一次相続の遺産分割未了の間に二次相続が発生した場合の相続登記│明石市在住 Y様|解決事例
相続手続
執筆者 司法書士 上垣 直弘
- 兵庫県司法書士会登録番号 第1549号
- 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第712178号
日頃、東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)や淡路市、神戸市にお住まいの個人、中小企業の方から不動産登記手続を中心に年間100件以上のご依頼を受けています。中でも遺産整理手続の依頼は多く、これまで遺産の名義変更や処分、不動産の相続登記を数多く取り扱った実績があります。
相続登記未了の間に、さらに相続人のひとりが亡くなった場合の相続登記手続|明石市在住 Y様|解決事例 | |
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依頼者様 | 兵庫県明石市 在住 |
ご依頼内容 | 相続人調査、相続財産調査、相続税の試算、遺産分割協議書の作成、相続登記(相続不動産の名義変更)、農地法上の農業委員会への相続届 |
手続代行・サポート内容 | 遺産分割協議書作成、登記手続(神戸地方法務局明石支局)、権利証(登記識別情報通知)の受領、農業委員会への届出(行政書士のご紹介)、相続税の試算(提携 相続税に強い税理士への確認) |
ご相談の経緯
Yさんは平成24年に父であるAさんを亡くしました。
Aさんの相続人は、配偶者Bさん、長男Yさん、次男Cさんです。
当時、父Aさんの相続財産(遺産)の状況から相続税がかかるかもしれないと思ったYさんは税理士に相談しました。
しかし、相続税の基礎控除額以下であったため、相続税の申告はおこないませんでした。
また、不動産(自宅および多数の農地)については、遺産分割協議も相続登記もおこなわないままでした。
その後、令和4年に相続人のひとりであるBさんも亡くなり、さらに相続が発生しました。なお、Bさんの相続人はYさんとCさんです。
YさんとCさんの間では、「亡Aさん名義の不動産はYさんが相続する。」ということで意見がまとまっています。
① Yさんは放置していた亡Aさん名義の不動産の相続登記の手続をどのようにおこなえばいいのか、また、② Bさんの相続について相続税がかかるのかどうかが気になり、金融機関の紹介で上垣司法書士事務所に相談に来られました。
相談のポイント
今回のケースでは、Aさんの相続(「一次相続」)が発生したあと、Aさん名義の不動産について相続人間で遺産分割協議がおこなわれていません。
つまり、Aさん名義の不動産については、Aさんの相続人が法定相続分(B:4分の2、Y:4分の1、C:4分の1)の割合で共有している状態のまま、さらにBさんの相続(「二次相続」)が発生しています。
以上の状況をふまえて、Yさんからの相談のポイントとして、大きく2つ挙げられました。
母 Bさんの相続について「相続税」がかかるのか。
Bさんの相続財産(遺産)は預貯金のみで、それだけでは相続税の基礎控除額を超えないことは明らかでした。
ただし、遺産分割が未了であるAさん名義の不動産について、Bさんの法定相続分(4分の2)相当額を相続財産に加算する必要があるかどうかで、相続税がかかるかもしれない状況でした。
この点について税務上どのように取扱えばいいのか、税理士に確認する必要がありました。
Aさんの相続について、不動産をAさんからYさんの名義に変更するには、どのように遺産分割協議をおこなえばいいのか?
不動産の名義人であるAさんが亡くなったあと、さらに相続人のひとりであるBさんが亡くなっています。
この場合、AさんからYさん名義に相続登記をおこなうには、どのように遺産分割協議をおこなえばいいのでしょうか。
弊所の対応とその結果
まず、相続人調査による相続人の確定をおこないます。
具体的には、AさんおよびBさんと、2つの相続が発生しているので、AさんとBさん両名の「出生から死亡時まで」の戸籍を取得し、それぞれの相続人を確定していきます。
相続人調査の結果、
● Aさんの法定相続人は、Bさん、Yさん、Cさん
● Bさんの法定相続人は、Yさん、Cさん
であることが確定できました。
また、相続人調査と並行して相続財産調査をおこないます。
Aさんの相続財産(遺産)である不動産は多数存在していたため、Yさんから固定資産税の納税通知書を提出していただきました。
それをもとに相続の対象となる不動産に漏れがないよう、不動産の所在地の役場で名寄せをおこないました。
調査の結果、Bさんの相続財産は預貯金のみでしたので、口座の残高証明書など相続発生時の残高がわかる資料をYさんから提出していただきました。
相続人調査と相続財産調査が終わった段階で、「遺産分割が未了であるAさん名義の不動産について、Bさんの法定相続分(4分の2)相当額を相続財産に加算する必要があるのか。」という点について、弊所の提携税理士に相談しました。
税理士からは、「Bさんの相続にかかる相続税の申告の前に、Aさんの不動産について遺産分割協議をおこなって、Bさんが不動産を取得せず、Yさんが取得することとすれば、Aさんの相続にかかるBさんの法定相続分をBさんの相続財産に加算する必要はない。」との回答が得られました。
そこで、「YさんがAさん名義の不動産を相続する。」内容の遺産分割協議を、Aさんの相続人であるBさん、Yさん、Cさんでおこないます。
ただし、Bさんは亡くなっているので、Bさんの相続人としての地位を、Bさんの相続人であるYさんとCさんが引継ぎます。
つまり、YさんとCさんは、
● Aさんの相続人としての立場
● Aさんの相続人であるBさんの相続人としての立場
という、ふたつの立場で遺産分割協議に参加することで、Aさん名義の不動産をYさんが単独で相続するという遺産分割協議をおこなうことが可能です。
今回のケースでは、上記の内容で遺産分割協議書を作成し、YさんとCさんの遺産分割協議書への署名捺印および印鑑証明書の提出を受けて、神戸地方法務局明石支局に相続登記を申請。
無事にAさん名義の不動産をYさんの名義に変更することができました。
また、Aさん名義の不動産には多数の農地も含まれていました。
農地を相続した場合、その所在地を管轄する農業委員会へ届出をおこなう必要があります。
(農地法第3条の3)農地の相続届についても、Yさんからのご希望で提携行政書士をご紹介し、無事に手続を終えることができました。
担当司法書士からのコメント
今回は、Aさん名義の不動産について遺産分割未了の間に、相続人のひとりがさらに亡くなる(数次相続)いう事案でした。
特に亡Aさんが多数の不動産を所有されていたため、Bさんの相続(二次相続)における相続税を考える際に、Aさんの相続(一次相続)におけるBさんの法定相続分をどのように取扱えばいいのかなど、他の専門家の協力が必要なケースでした。
そのような場合でも、上垣司法書士事務所では、ご依頼いただいた個々のケースに応じて、弁護士、税理士、行政書士など他の専門家と連携して解決策をご提案させていただきます。
詳細はお気軽にご相談くださいませ。
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