「農地を売りたい!」農地を売買するために必要な手続き方法を徹底解説
その他
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号

日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
目次
- 農業をしない人が農地を相続する場合の手続き
- 1.農地売買の問題点(買主や農地転用対象土地が限定)
- 2.農地を売るための2つの手続き
- 2-1.農地のまま売却、農地転用後の売却(メリット・デメリット比較)
- 3.「農地のまま売却する」方法と手続きの流れ
- 3-1.買主(農家・農業就業者)を探す
- 3-2.売買契約を結ぶ
- 3-2-1. 停止条件付き契約
- 3-3.農業委員会への許可申請(農地法第3条の許可)
- 3-3-1.許可申請の必要書類
- 3-3-2.不許可の場合の対処法(手付金返還、再申請など)
- 3-4. 名義変更のための所有権移転登記(農地のまま売却する場合)
- 3-4-1.必要な添付書類
- 3-4-2.ケース別の必要書類
- 4.「農地転用後に売却する」方法と手続きの流れ
- 4-1.不動産会社に相談
- 4-2.売買契約を結ぶ
- 4-3. 農業委員会への許可申請(農地法第5条の許可)
- 4-3-1.許可申請の必要書類
- 4-4.地目変更登記
- 4-5. 名義変更のための所有権移転登記(農地転用後に売却する場合)
- 4-5-1.必要添付書類
- 5.農地売却でかかる税金
- 5-1.譲渡所得税
- 5-2.印紙税
- 5-3.登録免許税
- 6.まとめ
「農地を売りたい!」農地を売買するために必要な手続き方法を徹底解説
農地を売買したいと考えたとき、そのまま農地として売却するのか、農地転用をして住宅地などに変更してから売却するのかといった選択肢があります。
どちらを選ぶにしても、法律上の手続きや農業委員会への許可申請が不可欠であり、事前の準備や計画が重要です。
農地特有の制限を理解しないまま進めてしまうと、余計な費用やトラブルに悩まされる可能性があるため、慎重に手続きを進めましょう。
農地のまま売却する場合には、買主となる方が農業を営む意思と能力を持っているかどうか、農地を転用して売却する場合は転用が可能かどうかといったポイントが大きく影響します。
特に農地のまま売却する場合は、農業委員会の許可が得られるかが成否を分ける大きな要確です。
許可を得られないと売買自体が成立しないこともあるため、最初の段階でしっかり情報収集を行いましょう。
一方、農地転用をおこなって売りに出す場合には、不動産としての価値が高まり、買い手が見つかりやすくなる利点があります。
しかし、転用にかかる時間や追加の費用、農地の種類 によっては転用が認められない可能性もあるため、事前に専門家などと相談してから進めるのが望ましいでしょう。
本記事では、農地売買にかかわる手続きの流れや注意点、相続時のリスクへの対応策などをわかりやすく解説していきます。
1.農地売買の問題点(買主や農地転用が可能な土地が限定)
農地売買は、買い手が農業従事者か、または農地以外に転用が可能かなど、農地法の規制によりその条件が限られることが大きな課題となります。
農地のまま売買する場合、まず買主が農業を営むことができる人物かどうかが問題になります。
農業委員会の許可を得るためには、買主の営農計画や農業経験の有無などが確認されるため、一般的な不動産取引と比べると相手方がかなり限定されます。
加えて、農地のままでは住宅や商業施設などに活用できないことがほとんどであり、買主の選択肢が狭くなることが売買の成立に影響します。
また最近では、農業従事者の高齢化、農業就労者全体の人数が減少傾向にあるため、買主を探すのは年々難しくなっています(農林水産省「新規就農者調査」、「農林業センサス」)。
農地以外への転用を検討するにしても、農地が所在する地域の用途制限や規制が厳しかった場合、手続きはスムーズに進みません。
転用には許可を要するため、転用可能な農地か検討したうえで申請をおこなう必要があります。
この許可が下りないと売却自体が頓挫してしまうため、時間と費用に対するリスクを見極めながら進めることが大切です。
