していた者についてしか記載されません。
したがって、戸籍の改製前に死亡や結婚等でその戸籍から除かれている人は、改製後の戸籍には記載されないということに注意する必要があります。
相続人調査(戸籍の取寄せ)をフルサポート
最近では、相続関係を調べるため相続人において戸籍などを取寄せしようとした際に交付を拒絶される場合もあるようです。
また、実際の戸籍の取寄せ、読み解くのが難しい場合もあります。
司法書士の権限において、戸籍謄本を代行取得することも可能で、
難解な戸籍の解読、および被相続人の出生までの調査など相続人調査もサポートしています。
当事務所では、こうした相続人調査のみならず、
相続手続全体をトータル・フルサポートしておりますので
様々な精神的、時間的なご負担を肩代わりさせていただくこともできます。
亡くなられたご家族の居住地から遠方でなかなか財産調査ができない。
日々の生活が忙しく時間の余裕がない。
このような相続人の方々からご依頼をいただいております。
まずはお気軽に上垣司法書士事務所までお問合せ・ご相談ください。
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