こうした農地売買の制限や面倒な手続きを避けるために、売り手も買い手も事前にしっかり情報収集や相談を行うことが大切です。
農地法や関係法令を理解しないまま進めると、契約後に許可が下りず契約が白紙に戻る可能性もあります。
安全かつスムーズに農地売買を進めるためには、各手続きの流れや注意点を事前に把握しておきましょう。
2.農地を売るための2つの手続き
農地を売買したい場合、大きく分けて「農地のまま売る」か「農地以外に転用して売る」かの2通りが考えられます。
目的や状況によって、どちらの売却方法が適しているかは異なります。
土地そのものの条件、農地の種類や地域による転用の規制、買い手のニーズなどを総合的に考慮し、どのタイミングでどのような手続きが必要なのかを整理しておくとよいでしょう。
自分だけで判断が難しい場合は、早めに専門家や不動産会社に相談し、最適なプランを立てることをおすすめします。
2-1.農地のまま売却、農地転用後の売却(メリット・デメリット比較)
農地のまま売却、農地転用して売却のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
農地のまま売却 |
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農地転用して売却 |
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農地のまま売却するメリットは、転用手続きに比べて時間とコストを削減できる点です。
農業委員会から農地法第3条の許可さえ得られれば売買契約が早期に完結でき、資金回収がスムーズになる可能性があります。
ただし、一般の方への売却はできず、農業従事者や農業法人しか買い手になれないため、買主を見つけにくいことや、宅地などに比べて売却価格が低くなることがデメリットです。
なお、法定相続人や包括受遺者が農地を相続する場合には、農業従事者以外でも承継することは可能です。
一方、農地転用して売却するメリットは、土地の用途制限が解消されることで幅広い層かへの購入者が募集できる点です。
住宅や商業用地として活用できることから、土地の需要が高い地域ではより高値での売却が見込めます。
しかし、転用許可取得や地目変更などの手続きに時間と費用が必要となり、許可が下りなければ計画自体が成り立たないリスクもあります。
農地売却の最適な選択肢は、土地の所在地や需要、個人の事情などによって変わります。
農業を続ける意志がある買主が確実に見込めるなら農地のままの売却 でも不都合はありませんが、より多くの買い手を求めるのであれば転用を視野に入れるのが得策です。
手間やコスト、将来的な計画を考慮しながら、慎重に比較検討する必要があります。
3.「農地のまま売却する」方法と手続きの流れ
農地のまま売却する場合には、 相手方が農業を行う意志や能力をもっている必要があります。
この場合、 いかに適切な買主を探すかが大きなポイントです。
農業関連の団体と連携したり、地元の農家コミュニティに相談したりするなど、農業に縁のあるネットワークを活用することが一般的でしょう。
さらに、売買契約には農地法第3条に基づく許可要件が絡むため、この点を把握していない買主とはスムーズに取引が進みません。
農地のまま売却するときには、買主との契約には停止条件付きの売買契約がよく使われます。
これは農業委員会の許可が得られなかった場合には契約が白紙に戻るというもので、売り手や買い手双方のリスクを軽減する仕組みとなっています。
その後、許可が下りれば正式に名義変更へと進めることができる流れです。
所有権移転登記などの手続きは、農地法の許可を受けた上でなければおこなえません。
許可申請時は契約書や土地の登記事項証明書 、印鑑証明などの書類をそろえて申請を行い、不備がなければ数週間から数か月程度で許可が下りることが多いです。
書類の作成には専門知識が必要となる場合もあるため、事前に行政書士に相談しておくことをおすすめします。
以下で、流れに沿って具体的に解説します。
3-1.買主(農家・農業就業者)を探す
農地のまま売却を目指す場合、まずは買主の候補として農家や新規就農者を探すことが一般的です。
自治体の支援制度や農業委員会の紹介制度を活用し、農地を求める就農希望者とのマッチングを図る方法が考えられます。
実際には、地元の農協(農業協同組合、JA)への相談、農家仲間のネットワークによる紹介が重要な情報源となることもあります。
なお、農地のまま売却する場合における農地法第3条の許可を得るためには、単に農業従事者であれば良いわけではありません。
例えば、買い手が個人の農業従事者 であっても、「原則年間150日以上、農作業に常時十字 すること」や、「総耕作面積が50アール以上(ただし、都道府県の場合。北海道は2ヘクタール以上)」「取得する農地すべてを効率的に利用して耕作などをおこなうこと」などの要件を満たしていることが求められることがあります。
3-2.売買契約を結ぶ
農地売買の契約では、農地法の許可が得られない場合に備えて、不許可の場合には契約が無効となる(法律的な効力が生じない)「停止条件付売買契約」を利用することが考えられます。
これは、許可が取得できた時点で契約が効力を持つことを明確化することで、両者のリスクを減らす役割を果たします。
3-2-1. 停止条件付き契約(契約書サンプル付き)
停止条件付き契約とは、農業委員会による許可が得られなかった場合には契約そのものが成立しないという条件を明文化した契約方法です。
契約が白紙撤回となることで、買主は不要な費用を支払わずに済み、売主もリスクを最小限に抑えられます。
農地売買においては非常によく活用される契約形態です。
参照 停止条件付売買契約書サンプル
(記載例・農地法第3条の許可・農地のまま売買)
(甲)は、 (乙)に対し、目録記載の土地について、下記条項により売買契約を締結する。
第1条 別表記載の土地に対する本件売買契約は、農地法第3条の許可を条件とする。
2 売買代金は、金 円とする。
3 乙は本契約締結時に手付金として金 円を支払う。
4 手付金は無利息とし、残代金支払時に売買代金の一部に充当する。
第2条 甲と乙は、農地法第3条の許可を得るために、遅滞なくその許可申請に協力する。
2 甲又は乙は、前項に定める許可申請について必要な準備をした上で、相手方に対し許可申請協力を請求したにもかかわらず、遅滞なくこれに応じない場合は、直ちに本契約を解除することができる。
第3条 前条の許可申請に対し、不許可処分が確定した場合は、甲、乙いずれからも本契約を解除することができる。
第4条 乙が、同許可申請を取下げた時は、甲、乙いずれも本契約を解除することができる。
第5条 甲は、別表記載の土地につき、その引渡まで保管に関する一切の責任を負い、許可が得られたのち、乙は直ちに所有権移転登記を行うものとし、甲は乙に別表記載土地を引渡すとともに所有権移転登記申請手続に必要な関係書類を提出する。
2 甲は、前項の移転登記に関する費用を負担する。
第6条 乙は、甲に対し、前条第1項の手続終了後、直ちに残代金を支払う。
第7条 甲及び乙は、自らの債務不履行により、丙に損害を与えたときは、それぞれその責めを負う。
令和 年 月 日
甲 住 所
氏 名 (印)
乙 住 所
氏 名 (印)
3-3.農業委員会への許可申請(農地法第3条の許可)
農地のまま売却する際には、農業委員会に対して農地法第3条の許可申請を行います。
これは農地の権利移動を行う際に必須の手続きで、農地を正しく利用できる買主であるかどうかを農業委員会等が審査する目的があります。
許可が下りなければ買主への名義変更ができないため、売買契約の成立にも直結する重要なプロセスです。
なお、農地法3条の許可は、買主に対しておこなわれます。
3-3-1.許可申請の必要書類(チェックリスト付き)
許可申請の際には、売買契約書の写しや買主の営農計画書、登記事項証明書、印鑑証明などが必要になります。
買主の農業経験を示す資料や、買収した農地をどのように活用するのかを明確にした事業計画書や土地利用計画図などが求められるケースもあります。
自治体によって詳細が異なる場合があるため、事前に提出先である管轄の農業委員会のホームページや許可申請をおこなう自治体の関係窓口で確認しておくと安心です。
参照 農地法第3条の許可申請手続きのチェックリスト
申請者 |
売主(所有者)と転用後の農地買主の連名提出 |
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申請先 |
農地を管轄する農業委員会 |
処理期間 |
4週間(1か月)程度 |
許可権者 |
原則 農業委員会(例外的に都道府県知事) |
添付書類 |
※下記は一例です。申請先である自治体などにより求められる書類、書類の名称が異なることがあります。
|
3-3-2.不許可の場合の対応(手付金返還、再申請など)
万が一、農地法第3条の許可が下りなかった場合には、停止条件付き契約に基づき、既に授受している手付金を返還するなどの対応をおこないます。
ただし、却下理由を解消できれば再度申請して許可を得られる可能性もあるため、農業委員会と協議を続けることが重要です。
3-4.所有権移転登記(農地のまま売却する場合)
農業委員会の許可が下りた後は、農地を引き渡します。
また、速やかに所有権移転登記を行って名義変更を完了させます。
第三者に対して自身の所有権を法的に主張するためには、登記名義の変更が必要です。
売買契約から登記まで状況によって時間が空くこともありますが、許可取得後はできるだけ早く農地の所在地を管轄する法務局に登記手続きを進めるのがおすすめです。
3-4-1.必要添付書類
所有権移転登記の際には、農地法第3条の許可書、印鑑証明書、固定資産税評価証明書などが必要になります。
書類の不備や記入ミスがあると登記申請が受理されない場合があるため、事前のチェックが欠かせません。
司法書士に依頼することで、必要書類の収集から申請までスムーズに進めてもらうことができるので安心です。
当事務所でも、農地の所有権移転登記の実績があります。
ぜひお気軽にご相談ください。
参照 農地の所有権移転登記申請のまとめ
申請先 |
農地の所在地を管轄する法務局 |
---|---|
申請人 |
売主と買主の共同申請 |
必要添付書類 |
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3-4-2.許可申請と相続
農地の名義変更登記で注意すべきケースに「相続」があります。
①農地法3条の許可前に売主が死亡した場合、②農地法の許可前に買主が死亡した場合が考えられます。
①の場合、相続人が農地を一旦取得することになるため、相続人名義への相続登記(所有権移転登記)をおこないます。
なお、売主の相続人は買主への所有権移転登記義務も承継しているため、相続人が登記義務者となって、買主(登記権利者)へ所有権移転登記をおこないます。
②の場合、買主の相続人が農地法第3条の許可を証する情報を提供して所有権移転登記を申請しても受理されません(登記できない。昭51.8.3民三第4443号)。
故人となった買主に対する許可は無効であり、改めて許可申請をおこなう必要があります。
4.「農地転用して売却する」方法と手続きの流れ
農地転用して売却する場合は、買い手の幅が広がるという利点があります。
地目を「宅地」や「雑種地」などに変更することが可能になることで、不動産需要の高いエリアであれば早期に売却が成立しやすくなるでしょう。
ただし、農地のまま売却する場合より、農地法第5条の許可の取得や、地目変更登記、所有権移転登記などの登記手続きにかかる手間や費用が多くなる傾向があります。
農地転用して売却するには、原則として農地法第5条の許可が必要となります。
第3条が農地の権利移動に関する申請であるのに対し、第5条は転用のための権利移動に関する申請であり、審査のポイントが異なります。
都市計画の規制や環境保護などの観点から、許可が下りないこともあるため、計画の初期段階で転用の可否を確認しておくことが大切です。
参照 立地基準から転用不可能な農地
農用地区域内農地 |
【原則不許可】 |
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第1種農地 |
【原則不許可】 |
甲種農地 |
【原則不許可】
市街化調整区域内の、①農業公共投資後8年以内農地、②集団農地で高性能農業機械での営農可能農地 |
第2種農地 |
【第3種農地に立地困難な場合等に許可】
市街化の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地に近接する区域、その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で、農用地区域内にある農地以外の甲種、第1種農地及び第3種農地のいずれの要件にも該当しない農地 第3種農地とは?
市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地
|
立地基準に加えて、次の一般基準からも許可・不許可の審査がおこなわれます。
これらの基準は、土地の効率的な利用の確保という観点から定められており、農地転用の確実性や周辺農地の営農条件への支障の有無などを審査するものです。
参照 農地転用の3つの一般基準
申請先 |
農地の所在地を管轄する法務局 |
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申請人 |
売主と買主の共同申請 |
必要添付書類 |
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転用が認められた後は、地目変更登記を行い、売買契約に基づいて所有権移転登記を進めます。
4-1.不動産会社に相談
農地転用して売却することを検討する際には、転用しても売却可能か否かの判断をおこなうために、まず不動産会社に相談して市場動向や価格査定を確認することが得策です。
転用が成功すれば需要が高まりやすい一方で、地域の規制や土地の立地によっては思ったほど価格が上昇しないこともあります。
不動産会社ならこのようなリスクを事前に把握し、戦略的に転用のタイミングや方法などについて提案を受けることができるでしょう。
4-2. 売買契約を結ぶ
農地転用を前提とした売買契約を結ぶ場合、通常の不動産売買契約に加え、転用許可が得られなかった場合の取り扱いを明確にしておくことが重要です。
農地のまま売却するケースと同様に、停止条件付売買契約書の利用が考えられます(3-2.売買契約を結ぶ)。
転用が認められなければ契約を解除できるようにするなど、条件を定めることでリスクを最小限に抑えられます。
特に大きな金額が動く場面ですから、契約内容を慎重に検討することが欠かせません。
4-3. 農業委員会への許可申請(農地法第5条の許可)
農地を農地以外に転用して売却する場合は、農地法第5条の許可を受ける必要があります。
【※ただし、農地法第4条1項7号に規定する市街化区域内にある農地については、あらかじめ農業委員会に届出をおこなうことで許可が不要となります。 】
この許可申請は農地の利用形態を変える行為に対して行われる審査で、地域の農業振興計画や土地利用計画と整合性があるかどうかなど、さまざまな観点から審査が行われます。
そのため、申請時に提出する書類には、転用の目的や施設の計画図などが含まれることが一般的です。
なお、農地転用に関する許可申請手続きは、行政書士が代行できます。
費用の相場として約10万円~15万円であることが多いようです。
4-3-1.許可申請の必要書類
農地法第5条の許可申請には、用途変更の計画書や現況図、転用後の利用目的を示す資料をそろえる必要があります。
自治体によって申請書類のフォーマットが異なることもあるため、事前に確認した上で不足がないよう用意しましょう。
参照 農地法第5条の許可申請手続きのチェックリスト
申請者 |
売主(所有者)と転用後の農地買主の連名提出 |
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申請先 |
農地を管轄する農業委員会 |
処理期間 |
一般的に2か月~3か月程度 |
許可権者 |
都道府県知事(※農地が4haを超える場合はあらかじめ農林水産大臣との協議が必要) |
添付書類 |
※下記は一例です。申請先である自治体などにより求められる書類、書類の名称が異なることがあります。
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4-4.地目変更登記
農地法第5条の許可が下りると、地目を変更するための登記手続きを進めます。
(※なお、許可が下りた後でも、土地の現況(土地造成工事や建物の基礎工事の状況など)に応じて、先に買主への所有権移転登記をおこなうケースもあります。 )
地目変更登記は、店舗用地や宅地などに使用するために、登記簿上の土地の用途(地目) を実態に合わせて変更するための手続きです。
地目変更登記は、土地所有者は、地目の変更があったときから1か月以内に時申請をすることになっています(不動産登記法第37条第1項)。
この期限を過ぎると、10万円以下の過料に処せられる可能性があります(不動産登記法第164条)。
農地の転用にあたり、事前に確定測量や転用後に備えて分筆(複数の土地に分ける)をおこなうことがあります。そのため、土地家屋調査士に地目変更登記を依頼することが一般的です。
参照 地目変更登記の申請内容
申請者 |
土地の所有者(登記名義人) |
---|---|
申請先 |
農地の所在地を管轄する法務局 |
申請期限 | 地目の変更があったときから1か月以内 |
必要添付書類 |
※下記は一例です。状況により下記以外の書類を求められることがあります。
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4-5. 名義変更のための所有権移転登記(農地転用して売却する場合)
農地法第5条の許可を得られたら、買主への所有権移転登記をおこないます。
売主買主双方で協力しながら手続きを行い、必要書類に不備がないかしっかり確認しましょう。
4-5-1.必要な添付書類
農地法第5条の許可にもとづく所有権移転登記には、農地法第5条の許可書、印鑑証明書、住民票、固定資産税評価証明書などが主に必要です。
余裕を持って書類をそろえ、登記時にスムーズに提出できるよう準備してください。
参照 所有権移転登記のまとめ(農地転用のための土地売買のケース)
申請者 |
売主と買主が共同で申請 |
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申請先 |
不動産の所在地を管轄する法務局 |
必要添付書類 |
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5.農地売却でかかる税金
農地売却には譲渡所得税や住民税など、税金面の負担が発生します。
5-1.譲渡所得税
一般的には取得費や譲渡費用を控除した後の利益に対して課税されますが、農地特有の優遇措置や特別控除が適用される場合もあります。
事前に税理士に相談して、自分の売却プランがどのように課税対象になるかを把握しましょう。
農地の売却代金から売買のための経費(不動産会社の仲介手数料[※1]など)を差し引いて算定します。
譲渡所得金額 = 譲渡による収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 [※2]
税額 = 譲渡所得金額 ×(所得税率+住民税率)[※3]
所得期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
長期譲渡所得 (土地取得後5年超で売却の場合) |
15% | 5% |
短期譲渡所得 (土地取得後5年以内に売却する場合) |
30% | 9% |
※ 1:仲介手数料の相場はありませんが、その上限は宅地建物取引業法により定められています。
取引物件価格(税抜) | 仲介手数料の上限金額 |
---|---|
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円 |
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
※ 2:一定の要件に該当する場合、次の「特別控除額」を差し引くことができます。
※ 3:平成25年から令和19年まで復興特別所得税がかかります。
農地売却時に次の要件を満たす場合、特別控除を受けることができます。
(農地利用目的の譲渡)
適用条件 | 特別控除額 |
---|---|
|
800万円 |
|
1,500万円 |
(転用目的の譲渡)
適用条件 | 特別控除額 |
---|---|
|
5,000万円 |
税金の計算を誤ると、本来よりも多く納税しなければならなくなったり、逆に申告漏れによるペナルティを受けたりするリスクがあります。
計画的に税務面の情報を収集して、売却手続きと並行して納税準備を進めるとスムーズです。最終的には売却利益をしっかりと把握し、正確な確定申告を行いましょう。
5-2.印紙税
土地売却時に取り交わす売買契約書には、取引金額に応じて印紙を貼付します。
契約金額によって、印紙税は変わります。
参照 不動産の譲渡に関する契約書(印紙税額一覧)
契約金額 | 印紙税 |
---|---|
10万円以下 | 400円 |
100万円を超え500万円以下 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2千円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
5-3.登録免許税
農地売買による所有権移転登記をおこなう場合、登記申請時に登録免許税がかかります。
基本的に、不動産の価格(課税標準額)に税率1,000分の20を乗じた金額です。
なお、その時々によって軽減措置がなされる場合があります。
例えば、令和8年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15となる軽減税率が設けられています。
6.まとめ
農地の売却は手続きが複雑なため、専門家である司法書士のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
農地を売却する際には、農地法による許可手続きや税金、相続に関する問題など、さまざまな関門があります。
農地のまま売却するか、農地転用後に売却するかによって必要な手続きや許可申請の内容も異なるため、自身の状況や目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
特に、相続によって農地を取得した方は、管理費や税負担の増大に悩むことも少なくありません。
売却や制度の利用、あるいは相続放棄など、あらゆる選択肢を検討しながら、早めに行動を起こすことがリスク軽減につながります。
何を選ぶにしても専門家のアドバイスが不可欠となるでしょう。
上垣司法書士事務所では、農地に関する登記手続きをサポートしています。
ご相談もおこなっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
関連記事
- 農業をしない人が「農地」を相続する場合の手続き
農業をしていない方が相続人となった場合に、農地の相続について解説しています。
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農地の相続についても対応しています。ぜひお気軽にご相談ください。